「横浜慕情(大人向け)」
横浜慕情~虔三郎と結衣

横浜慕情 狼の残夢・其の参

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江戸に幕府があった時代の暦と違い、西洋暦の一月は春の気配も無く、極めて寒い。家の中に居ても凍えそうな夜気の中、重なり合った唇から熱が生まれ、徐々に広がっていった。
 藤堂平助、否、総司と呼ばれた男は小夜のぬくもりをより深く貪るかの如く、己の舌を小夜の唇に割り入れ舌を絡め取る。小夜も抵抗は見せずただ良人のなすがままにその愛撫を受け入れる。長いこと互いの唇を貪った後、ようやく総司が小夜を解放した。

「『総司はん』ですか。もう・・・・・その名前で呼んでくれるのはあなただけになってしまいましたね。昔は多くの人が呼んでくれましたけど。」

 総司は小夜の首筋に唇を這わせながら胸許を押し広げる。ゆらり、と揺れる西洋ランプの光の下、年齢にしては若々しい張りのある乳房が総司の目の前に露わになった。すかさず総司はその乳房に頬を寄せ、大きな手で片方の乳房を包み込む。

「ほんま・・・・いくつになっても『大きなやや』なんやから・・・・・。」

 小夜は笑いながらも、本物の赤子を抱くように総司の頭を優しく抱きしめた。



 沖田総司----------江戸が東京と名前を変える前、男はそう呼ばれていた。心労をこじらせた労咳から奇跡的に立ち直り、上野戦争のどさくさに紛れて『別人』に成り替わったのである。
 上野戦争直後の『三日間斬り捨て御免』の際、千駄ヶ谷の潜伏先を嗅ぎつけた長州兵を斬り殺し、その男を自分の身代わりとして江戸に捨ててきた。己の着物を纏わせ、愛刀の『菊一文字』を相手の刀の代わりに置いてくる細工も忘れずに。さらに念には念を入れてすぐに身元がばれないよう遺体の顔を潰し、世話になった植甚の親方をも欺く為に挨拶もせず身の回りの世話をしてくれていた小夜と共に千駄ヶ谷を、そして江戸を抜け出したのである。

 本当ならば戦争を避け、すぐにでも安全な場所----------官軍の手が届かない、治外法権の横浜などに逃げるべきだったのだろう。だが、当時の事情がそれを許さなかった。四宿を始め江戸周辺は官軍によって包囲され、横浜もその中に入っていたのだ。蟻の子一匹通さない官軍の包囲網を突破する為二人はごくありふれた百姓夫婦に変装し、千住から北へ逃げざるを得なかったのである。 結局官軍に追われるような形で函館まで追いやられてしまった二人が日野にも近い横浜に戻ってきたのは、戊辰戦争が終了してから一年以上も後のことであった。



 それから十年以上、さすがに横浜から外に出ることは滅多に出来ないが、穏やかな日々が続いている。たまに訪ねてくれる知人が『自由民権運動』が日野で活発化していて、それに参加する気はないかと誘われたが、そのようなものに関わる気は毛頭無かった。燃え上がる大志を胸に抱いて上洛した青春時代の挫折と敗北は総司本人が思っている以上に彼の心の傷になっているのだろう。

「十年前ならどうしようか迷ったかも知れませんけどねぇ。」

 ただ静かに、家族三人の生活を誰にも邪魔されずに送ることが出来ればいいと総司はその誘いを断った。その知人との話の後、滝沢虔三郎との出会いの原因となったならず者の襲撃があったのである。知人が加入している団体と敵対している団体が雇った無頼者だったのだが、元新選組の一番隊隊長にかかってはひとたまりもない。そしてその様子を最後まで見届けていた虔三郎に雇われたという訳である。
 仏蘭西人相手の貿易もするという虔三郎の用心棒と簡単な通訳、それが総司の仕事であった。まさかこんなところで函館の経験が役に立つとは思わなかったが、通訳の仕事が付く分相場より若干良い給金というのも魅力的だった。娘が今年で十三歳になると言うこともあり、そろそろ嫁入り道具の事も考えねばならない状況だった総司は二つ返事で虔三郎の申し出を了承した。

