「VOCALOID小説」
アプリとAI~それでもボカロは恋をする

ボカロ小説・アプリとAI~それでもボカロは恋をする3

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 アプリ型『めーこ』の精査終了後、即時にAIのボディに彼女の今までの情報の移植が開始された。とは言っても『MEIKO』本体であるディスクデータとXPに残された歌唱データ、その他彼女の『性格』を形成していた細かな欠片を拾い上げ、AIのメモリーに流し込むだけなので時間的には10分足らずだ。ただ、そのデータが上手くAI型のメモリーと馴染み、滞りない動きをするかどうかはまた別の問題である。

「そろそろ起きても大丈夫よ、『めーこ』。というか起き上がり方、わかる?」

 案の定、データ移植を終えても未だボカロプールに横たわったままの『めーこ』に、北堀のメイコは声を掛ける。するとその声に反応して『めーこ』は人口羊水の中で目を開けた。だが『実体』動かす勝手が解らないのか、なかなか起き上がれないようだ。

「待っていてね。今手伝ってあげるから」

 メイコは起き上がることに苦戦している『めーこ』の両手を握ると、そのままボカロプールから引っ張り上げた。

「ア、アリガトウゴザイマス。本当ニ・・・・・・重インデスネ、AIノ身体ッテ」

 ボカロ・プールから引っ張りあげられた『めーこ』はメイコに礼を言う。辛うじて口の動かし方は何とかなるようだが、かなりたどたどしい。というかアプリ型の『トークロイド』に近いかもしれない。それでも実際の声で意思疎通ができるのは明るい要素だ。

「確かに今まではプログラムだけの存在だったものね。物理的に動くって言っても電子信号のやり取りだけだったし。暫くは歩くのも難しいかな・・・・・・マスター、聞こえますか?」

 メイコはインカムを通じて北堀に声をかける。するとイヤホンを通じて北堀の声が聞こえてきた。

『ああ。『めーこ』は動くのに苦戦しているようだね。今そっちに麻友くんが車椅子を持って行くからちょっと待っていてくれ』

「Yes,master、って言っているうちに飛び込んできました」

 メイコの指摘通り、北堀に返事をする前に『めーこ』のマスターである麻友が車椅子を押して、オペ室へと飛び込んできた。

「めーこ!!」

「ますたぁ!!」

 データ移植が無事成功したことに感極まったのか、麻友はまだ人口羊水に濡れたままの『めーこ』の身体を抱きしめ、わんわんと泣き出す。やはり成功するまでは心配だったのだろう。

「良かったぁ・・・・・・移植が成功してくれて。もうだめかと・・・・・・めーこと二度と逢えないかと思ったぁ」

「ますたぁ」

 麻友は勿論だが『めーこ』も不安だったのだろう。麻友に抱きつき泣きじゃくる。できることならこのまま『感動の再会』を続けさせてあげたいが、そうも言っていられない。

「あの・・・・・・感動の抱擁も良いんですけど、取り敢えずここから出て『めーこ』さんを外の環境に慣らしませんか?」

 ボーカロイドは風邪をひかないが、人口羊水に濡れてしまった麻友が風邪をひく可能性はある。

「あ、ごめんなさい!つい嬉しくって」

 我に返った麻友が恥ずかしげにメイコに誤り、そっと『めーこ』に回した腕を解いた。

「じゃあ、麻友さん。車椅子を押さえていてください。私が『めーこ』さん車椅子に乗せます」

 メイコは麻友に頼むと、テキパキと『めーこ』に繋がっていたコードを外し、人口羊水に濡れた身体をタオルで軽く拭く。そして膝の下と背中に腕を通すとそのまま『めーこ』をお姫様抱っこし、裸のまま車椅子に乗せた。

「隣に人口羊水を洗い流すシャワー室がありますから、まずはそちらに。着替えはそちらにあります。今回の『めーこ』さんの洗浄には特別な溶剤を使いますので麻友さんはシャワー室の外で待っていてください」

