「紅柊(R-15~大人向け)」
戊戌・春夏の章

紅梅、哭く・其の参~天保九年二月の惨劇(★)

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 鶯の恋鳴きはいつしか止み、代わりに宵烏の鳴き声に取って代わられていた。日は西に傾き、鈴ヶ森に差し込む夕日は利親が手にした血まみれの刀に反射し、お春とおウメの惨殺死体を照らす。濃密な梅の香さえ消す血臭の中、利親に血刀を突きつけられた伸吾は情けなくも尻餅をついてしまった。

「あ、兄者、殺すなら、いっそひと思いに・・・・・・」

 ガタガタと震えつつも、命乞いだけはしないというなけなしの武士の矜持はあったのだろう。伸吾は利親にひと思いに殺してくれと懇願するが、利親はそれを聞き流し、下卑た笑みを浮かべながら刀の切っ先を徐々に下へとずらしていった。

「さぁて、どうするか・・・・・・この女どものようにあっさり斬り殺すのも悪くないが、お前ならもう少し俺を楽しませてくれるだろう?もし俺をその気にさせたら命が助かるかも知れないぞ?」

 事と次第によっては助けてやらなくもない――――――そんな利親の思わせぶりな口調に、伸吾はすがってしまった。血刀を気にしつつも利親の足にすがりつき、上目遣いに媚を売り始めたのである。

「お願いです利親兄者、お情けを下さいませ。兄者が江戸から去ってからというもの、寂しくて・・・・・・身体の疼きがどうしても抑えられなかったんです!」

 涙を流し訴える伸吾を冷ややかに見下し、利親はつま先で伸吾の股間をぐいっ、と押した。

「あうっ」

 強すぎも、弱すぎもしない絶妙な刺激に伸吾は艶めかしい声を上げてしまい、腰を更に利親のつま先に押し付けた。そんな伸吾の節操の無さに、利親は満足げな笑みを浮かべて更に命じる。

「まるでさかりの付いた雌犬のようだな――――――だったら犬なら犬らしく、着ているものを全部脱いで四つん這いになってもらおうか?流石に素っ裸だったら逃げようとも思えぬだろう」

 その言葉に流石に表情を引きつらせつつも、伸吾は黙って頷いた。言うことを聞かなければ確実に嬲り殺されるだろう。
 死ぬにしてもさんざん苦しみぬいた挙句に殺されるよりは一瞬で殺されたい。山田道場で指導を受けていた際、介錯をし損ねて苦しみ悶え死んだ罪人の姿が伸吾の頭をよぎった。あんな死に方だけは絶対にしたくないと伸吾は着崩れた着物を脱ぎ、下帯まで脱ぎ捨ててその場に四つん這いになる。

「この綻び方・・・・・・さっきの色事だけのせいではないな。 俺が居ないところでだいぶ遊び呆けていたか」

 利親は左手で伸吾の尻の肉を掴み押し広げる。そして手にしていた刀を地面に置くと右手の人差指で使い込まれた菊座を撫で上げた。

「あんっ」

「ふん、こんな状況に置かれても男を求めるか――――――淫売が!」

 利親は強引に指を三本一気に押し込み、乱暴に蠢かせる。伸吾の体内で暴れる三本の指は傍若無人に振る舞っているように思えたが、的確に伸吾の敏感な部分を捉えていた。容赦なく前立腺を擦り、腸壁を引っ掻く利親の愛撫に、伸吾は瞬く間に翻弄されてゆく。

「やぁっ、やめてっ兄者・・・・・・だめぇ!出ちゃう、出ちゃうよぉ!」

 すっかり少年の頃の口調に戻ってしまった伸吾は、舌足らずな言葉で快楽を訴えた。縮こまっていた逸物がヒクヒクと動き始め、力を漲らせてそそり勃っている。それに気がついた利親だったが、敢えてそこには触れず、掴んでいた尻を更に強く掴んだ。

