「短編小説」
その他短編小説

木魚講・其の壹

 ←烏のがらくた箱~その三百九十・今年のほぼ日手帳は・・・ →拍手お返事&本日から新プチ連載始めました(*^_^*)
 それは夏休み明け、新学期が始まってから一ヶ月近く経過した、秋の本格的な訪れを感じさせる日のことだった。

「おい辰彦!柑太郎!良い小遣い稼ぎの話があるんだけどさ、今夜空いてるか?」

 悪友の成島誠作が二人の部屋にズカズカと入ってきて、部屋の中央であぐらをかく。その妙に生き生きとした物言いに、尾上辰彦と小菅柑太郎は露骨に警戒感を露わにした。

「またかよ。お前はいっつもそうだろ。甘言に騙されて俺達がどれだけ酷い目に遭ってきたか」

「お前の『良い小遣い稼ぎ』ほど信用できないものはないからな。ま~た野幇間まがいのことをさせようってんじゃないのか?」

 二人の反応は揃いも揃って冷ややかだ。

「前回は教授に3時間も説教食らったし、前々回は警察に追い掛け回されたよな?」

「一学期の試験が最悪だったし、次回で赤点を取ろうものなら進級そのものが危ういんだ。他を当たってくれ」

 そんな二人の冷淡な対応にも関わらず、誠作は執拗に食い下がった。

「いや、今度は絶対に大丈夫だ。何せ向こうから頭を下げられての依頼だし、関わるのは数時間だけ。しかも秘密厳守と来てる――――――まぁ、それなりに危ない橋は渡ることになるけどよ」

「・・・・・・どんな内容なんだよ」

 いつも以上に話がうますぎる。近づいてはいけないと危険を感じつつも好奇心は掻き立てられてしまうのか、辰彦が思わず誠作に尋ねてしまった。

「引き受けてくれないことには言えねぇな。ま、危ないけど『美味しい話』ではあるぜ?」
 
 意味深な表情を浮かべて誠作は二人の顔を覗き込む。

「どうするよ、お二人さん?」

 誠作の言葉に辰彦と柑太郎は顔を見合わせる。誠作の持ってくる話は確かに危ういものが多いがそれだけに稼ぎは良い。更に今は月末で親からの仕送りも底をつきかけている。

「仕送りが来るのも5日後だしなぁ」

「その間のメシ代くらいになれば、ありがたいかな」

「じゃあ決まりな!30分後にここを出るから一張羅を着ておいてくれ」

 そう言うなり誠作は部屋を飛び出し自室へと戻っていった。

「一張羅って・・・・・・そんなお偉いさんのところにでも行くのかよ」

 誠作が残していった言葉に不安を感じた辰彦が、柑太郎に語りかける。

「さぁな。ま、俺達が出向けるくらいのところだ。せいぜい東京市の議員か役人、または中小企業のお偉いさんくらいだろ?もし企業の関係者だったら就職の斡旋でもしてもらうとか」

「お、ソレはありがたい!」

 辰彦と柑太郎はああでもない、こうでもないと互いの服を批評しつつ着替えを始めた。



 着替えを終えた三人は、下宿屋近くにある市電の駅から電車に乗り込み、新宿へと繰り出した。夕暮れ時だけあって新宿駅は人でごった返しているが、どうもこの混雑の中誠作は誰かと待ち合わせているらしい。

「ここで待ち合わせなんだが・・・・・・あ、いたいた!」

 誠作は待ち合わせの人物を見つけて走り出す。その後を辰彦と柑太郎も付いていった。

「お待たせしました、皆藤さん!一応依頼されたとおり仲間も連れてきました」

 誠作の視線の先、そこには上品な佇まいの初老の男が立っていた。人いきれの蒸し暑い中、三つ揃いをビシッ、と着こなし涼し気な表情を浮かべている。皆藤と呼ばれた男は辰彦と柑太郎を頭の天辺からつま先まで一瞥すると、満足げな表情を浮かべた。

「貧相卑しからず、健全な若人――――――これならば我が主も満足いたしますでしょう。では車をご用意いたしましたのでそちらにお乗りくださいませ」

 皆藤は三人を促し、駅前の車留へと案内した。そこには乗合バス並に大きな車が止まっていた。

「うわぁ、フォードだ!こんな大きなハイヤーってあるんですね」

 車好きの辰彦が思わず歓声を上げるが、皆藤は『これはハイヤーではない』と訂正する。

「ご期待に添えなくて申し訳ないのですが、これは自家用ですよ。色々お客様をお迎えすることも多いので、ハイヤーを雇うよりもこちらのほうが何かと便利でしてね」

 そう言って皆藤は三人を促し車に乗り込ませた。そして自らも乗り込むと、運転手に命じて鍵をかけさせる。高級車だけあってそれは軽い音だったが、その音を聞いた瞬間、もう後戻りができないと辰彦と柑太郎は本能的に察した。