 特別な溶剤――――――メイコのその一言に、不意に麻友は不安げな表情を露わにする。

「特別な溶剤って・・・・・・私も人口羊水付いちゃっているんだけど」

「人口羊水そのものは水で洗い流せますし、拭き取る程度でも問題ないので心配しないでください。ただ『めーこ』さんは何もかもが初めてなので、AIボディに最も刺激が少ない洗浄溶剤を使います。ちょっと過保護ではあるんですけど」

 普段であれば、AIボディに纏わりついた人口羊水はボカロ・プール内で水を使って洗い流す。ただ『めーこ』は外部刺激に敏感な傾向があるので、特に刺激が少ない洗浄溶剤を使用しようと北堀が決定していた。余談であるがこの洗浄溶剤は1kg30万円ほどし、表皮修復機能もあるため一部の女性ボーカロイドは美容液代わりにこれを購入している。

「じゃあ麻友さんはこちらのシャワールームを。私達はこちらで洗浄をします」

 メイコは麻友に笑顔を見せると、『めーこ』の車椅子を押し、ガラス張りのシャワールームへと入っていった。



 福部雅之が自らのKAITOを連れてボカロ研究所にやってきたのは『めーこ』が起き上がって1時間ほど経過した頃だった。元々定期オーバーホールの予定があったのだが、それに『めーこ』のAI移植が重なったので、頑張って早く仕事を終わらせたらしい。

「北堀さん!『めーこ』ちゃんはどうなりましたか?無事AIになったんですか?」

 マスターである雅之を押しのけ、北堀に迫るカイトに北堀は苦笑いを浮かべる。

「ははっ。君の弟妹たちから噂は聞いていたけど、かなり熱烈な『めーこ』ファンだね。まだ身体を自由に動かすことは難しいけれど、発声は辛うじてできているかな。ただ元々アプリ型だからね。喋ると言っても『トークロイド』程度だ。彼女がAIらしくなっていくにはまだ少し時間がかかる」

「そう、ですか」

 少しがっかりしたような。でもホッとしたような表情も浮かべつつ、カイトは微かに笑みを浮かべた。

「でもやっと言葉のやり取りができるようになるんですよね。だったらこれからゆっくりと・・・・・・」

 その時である。自動ドアが開き、麻友と車いすに乗った『めーこ』そしてその車椅子を押しているメイコの三人が入ってきたのだ。その姿を確認した雅之は麻友に向かって笑顔を向ける。

「あ、麻友くん。お疲れ様。どうやら無事『めーこ』はAI型になったようだね」

 雅之にとって『めーこ』は姪っ子のような存在だ。無事にAI化されたことに心底ほっとする。だが、雅之以上に『めーこ』のAI化成功を喜んでいるものがその隣りにいた。マスターである雅之の横をすり抜けるように、カイトは『めーこ』に近づきその手を強く握る。

「めーこちゃん。俺のこと覚えてる?」

 欧州の騎士の如く片膝を付き、イケメンそのものの表情を作ったカイトが『めーこ』の瞳を覗き込む。

「ハ、ハイ。勿論、デス」

 如何にも紳士なカイトの行動に照れてしまったのか、それともまだ口の動かし方に慣れていないのか、ぎこちない口調で『めーこ』はカイトの問いかけに答えた。

「あぷりダッタ私ニモ、平等ニ接シテクダサッテ、アリガ・・・・・・」

 と『めーこ』がカイトに礼を言いかけたその時である。不意にカイトと雅之の背後の扉がバン、と開かれそこからカイトの妹達三人がずかずかと入り込んできたのである。
 そしてルカとミクが兄の手を『めーこ』から強引に引き剥がし、リンが二人の間に入り込んで両手を広げ、バリケードを作る。

