「VOCALOID小説」
Mariage

ボカロ小説・Mariage2

 ←烏のおぼえ書き~其の百四十八・箱館奉行 →五月闇の睦言・其の参~天保八年五月の新婚夫婦(★)
 フクザワ・プロダクションのボーカロイド達が揃ってボカロ・アマチュアナイトの予選参加の申し込みをしたのは申込開始日の10日後、5月10日のことだった。
 スケジュール及び事務所の事情により本選に参加できないそれぞれのタイプの1st達、及び予選を免除されているメイコを除いた3組が参加を申し込み、その一組はVanaN'Iceである。あとはソロ枠での参加で、2ndミクとメイコの『弟分』のミクオ―――――恋人同士の二人だ。

「去年メイちゃんが参加していたの、本当に羨ましかったんだよね。しかも今回はクオくんと一緒だし、もうサイコー!!」

 日々仕事に追われているだけに、半年近くの調整期間が休暇のように思えるらしい。更に恋人のミクオと一緒となれば尚更だ。まだ合格したわけでもないのにアメリカでの生活を妄想しはしゃぐ2ndミクを横目に、カイトとミクオは苦笑いを浮かべる。

「大変だな、お目付け役。大方あいつに一緒に来いって言われたんだろ、クオ?」

 カイトの指摘にミクオはははっ、と乾いた笑いと共に頷いた。

「ご明察。更に言うならば社長命令でもある。メイ姉と2ndミク、まとめて羽目を外さないように見張ってろって。尤も予選通過したら、って話だけど・・・・・・俺が落ちたらメイ姉とアイツの事頼んだぜ、3rd」

 ミクオにとって今回の予選参加は自分のチャンスを広げるというより、女性陣の面倒を見るためにと割り切っているらしい。ミクオからは世界進出を狙うといった変な気負いは感じられなかった。そんなミクオを眩しげに見つめ、カイトは自らの前髪を掻きあげる。

「なるほどね。まぁメイコに関しては 俺が全面的に面倒見るから安心しろ。お前はミクに専念すればいいよ。どうせダウンタウンで合宿状態なんだし、何かあったら皆でフォローし合えばいいさ」

 『ダウンタウンでの合宿』という部分にやけに力を入れるカイトに、ミクオも同意する。

「確かにね。そう言えば今回はダウンタウン野放し組と研究室管理組との研究もあるらしいよな。去年の成績が偶然だったのか、それとも理由があるものだったのか――――――俺個人としては、単なる図々しさの違いだけだと思うけどなぁ」

「だな。普通なら人間の命令通りに動くべきボーカロイドが自己主張してダウンタウンに住み着いたんだから。そういう性格の違いだと俺も思う」

 お互いの妄想やら希望やらを多分に含めた会話をしているカイトとミクオだったが、そんな二人をがくぽは何の気なしに見つめていた。
 予選があるとはいえ、多分フクザワ・プロダクション所属のボカロたちは高確率で予選を通過するだろう。そうなるとルカと長期間会えなくなることが更に現実味を帯びてくる。恋人と共にアメリカに行ける可能性が高いカイトやミクオが羨ましいと正直思う。だが、メンテナンス・ボカロであるルカをアメリカに一緒に連れていくわけにはいかないのだ。予算の問題もあるし、そもそも彼女も仕事を多く抱えている。

(アメリカに連れていくことは出来ないけど、せめてけじめだけでも付けたほうが・・・・・・)

 と、がくぽが思いを巡らせたその時である。考えこむがくぽを訝しく思ったらしく、ミクオががくぽに声をかけてきた。

「何か元気ないな、がくぽ。もしかしてルカさんと離ればなれになる事に落ち込んでいるのか?」

 ミクオに図星を突かれ、がくぽは言葉を失う。

「おい、クオ。そうはっきりと・・・・・・流石に研究所付きの開発・メンテナンス・ボカロをコンテストに連れていくことは無謀すぎるだろう」

 カイトがフォローにもならないフォローを入れるが、それは余計にがくぽを落ち込ませるだけだった。そんながくぽを見て流石に気の毒に思ったのか、ミクオはぽん、とがくぽの肩に手を乗せ慰めの言葉をかける。

