「VOCALOID小説」
Mariage

ボカロ小説・Mariage1

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 大盛況だった第一回を受けて第二回ボカロ・アマチュアナイトの開催が決定、その予選会の受付が始まったのはGW真っ最中の5月1日の事だった。

「本来ならば4月中にでもお知らせできるはずでしたが、だいぶ予定がずれ込んでしまいました。その理由は大会システムの大幅な変更です」

 大手事務所から個人ボカロPが集まる会場で、ボカロ・アマチュアナイト担当者であるボカロ研究所主任研究員・綾瀬が口を開く。

「昨年の大会では予想以上に参加者が多く、混乱をきたしたことはご存知かと思います。そこで今年は各国で予選を行い、それに勝ち残った上位3組を本選に出場させることとなりました。参加資格は日本国内にて登録を行っているボーカロイドであること。なお予選会は一ヶ月後の6月1日、課題曲のみで選出いたします」

 日本国内での予選会――――――つまり日本国内で活動している全てのボーカロイドたちにチャンスが有るということだ。綾瀬のその言葉に、会場はざわめく。

「すみません、質問よろしいでしょうか?」

 ざわつく会場の中、質問に手を上げたのはVLGipfel社の専務・柄溝早希だった。

「3組、とのことですがグループでの出場もOKなのですか?昨年はソロのみだったようですが」

「はい。今年からグループでの参加も許可されました。その点については後日アメリカから詳細が来ますが、国によってはグループ3組、個人3名が代表として参加できるかもしれません。ただ、今現在ははっきりと決まっていませんので、ソロ、グループ含めて3組とさせていただきます」

「国によっては、といいますと?中には3組出せない国もあるのですか?」

 今度はフクザワ・プロダクションの社長、福澤が尋ねる。

「ええ、ボーカロイドそのものの登録が少ない国もありますからね。今現在、基準の最終調整に入っているのですが、2週間後にはその詳細が判明するかと思います」

「基準が未だ決まっていないのに予選が行われるんですか?」

 咎めるような福澤の一言に、綾瀬は眉一つ動かすこと無く答えた。

「はい。そうでないと本選への準備期間が短くなってしまいます。せめて半年は欲しいところでしたが、それは既に切っていますしね。チーム・ジャパンとしては早めに代表者を決めて準備に取り掛かりたいのです。それと・・・・・・」

 綾瀬は更に言葉を続ける。

「昨年は我が日本チームで独特の結果が出ました。管理棟ではなく街中で生活していたグループが予選を通過したと。その検証のために可能なチームは早めにアメリカで生活を送ってもらいたいとアメリカ支部から要請がありました」

「いや、待ってくれ!もし売れっ子のボカロが予選を通過してしまったら・・・・・・」

 所属ボカロの殆どを予選に参加させようとしていた福澤は慌てるが、綾瀬はそのことも想定済みだったらしく落ち着いた口調で福澤に答えた。

「そういう子達は参加させないでください。あ、因みに昨年準優勝をしたメイコは別枠での参加を求められていますので、日本での活動は諦めてくださいね福澤さん」

 綾瀬に釘を刺されてしまった福澤だが、この点に関しては予め元妻である浅川から伝えられていたのでそれほどショックは無かった。だが、もし他のボカロをコンテストに出したいと思った場合、半年間国内での活動ができなくなるというのは極めて痛い。

「アマチュア・ナイトを足がかりり世界進出を、と考えていたけど・・・・・・」

「そう甘くな無い、ってことですね」

「人気がなくても実力がある若手にチャンスを、ってことですかね。我々にとってはありがたいですが」

 売れっ子を抱えている大手事務所はタレントのスケジュールとコンテストへの参加を天秤にかけての判断を下さねばならない。その一方、若手実力派は最大のチャンスと息巻いている。

「話は以上になります。詳細は2週間後に追って連絡いたしますので今暫くお待ち下さい」

 綾瀬の一言でその場はお開きとなった。

「福澤さん、少し宜しいですか?」

 説明会が終わり、早々に帰ろうとしていた福澤に、柄溝早希が語りかけてくる。

「ああ、柄溝さん。何でしょうか?」

 ライバル会社の専務に対し、福澤は作り笑顔を浮かべる。

「貴社所属の『MEIKO』――――――昨年の準優勝者について少々お伺いしたいのですが、『MEIKO』とアマチュア・ナイトの相性は良いと思われますか?」

「いえ、一概には何とも・・・・・・もしかして先日獲得した『めーこ』を出そうと?」

 ダメ元でカマをかけてみた福澤だったが、柄溝はあっさりと頷いた。

「はい。アプリ型だった時の実績はありますけど、AIとしてはまだまだ不安定ですから。むしろ半年間じっくり時間をかけて調整できるアマチュア・ナイトは都合が良いんです。しかし既に『MEIKO』が出ていますから・・・・・・」

 確かに実力はあれどまだまだ不安定な『めーこ』にとって、半年間じっくり調整できる環境は魅力的だろう。その件に関しては福澤も納得する。

「どのタイプのボカロを何体出すか――――――それは研究所が決めるでしょう。しかし、街中暮らしは覚悟しておいたほうが良さそうですよ。かなりガラの悪い生活をしていたようですから」