「痛いっ!許してください・・・・・・なんでも、しますからぁ。痛いことしないでぇ!」

「その言葉、忘れるな」

 利親は袴を落とし、自らの逸物を引きずり出した。伸吾のものより明らかに一回りは大きいであろう逸物を伸吾の菊座に宛てがった瞬間、伸吾の背中がピクリ、と跳ね上がる。

「お前が欲しがっていたものをくれてやる!」

 その言葉と同時に、太い逸物は伸吾の身体を引き裂くように菊座へと押し込まれた。



 雑木林の中から低く、くぐもぐった嬌声が聞こえてくる。得てして嬌声を放つのは女であることが多いが、その声の低さは明らかに男のものだった。

「もう、許して。利親兄者・・・・・・また、いっちゃうよぉ」

 懇願しながらも伸吾の唇から漏れるのは淫蕩な喘ぎ声だ。だが利親は伸吾の背後を貫いたまま冷酷に言い放った。

「下賤な女をこのような雑木林に連れ込んでまで己の欲望を満たそうとしていたお前が何を言う?もっと、の間違いだろうが!」

 そう言いながら利親は握っている伸吾の逸物を更に扱き上げる。その瞬間、伸吾の逸物は白濁を撒き散らした。既に三度、この形で伸吾は精を放っている。流石に疲労困憊だったが、性欲だけは衰えることを知らず、利親を求めていた。
 否、少年だった伸吾を誑かし、男が無くてはいられないようにしたのは他でもない利親だ。それ故伸吾の感じる部分を全て知っており、どんなに伸吾が疲れ果てようとも欲望を掘り起こすことが出来た。
 その全てを駆使し、伸吾を翻弄している――――――どうやら、殺す前に全ての快楽を味あわせてやろうというなけなしの情けなのかもしれない。そんなことを知ってか知らずか伸吾は更に煽られ、昂ぶってゆく。

「ああっ!もう、堪忍してぇ!」

 快楽に負けた伸吾が頤を仰け反らせる。その瞬間、伸吾の目交をキラリとした何かが掠めた。

「あああっ!!!」

 伸吾がひときわ高い嬌声を上げたその瞬間、伸吾の喉笛から鮮血が吹き出し、利親に強く握りしめられた逸物からは白濁が勢い良く弾けた。更に断末魔の瘧は利親の逸物を咥えこんでいた菊座にも及び、まるで生娘の締め付けのように強く利親の逸物を締め付けてくる。その締め付けを堪能しつつ、利親は喉をぱっくりと斬り開かれた伸吾の顎を捉えた。

「惚けた顔をしおって・・・・・・殺される苦痛より、淫欲が勝ったか」

 頤を仰け反らせたまま、倒れ込んだ伸吾の亡骸の顔を覗き込み、利親が呟く。その眼には妙な慈愛さえこもっていた。

「俺がこの手で殺めずとも、痴情のもつれで殺されていただろうな、お前は」

 そう呟くと、利親は伸吾の唇に己の唇を重ね深く吸う。そして全裸のままの亡骸を横たえ、着物を上にかけた後その場を立ち去った。



 三人の惨殺死体が見つかったのは翌日の朝の事であった。鈴ヶ森の烏が異常なまでに騒がしいと屑拾いの少年が番屋へと訴えたのだ。処刑が行われ、血の匂いがしょっちゅう漂う鈴ヶ森では珍しい事ではないが、その『日常』を訴えるくらいだから何かがあるのだろう。そこで番屋当番が散歩がてら鈴ヶ森へ向かったら、三人の惨殺遺体を発見したという次第である。すぐさま奉行所の役人が呼ばれ、検死が始まったが、身元はすぐに割れた。何故なら検死の同心の一人が伸吾の顔を覚えていたからである。

「おい、こいつ。先月まで山田一門の稽古に来ていた若造だよな?」

「ああ、鈴ヶ森にも何度か来ていたようだが――――――確認のため五三郎さんあたりにでも来てもらおうか」

「そうだな。下手をしたらどこかの家中との厄介事になるかもしれねぇ」

 山田道場の弟子は得てして大名の家臣であることが多い。それ故、町奉行所では『管轄外』と門前払いを食らうことが多いのだが、その間に山田道場が入ってくれれば余計な摩擦は起こりにくいだろうと踏んだのである。そして呼び出された五三郎は、何故か妻の幸と共にやってきた。