 新宿駅を出発してから暫くすると、車は閑静な住宅街に入り込み、大きな門の家に入り込んだ。

「おい、ここって間違いなく・・・・・・」

「華族は有力士族のお屋敷、ってところだよなぁ」

 辰彦と柑太郎は恐れおののくが、皆藤と誠作は車を降りると、どんどんと屋敷の中へ入っていく。仕方なしに二人も車を降り付先に行ってしまった二人を追いかける。そんな辰彦と柑太郎に気を使いつつ皆藤は長い廊下を歩き続け、とある部屋の前で止まった。

「旦那様、例の若人を連れてまいりました」

 重厚な扉をノックしながら、皆藤は中にいるらしい主に声をかける。

「入れ」

 やや高めの、思っていたよりかなり若い男の声が部屋の中から応える。それに合わせ皆藤が重厚なドアを開けた。すると中にはこの家の主らしい、三人よりやや年上と思われる青年が椅子に座っていた。華奢なその姿は青年というより少年といったほうが良いかもしれない。更に椅子から立ち上がると背もそれほど高くなく、抱きしめたら折れてしまいそうな儚さを漂わせている。

「お待たせいたしました。彼らが『木魚講』に参加してくださる大学生たちです」

「もく、ぎょ・・・・・・こう?」

 皆藤が放った言葉の意味そのものが判らず、辰彦は首を傾げた。その一方、柑太郎は耳まで顔を真っ赤にし、誠作はニヤニヤと笑う。

「どうやらきちんとした話を知っているのは左の若者だけのようだね。後は訳も分からず誘われたみたいだが」

「あの、『もくぎょこう』って?」

 何も知らないままでは流石に気持ちが悪いと、辰彦は目の前の屋敷の主に尋ねた。すると主は表情一つ変えず、とんでもないことを吐き出した。

「下品な物言いをすれば『輪姦』ってところだね。訳あって君らに私の妻を抱いてもらいたいんだ」

「え?」

 その一言に辰彦の顔が青ざめるが、主は『心配するな』と付け加える。

「安心してくれたまえ。勿論君らが姦通罪にならないよう手は打つし、妻も納得の上だ。というか、そもそも妻は私では物足りないようでね・・・・・・君らは『阿久岡家の心中未遂事件』を知っているか?」

「あ、はい!奥方と運転手が心中未遂したっていう・・・・・・あ、もしかして!」

 柑太郎が慌てて自らの口を抑えた。

「その通り。その阿久岡家がここさ。実は私は婿養子でね。この家に入ったのは良いんだが、妻とは折り合いが悪くて」

 この家の主――――――阿久岡は言葉を区切る。

「さっさと離縁できればお互いのために良いのだろうが、そう簡単に離縁とは行かないのが貴族社会の面倒なところで。だったら妻が満足できる相手を宛てがってやろうということで、私が妻の要望を聞き出して、君らを集めたという次第だ」

 そう言いながら阿久岡は隣の部屋に続く部屋の扉を開けた。

「私に遠慮することはないが、妻の機嫌だけは損ねないようにしてもらえるとありがたい。でないと君らに支払うものも支払えなくなるのでね」

「日本男児も地に落ちたな」

 阿久岡に聞こえぬよう、辰彦が誠作に囁く。

「ま、文句を言うなって。金をもらえて貴族の奥方をヤれるんだからさ。旦那の年齢からすればそれほどババアじゃねぇだろ」

「確か新聞では24歳って書いてあったような」

 柑太郎の情報に、誠作は舌なめずりをした。

「いい感じに熟れている、ってところかな。ま、せいぜい愛想のいい陰間を気取ろうぜ」

 三人は阿久岡に続いて部屋に入った。



 その部屋は夫婦の寝室らしかった。甘ったるい香水の匂いが漂う部屋の中央には今まで見たことがない大きなベッドが置かれ、そこに一人の女性が既に腰掛け、煙草を吸っていた。女は入ってきた三人の青年を一瞥すると、煙管を枕元の煙草盆の上に置く。