「確かにな。北堀さんのルカさんがマネージャー・ボカロに選出されないかぎり、一緒に向こうに行くのは難しいか」

 マネージャー・ボカロ――――――ミクオが呟いたその一言に、がくぽとカイトは驚きに目を見開いた。

「マネージャーボカロ?何だ、それは!そんな事、俺は聞いてないぞ?」

 がくぽあ肩に置かれたミクオの手を振り払い、立ち上がる。そんながくぽにミクオは怪訝そうな表情を浮かべる。

「聞いてないも何も、ボカロ・アマチュアナイトの参加要項に書いてあるぞ。読んでないのか?」

 がくぽに語りかけつつ、ミクオは自らのカバンの中から参加要項の書類を取り出し、ペラペラめくりだす。

「ほら、あった!ダウンタウン組の管理は研究所が選出されたマネージャー・ボカロが行うって。どうやら研究所の人間の影響を極力避けつつ、でもデータ取得はキッチりしたい、ってことから今回選出されたボカロ達のマネージャーもボカロがやるらしいぜ」

 勝ち誇ったように胸を張り、ミクオは書類をがくぽに渡した。そこにはミクオが説明したことの詳細が書かれている。がくぽはその書類を凝視しながら、低い声で呻く。

「本当だ・・・・・・こんなシステムになっていたなんて」

「向こうに行けば研究所側が上げ膳据え膳で面倒を見てくれると思って何も読んでないや」

 がくぽの手元を覗きこみつつ、カイトがバツの悪そうな表情を浮かべた。三人とも予選申込をした時点で安心してしまい、書類にほとんど目を通していなかったのだ。

「それにしてもよくこんなところまで読み込んでいたな、クオ」

「任せろよ!て言いたいところだけど、実はメイ姉からの情報なんだ。予選を通過したらマネージャー・ボカロの希望も聞かれるから今のうちに考えておけって言われてさ」

 照れくさそうな笑みを浮かべつつ、ミクオは情報を知っていた種明かしをした。

「一応メイ姉が親友のルカさんを自分のマネージャー・ボカロにしてくれ、って申請しているんだ。だったら俺やミクも予選を通過したらまとめて面倒見て欲しいってメイ姉を通じて既に研究所の方に申請している。どうする?VanaN'Iceとしては?」

 未だ書類を凝視しているがくぽとカイトに、ミクオが挑むように尋ねる。するとがくぽが書類から視線を上げ、決意に満ちた声で答えた。

「ルカのマネージャーボカロの件、申請する価値はあるな。尤も俺達が予選を通過しなければならないが」

「だよな。ルカさんだけがアメリカに飛んで、VanaN'Iceが日本に残る、なんて言ったらシャレにならないし」

 ミクオの一言にカイトと少し離れたソファーでゲームをしていたレンが思わず吹き出す。

「確かに!となると俺達の責任は更に重くなるな」

「だよな!頑張って予選通過しないと!」

 レンも近くに来て会話に加わる。どうやらVanaN'Iceとしては意見がまとまったようだ。

「どのみち俺達も、ルカも審査に通らなければらならないが・・・・・・半年間別れ別れにならずに済む可能性は出てきたのかな、というのはあるな」

 兎にも角にもまずは自分たちが予選を突破しなければならない。それは男として、そしてVanaN'Iceが世界に羽ばたくための必要条件だ。がくぽは未来へ一歩踏み出す為の覚悟を決めた。