「ようやく継続的な仕事にもありつけそうですし・・・・・あなたにも少しは楽をさせて上げたいんですよ。佳代の嫁入りの支度もありますし。」

 総司は小夜の胸許に顔を埋めちろちろと舌を這わせる。東男に京女、と言われるが小夜の見た目はまさに理想的な京女そのものであった。鴨川の水で育ち、磨かれたその肌はどこまでも透明感があり、顔立ちもいわゆる『公家顔』と言われる細面で切れ長の目をしたいかにも京女然としたものであった。
 だが総司が惹かれたのはそんな見目ではなかった。どんな我儘さえも受け入れてくれるその優しさ-------------一度は師匠であり、局長である近藤の説得に負け、小夜を捨てた総司を許してくれた、そんな懐の深さであった。そしてそんな優しさは閨事でも滲み出る。難産の患者を診て疲れ果てているにも拘わらず、良人の欲望に応えようとする----------そんなところに総司はつい甘えてしまうのだ。
 細身の身体には不釣り合いなほど豊かな乳房に執拗に喰らいつき、時には頂きの先端にあるしこった紅い蕾を吸い上げる。紅い蕾に舌を絡ませ、不意に行なう甘噛みに小夜は疲れを忘れ昂ぶってゆく。

「そんな・・・・・気にせんといて・・・・・うちかて総司はんのおかげで・・・・・好きな仕事・・・・させてもろて・・・・・・あんっ。」

 上がる息の下、小夜が総司に語りかけようとした瞬間、総司が敏感な乳首をちゅるっ、と吸ったのだ。それと同時に空いている乳房の先端を指の腹で柔らかく転がす。ずきん、と甘い痺れを乳首に感じると同時に小夜は刺激に耐えられず思わず身を捩った。だが総司は小夜が逃げようとするのを許さずさらにしつこく乳房を、そして紅い蕾を弄ぶ。

「それとこれとは別ですよ、小夜。もちろん今までのように私ができるだけ家のことはやりますし、あなたの仕事を妨げたりしません。そもそも私があなたの医者としての腕を必要としているんですから。」

 胸からさらに下へと指を、そして唇を移動させながら総司は小夜をさらに啼かせてゆく。さすがに出会った当時の肌の張りはないものの~二人が初めて出会った時、小夜は十五歳であった~三十代半ばとは思えない若々しさを保っている小夜の肌は、未だに総司を夢中にさせていた。元々春をひさぐ娼妓に対して不信感、嫌悪感を抱いていたこの男にとって小夜は唯一無二の『女』なのである。だがそれだけではない。出会った当時は見習いであったが、小夜の医者としての腕もまた総司にとって唯一無二であった。御殿医・松本良順さえ治すことが出来なかった総司の労咳を治したのは他でもない小夜である。もっとも労咳の原因を作った張本人でもあるのだが・・・・・。

「せや・・・・・けど・・・・・んんっ、もう・・・・そんなとこ・・・・・あかん。お上に見つかってしもうたら・・・・・どないすんの・・・・・もう、あかん言うてはるやろ・・・・・。」

 総司の愛撫に溺れながらも、小夜は総司に訴える。あまり派手に動いては政府に見つかり、このささやかな幸せが壊れてしまうのではないかと心配なのだ。そんな小夜の心配を余所に総司は目の前にある久しぶりのご馳走に夢中になっている。

くちゅり。

 狭い部屋に淫猥な濡音が思った以上に大きく響く。隣の部屋にいる佳代に聞かれたら・・・・・と小夜は気が気でないが、総司はそんな事はお構いなく熱く、蕩けるように蜜を滴らせている花壺に己の指を忍ばせた。逸物ほどではないが、剣術で鍛えられた総司の指はかなり太く、小夜を翻弄するには充分すぎるほどであった。抜き差しをする総司の指に陶然となりながらも、声だけは出さぬようにと小夜は総司の胸に顔を埋め、嬌声を押し殺す。そんな小夜の反応に満足しながら、総司は小夜の耳許に唇を寄せた。