「ふぅん・・・・・・喜美治さんが選んだにしちゃあ、あたし好みみたいね」

 貴婦人、というよりは高級娼婦のような雰囲気を醸し出しているこの女性が阿久岡の妻らしい。肉感的で艶めかしい女体に、三人の青年たちの目が釘付けになる。

「まぁ、ね。実際は皆藤の手配だけど――――――少なくとも、僕よりは君を満足させられるんじゃないかな芙美子」

「満足も何も、あなた全くの役立たずじゃない。新婚初夜にあたしの裸を見ても全く勃たなかった癖して!」

 夫婦のあけすけな会話に、辰彦と柑太郎は動揺する。だが誠作は予め夫婦の事情を皆藤から聞いていたのか割と平然としている。そして更に二人の口論が激しくなりそうなタイミングを見計らい、絶妙の間合いで間に入った。

「まぁまぁお取り込み中の処すみませんが、事を始める前にカリカリしちゃうと興ざめじゃないですか・・・・・・僕らがこちらのお姫様の不満を解消すれば良いわけですよね?」

 お姫様――――――その言葉を聞いた瞬間、阿久岡の妻は途端に機嫌よく破顔した。

「あらぁ。解っているじゃないの、あなた。こんな役立たずは放っておいて、早く始めましょう。あたし、絶対に子供を産まないといけないのよ」

 そう言いながら阿久岡の妻――――――芙美子は肩に羽織っていたガウンをはらりと落とした。その下はかなり薄いシルクの寝間着一枚だ。
 体のラインどころか乳首や臍、そしてその下の淡い陰りまで薄っすらと透けて見える。淫猥とも言えるその姿に、三人の青年はゴクリ、と生唾を飲み込んだ。

「遠慮は要らないわ。阿久岡の家を存続させる為の子供があたし達には必要なの。あたしが孕めばその胤は誰のものでも構わない――――――それて良いのよね、喜美治さん?」

 挑むような妻の言葉に、夫も頷く。

「ああ、構わないよ。その点だけは利害が一致しているしね。じゃあそろそろ始めてくれ」

 阿久岡喜美治の一言が合図となり、三人の若者は一斉に肉感的な美女へと襲いかかった。




UP DATE 2017.9.2

Next


にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
INランキング参加中。
お気に召しましたら拍手代わりに是非ひとポチをv







本格的な長編小説の新作が始められるかどうかはわかりませんが(おいっ)取り敢えずエロのリハビリだけはしておこうと久しぶりに書きましたよエロ小説/(^o^)\とはいえ最初は導入なんで、まだるっこしいですが・・・次回はガッツリ★が付きますのでお好きな方はお楽しみに(≧∇≦)/

一応舞台設定としては大正~昭和にかけての東京ですね。主人公3人は落第ギリギリのやんちゃな大学生と言ったところでしょうか(^_^;)この時代に地方から大学に進学させてもらえるくらいですから地方では相当のお金持ちでしょうし頭も良いはずなんですが・・・地元から出てくると羽目をはずしてしまうんでしょうかねぇ(-_-;)そんな彼らが巻き込まれてしまうのが華族の不仲夫婦のいざこざです(>_<)
もしかしたらお見合いもさせてもらえず、家柄だけで結婚してしまったのかもしれませんね(-_-;)自由奔放な家付き娘に手を焼いて、若者3人を助っ人に呼び出した華族の若主人ですが、どうやら彼にも秘密があるらしく・・・次回更新は9/9、がっつり4Pエロ&展開がうまく行ったら若主人側の謎も組み込みたいと思っております(BL入ると言えば勘が良い方ならお分かりになるかも(#^.^#))

関連記事
スポンサーサイト

 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png vague~道場主・作間駿次郎顛末記
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏虫~新選組異聞~
総もくじ 3kaku_s_L.png 紅柊(R-15~大人向け)
総もくじ 3kaku_s_L.png 葵と杏葉
総もくじ 3kaku_s_L.png 横浜慕情(大人向け)
総もくじ 3kaku_s_L.png 短編小説
総もくじ 3kaku_s_L.png VOCALOID小説
総もくじ 3kaku_s_L.png 雑  記
総もくじ  3kaku_s_L.png vague~道場主・作間駿次郎顛末記
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏虫~新選組異聞~
総もくじ  3kaku_s_L.png 紅柊(R-15~大人向け)
総もくじ  3kaku_s_L.png 葵と杏葉
総もくじ  3kaku_s_L.png 横浜慕情(大人向け)
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編小説
総もくじ  3kaku_s_L.png VOCALOID小説
総もくじ  3kaku_s_L.png 雑  記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【烏のがらくた箱~その三百九十・今年のほぼ日手帳は・・・】へ  【拍手お返事&本日から新プチ連載始めました(*^_^*)】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【烏のがらくた箱~その三百九十・今年のほぼ日手帳は・・・】へ
  • 【拍手お返事&本日から新プチ連載始めました(*^_^*)】へ