「ああ、やっぱり伸吾さんでしたか」

 亡骸を見て真っ先に口を開いたのは幸だった。その声に驚きの色はなく、同心達は訝しむ。

「やっぱり、とは?」

「実は先日、彼の先輩からこの人の素行についてちょっと相談を受けておりまして。厄介事に巻き込まれなければという話を・・・・・・あっ、お春ちゃんとおウメちゃんまで殺されているんですか!あんなに気をつけてって言っていたのに・・・・・・おすみちゃんに顔向けできない」

 筵に包まれていた亡骸の顔の部分を他の同心がはいだ瞬間、幸は悲鳴に近い声を上げ二人の亡骸に駆け寄った。その反応に同心達の方が驚いてしまう。

「ぎ、ご新造さん、こっちの女たちも知っているんですかい?」

「ああ、この二人は仕事終わりの宴で三味線を頼んでいた二人だ。何せ『血の不浄』の直後の宴だ、普通の芸妓はちょっと呼びづらくてな・・・・・・うちで贔屓にしていたんだ」

 お春とおウメの死に愕然としている幸に代わり。五三郎が質問に答えた。

「大きな声じゃ言えねぇけど、あそこは男同士の色恋のもつれが厄介みたいだぜ。俺も幸に任せちまっているけど・・・・・・お師匠様を通じてこの件はあちらさんに言った方がいいかもしれねぇな」

「そうしてもらえると助かる。他藩が絡んでいるとなると大事にもできねぇし」

 管轄外の案件だと確信した途端、同心達はあからさまに関わりを持ちたくないと仲介を依頼する。そして五三郎もその辺は納得しているのか二つ返事で了承した。


 かくして某藩御徒・池端伸吾と鳥追の娘・お春・おウメの惨殺事件は闇から闇へと葬られることとなった。神経質なほど徹底的に掃き清められた事件現場には幸によって手向けられた紅梅と線香の香りだけが漂っている。紅梅の哭き声のような濃密な香りは事件そのものを消し去るのだろうか――――――結局、その惨殺事件の犯人は山田道場にも江戸町奉行書にも、ましてや被害者である浅草弾左衛門の組合にさえ知らされること無く人々の記憶からも掻き消えることとなる。




UP DATE 2017.2.15

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『紅梅、哭く』、後味の悪い終わり方になってしまいました(´・ω・`)しかし当時は『藩』という小さな国がそれぞれ自治権を持っていた時代です。江戸であった事件であってもどこかの家中に属する人間が絡んでしまうと『お家の事情』として町奉行の管轄から外れてしまうことになるのです(´・ω・`)今の警察でも『縄張り意識』の強さが出ることがありますが、こういった江戸時代の悪しき風習を引きずっているんじゃ?と思わなくもない(^_^;)

そして伸吾を殺した利親もたぶん生きてはいないと思われます。流石に伸吾の近くで腹でも斬っていたら『男同士の痴情のもつれか?』と口の軽い町奉行同心から読売屋へ、そして噂大好きな江戸雀達の絶好にネタになるでしょう。それだけは絶対に避けると思いますので、たぶん江戸を脱してか、または藩邸内で事情を説明し、切腹したかのどちらかだと思われます。どのみち箝口令が敷かれて藩の外には絶対に漏れないでしょうが・・・ここまでじゃなくても、『藩の重要機密』はかなりあったようです。

来週は拍手文、そして三月話&四月話にて『紅柊』長期連載編のまとめをするつもりです(*^_^*)もしかしたら短編で中年五三郎&幸の話とか書くかもしれませんが、長期連載としての『紅柊』は一旦おやすみさせていただきたく・・・取り敢えず今まで出てきたキャラの『その後』の話になる予定です❤(ӦvӦ。)
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