 VanaN'Iceとして進むべき道を決めた翌日、がくぽはルカを呼び出した。仕事を早く切り上げて東京に来たルカだったが、到着したのは8時過ぎだ。

「済まない。急に呼び出したりして」

 急な呼び出しにがくぽは詫びを入れるが、ルカは気にしなくて良いと首を横に振った。

「実は来週から一週間ほど東京でお仕事の予定でしたの。でもがくぽさんから呼び出されたでしょ?ついでだからって少し仕事を前倒ししてもらいました」

「東京での仕事って、出張メンテナンスか?」

「ええ。小規模の事務所さんのAI型ボカロ3体が定期メンテナンスに出されていなくて。その子達の出張メンテナンスをマスターと一緒に行う予定なんです」

 整った顔立ちが無邪気な笑みに崩れる。その笑顔にがくぽもつられて笑った。

「そうか。となると今夜は泊まりでも大丈夫なんだな?」

「ええ」

 がくぽの問いかけにルカは頬を赤らめ頷く。そんなルカの手を握り、がくぽは駅の近くにある高級ホテルにそのまま入っていった。



 眼下に美しい夜景が広がるホテルの一室で、がくぽとルカはルームサービスの夕食を取っていた。ここ最近個体数が多くなってきたとはいえボーカロイドは目立つし、ボーカロイドを厭う人間も少なからずいる。そんな諸々のトラブルを予め避けるため、二人はルームサービスで食事することが多かった。

「ルカ。聞いてもらいたいことがある」

 デザートが運ばれ、ウエイターが退出したのを見計らい、がくぽが口を開く。

「何でしょう?」

 何か予感するものがあるのか、心なしかルカの返事も固い。そんなルカの反応を見届けた後、がくぽは掌に乗るほどの小さな箱をテーブルの上に取り出し、語り始めた。

「実は、今度のボカロ・アマチュアナイトの予選に俺達VanaN'Iceも出場することになった。そこで・・・・・・」

 がくぽは一旦言葉を区切り、押し出すように続ける。

「もし、俺達が予選を通過したら一緒にアメリカに来て欲しい。マネージャーボカロとして、そして」

 意を決したがくぽは、小箱の蓋を開け、ルカに差し出した。

「俺の妻として」

 それは2カラットはあるかと思われるダイヤの指輪――――――ハリーウィンストンのエンゲージ・リングだった。




Back     Next


にほんブログ村 小説ブログへ
INランキング参加中v
こちらはブログ村の小説ランキングにリンクしております。



こちらは画像表示型ランキングですv




とうとうがくぽがルカにプロポーズいたしましたキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
拙作の中ではきちんと段取りを踏んで付き合ってきた二人もようやくここまでたどり着きました( ;∀;)
流石にここまでされたらルカもプロポーズを受けるでしょう(*´艸`*)ただ、もう一つの問題―――マネージャーボカロの件はもう一山ある予定です( ̄ー ̄)ニヤリ
詳細は第三話、第四話で書かせていただきますが、そこで語られることが拙作における『ボカロのさらなる進化』についての大事な部分になってゆきます。とは言ってもできるだけ判りやすく、簡単にを目指しますが(^_^;)

次回更新は5/24、プロポーズへの答と、あえてボカロをダウンタウン組のマネージャーにする意義について書かせていただきます♪
関連記事
スポンサーサイト

 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png vague~道場主・作間駿次郎顛末記
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏虫~新選組異聞~
総もくじ 3kaku_s_L.png 紅柊(R-15~大人向け)
総もくじ 3kaku_s_L.png 葵と杏葉
総もくじ 3kaku_s_L.png 横浜慕情(大人向け)
総もくじ 3kaku_s_L.png 短編小説
総もくじ 3kaku_s_L.png VOCALOID小説
総もくじ 3kaku_s_L.png 雑  記
総もくじ  3kaku_s_L.png vague~道場主・作間駿次郎顛末記
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏虫~新選組異聞~
総もくじ  3kaku_s_L.png 紅柊(R-15~大人向け)
総もくじ  3kaku_s_L.png 葵と杏葉
総もくじ  3kaku_s_L.png 横浜慕情(大人向け)
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編小説
総もくじ  3kaku_s_L.png VOCALOID小説
総もくじ  3kaku_s_L.png 雑  記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【烏のおぼえ書き~其の百四十八・箱館奉行】へ  【五月闇の睦言・其の参~天保八年五月の新婚夫婦(★)】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【烏のおぼえ書き~其の百四十八・箱館奉行】へ
  • 【五月闇の睦言・其の参~天保八年五月の新婚夫婦(★)】へ