「大丈夫。それよりも佳代の弟か妹、欲しいと思いませんか?佳代だってあと二、三年もすれば誰かに取られちゃうんですよ。寂しいじゃないですか。」

 桜色に染まる耳朶を時折舐めながら総司は小夜に『子供』をねだる。元々子供が好きな男である。京都に居た時も暇さえあれば近所の子供達と遊んでいたし、横浜に来てからも近所のおかみさん連中に感謝されるほど近所の子供の面倒までよく見ているという。それに・・・・・。

「総司はん・・・・・やっぱり、佳代のこと・・・・・怒って・・・・・。」

 その瞬間、総司の指が一瞬止まり冬の夜気よりも冷たい気配が総司から発せられる。

「佳代は私の娘ですよ。誰が何と言おうと・・・・・たとえ血が繋がっていなくても、あの子は私のたった一人の娘であることに違いはありません。」

 今までの穏やかな口調が一変、総司は低く、怒気を含んだ口調で小夜に応えた。



 総司と小夜は最初からすんなりと結ばれた訳ではなかった。総司が京都の人間から忌み嫌われていた新選組だったこと、そして小夜が被差別民と言われる特殊な身分の娘であったことから互いの関係者が一度は二人を引き離したのである。それが原因で総司は心の病をこじらせ労咳になり、小夜は新選組内部の紛争に巻き込まれ、その際手を差し伸べてくれた男の子供を身籠もってしまったのである。その男の名こそ、今総司が名乗っている藤堂平助であった。

「誰が何と言おうとあの子は---------佳代は私の娘です。だからこそ恋敵の名を名乗っているんじゃないですか。」

 総司や藤田五郎が生き延びているように、高台寺党の残党も何人か生き残っている。その男達からどんな証言が出ても--------------端的に言ってしまえば、佳代の本当の父親の名が彼らから出たとしてもすぐには判らないようにあえて藤堂平助の名を名乗っているのである。でなければここまで目立つ名はあえて避けるのが常套というものである。

「そりゃあなたのお腹の中にあの子がいた時はどうしようもないくらい憎かったし、歯噛みするほど悔しかったですけど、あの笑顔を見たらもう駄目です。小夜に瓜二つのかわいい笑顔で微笑まれちゃったら落ちるに決まっているでしょう。」

 そのあまりの親ばか振りに小夜は思わず微笑む。総司との仲が引き裂かれた直後とは言え、他の男が差し伸べた手にすがりついてしまった小夜の罪----------しかし、その罪さえも一緒に総司は小夜を、そして娘の佳代を愛しんでくれるのだ。つい三年前まで官軍に気付かれた時のことを考えて親子別々に暮らしていたのだが、そんな時でさえも総司は危険を顧みず期間が空いても半年に一度は佳代の許をこっそり訪ねていた。そんな総司の優しさにそろそろ応える時期なのかも知れない--------------小夜は総司の背中に腕を回し、耳許に唇を寄せた。

「言い出したら気かへんのやから・・・・・男の子か女の子かわからへんけど、どっちでもええ言うてくれはるならがんばってみまひょ。」

 今まで追っ手のことを気にして子作りを渋っていた小夜だっただけに総司は一瞬驚きの表情を見せたが、次の瞬間極上の笑顔を小夜に見せる。

「本当ですか!じゃあさっそく・・・・・」

 総司は小夜の気が変わらないうちにと己の膝を小夜の膝に割り入れ、その間に入り込んだ。そしてすかさず力を漲らせた逸物を小夜の花壺の入り口に宛がう。

「もう、せっかちやねんから・・・・・。」

 半ば呆れた感のある小夜の声は、いつしか低く、小さな嬌声へと変化していった。



UP DATE 2010.01.15

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『横浜慕情』狼の残夢の章の完結編です。いきなり衝撃告白っぽい内容になってしまいましたが、この詳細も語るには5000文字1話で200話以上が必要なんで・・・・・色々と深い訳があるんですよ、オトナの世界って(苦笑)。まぁ、当時は疫病や事故、その他の理由で他人同士が家族みたいに暮らすって事も珍しくありませんでしたから、その一例ですねv
本館で予定している話では総司自身も複雑な家庭事情を背負うことになっていますのでとりあえず腕ならしということでこんな展開にさせていただきました。

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