 冗談めかして告げた福澤だが、それはVLGipfel社に対する牽制だった。噂によると『めーこ』も、そのマスターである山本もかなりの温室育ちだという。そんな彼女達に半年間のダウンタウン生活が耐えられるとはちょっと思えなかった。それは柄溝も思い当たるらしく、迷いが表情に浮かんでいる。

「あくまでも僕の感覚ですけど、扱いづらいやんちゃタイプのボカロの方が成功する可能性は高いと思いますし、アメリカの要請にも答えられると思いますよ。ではお互い頑張りましょう」

 そう言いのこし、福澤は会場を立ち去った。



 説明会から会社に戻ってきた福澤は緊急会議を開き、説明会での内容を皆に知らせた。

「・・・・・・というわけだ。予選会に参加するのは自由だが、万が一予選会を通過したらその後半年近くアメリカでの調整が待っていて、日本での活動ができなくなる。その点を考慮すると、俺の咲音と1stカイト、1stミクの参戦は無理だろう。2nd達も微妙だな」

「3rdカイトも困りますよ。VanaN'Iceの活動も最近多くなってきていますし」

「・・・・・・だが、3rdはメイコとの相性が良い。もし3rdに参加意思があるようなら眠らせている4thを起動させるという事もありだろう」

「となると、がくぽやレンとの調整が・・・・・・」

「う~ん。その件については3人の意思を改めて聞いたほうが良さそうだな。今回はバンドの参加も認められている。半年間の活動休止は痛いが、世界進出への足がかりと考えれば致し方がないか」

 人間たちが喧々諤々の会議をしている中、ボーカロイドたちはそれを別室で聞いていた。というか敢えて聞かせていたと言っていいだろう。ネット回線越しに会議内容を聞いていたボカロたちは互いに己の思いを吐き出し始めた。

「やっぱり1st、2ndだと参加は無理みたいだね」

「仕方ないさ。名誉だけ追っかけているわけにもいかねぇだろ。俺たちはいざとなれば研究所に戻ることができるけど人間には死活問題だ」

「でも参加は無理でも、本選は見に行きたいなぁ」

「それくらいは許してもらえるわよ。それを聞いて来年の参加を決めてもらえるかも知れないしね」

 そんな中、VanaN'Iceの3人は顔を突き合わせて真剣に話し込んでいた。

「悪いが、俺はソロでも予選に参加するぜ。VanaN'Iceを世界に売り出すにはアマチュア・ナイトで顔を売るのが一番手っ取り早いし、社長だって認めている」

「俺もカイトと同じぃぃぃ!半年間ダウンタウンで好き放題できるんだろ?メイコに聞いた話でもすっげぇ楽しい半年間だった、って言っているし。俺もダウンタウン暮らし、したい!」

「ま、誰かさんに傷つけられた中枢ダメージが回復を見せるくらい精神的には良いらしいな、下町生活は。だけど羽目をはずしすぎるのも問題だぞ、レン」

 がくぽははしゃぐレンを窘めると、腕を組み黙りこんでしまう。

「がくぽ、お前はどうなんだ?参加する気があるのなら立候補しようぜ。きっと俺達なら本選に行けるって」

「・・・・・・ああ。少し考えさせてくれ」

 なにか思うフシがあるのか、がくぽは二人を残したまま部屋を出て行った。



 ふらりと部屋を出たあと、喫煙所に出向いたがくぽは煙草を一本取り出し、吸い始めた。ボーカロイドにとっては毒にも薬にもならない嗜好品だが『考える体勢』を作り出せるアイテムとしてがくぽは煙草を利用している。

(ボカロ・アマチュア・ナイトの予選か・・・・・・確かに世界進出に向けての足がかりとしては魅力的だが)

 だが、予選を突破した場合、半年近くのアメリカ生活を強いられる。その間日本で活動できないことに対しての不安はあるし、がくぽには更にもう一つ心残りがあった。

(ルカと・・・・・・半年間も直接逢えなくなる可能性があるのか)

 そう思った瞬間、胸がキュッ、と締め付けられるような錯覚に陥る。ただでさえ芸能活動をしているがくぽと研究所に所属し他のボカロたちのメンテナンスや開発に携わっているルカは週に一度くらいしか逢えない。毎日顔を合わせる同業のボカロに比べてこれは極端に少ないほうだ。しかもアメリカに行ってしまったら更に会う回数は少なくなるだろう――――――否、向こうにいる半年間は直接会うことは出来ないと考えたほうが良い。

(いっそ結婚してしまったら・・・・・・)

 だが、『家族』を同伴させてくれるかも極めて怪しい。

(ま、どのみち予選を通過しないことには心配してもしょうがないけどな)

 まずは予選参加から――――――がくぽは半分ほど吸った煙草を灰皿でもみ消すと、メンバーが待っている部屋へと戻っていった。





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今回のボカロ小説はがくルカ・ジューンブライドものになります(*´ω`*)休止前の最後の話となりますが、宜しかったらお付き合いお願いいたしますm(_ _)m

今回は『全員参加OK、誰でも世界的ボカロになれるチャンス!』とばかりに日本でボカロ・アマチュア・ナイトの予選会の話から始まりです。やはりアーティストとしてはビッグチャンスをものにしたいでしょう。しかしそのためには半年間の日本国内での活動ができなくなるという・・・そのジレンマと闘いながらの参加決定となります。
果たして予選には誰が出るのか、そしてがくぽはルカに自分の気持ちを素直に伝えることができるのか・・・次回をお楽しみ下さいませm(_ _)m
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