「バカ兄貴!こっちに来ている筈なのに連絡寄越さないと思ったら、ソッコー『めーこ』ちゃんに纏わりついて!!GPS切ってたでしょ!!」

「それだけじゃありませんわ!いきなり『めーこ』さんの手を握るなりにやついて・・・・・・そういうの、やめていただけませんこと?妹として嘆かわしい!」

「めーこちゃんに寄るな、触るな!変態!!」

 二人の『MEIKO』、そして雅之以外の人間たちが呆気に取られる中、カイトの妹達三人はずるずると兄を部屋の隅へと引っ張っていく。だがそれを雅之は止めようとせず、ミク、ルカ、リンの好きなようにやらせていた。。

「あ、あの・・・・・・大丈夫なんですか?」

 あまりにも壮絶な、というより一方的にカイトが袋叩きにあっている光景を目の当たりにして、麻友が心配そうに雅之に尋ねる。

「ああ。あれはいつものことでね。だけど『めーこ』をびっくりさせちゃったかな?ごめんね」

 雅之は麻友と『めーこ』に謝る。

「イ、イイエ大丈夫デス。トコロデ・・・・・・」

 『めーこ』が使い慣れない舌や唇を精一杯駆使して雅之に尋ねる。

「AI型ぼーかろいどッテ、0.1ばいと刻ミデ相手ノめもりーヲ読ミ取ルノガ普通ナンデスカ?」

「はぁぁ?」

 のんきな口調の『めーこ』の言葉だったが、そのあまりに非常識な内容に、その場に居た全員の表情が凍りついた。

「おい、カイト!」

 流石に怒りを覚えた雅之の声が低く、カイトを呼ぶ。

「お前、本当に『めーこ』ちゃんのメモリー、0.1バイト刻みで読み取ろうとしたのか?」

「い、Yes,master」

 雅之の問いかけに肯定の返事をしたカイト。その刹那、妹たち三人の拳と蹴りがカイトを襲った。

「恥を知れ、キモヲタ!!」

「最低!ボーカロイドの風上にも置けませんわ!」

「 もういっそスクラップされちゃえ!」

 得てして女きょうだいというものは男兄弟に容赦無いものだが、雅之のボーカロイドたちは特にひどい。まるでバトルロイドのような兄弟げんかのやり取りを見つめつつ、メイコは『めーこ』に語りかける。

「ねぇ・・・・・・やっぱりXPのフィルター越しっていうのは、実像を歪めているみたいね。本当にあいつでいいの?」

「・・・・・・ハイ。私ニハ、紳士的ニ接シテクレマスノデ」

「下心が見えすているけどな」

 雅之は自分のことを棚に上げ、忌々しげな口調で北堀にカイトの即時オーバーホールを頼んだ。

「北堀さん、今回のカイトのオーバーホール、特に念入りにやってください。でないと今後『めーこ』ちゃん絡みで色々と問題が」

 そう北堀に頼みつつ、雅之は麻友の表情をちらりと盗み見る。今後このような状況が続いてしまえば、麻友と『仕事仲間』以上の関係に進むことさえ難しいだろう。その気配を感じた北堀は、小さく笑い、雅之の肩に手を置いた。

「ああ、判った。その辺はきっちりやらせてもらうが、多分あの執着心は変わらないと思うよ。得てしてボーカロイドはそのマスターの影響を強く受けるものだ」

 意味深な一言を雅之に投げかけた後、北堀はカイトのオーバーホール準備をするよう部下に指示を出した。





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案の定というかやっぱりと言うか、3話で終わらせることは出来ませんでしたwww

無事AI化に成功した『めーこ』ですが、まだまだ手足を動かす事は難しいらしく、辛うじて口周りの筋肉を動かすことだけができるようです(#^^#)これは訓練でじき治っていくものですが、やはり今まで戦記信号のみの、単純な存在でしたからねぇ。手足を動かす複雑な信号を送るのはやはり難しいのでしょう。

そこにやってきた福部カイトwwwいきなり『めーこ』の手を握りしめ、0.1バイト単位でめーこのメモリーを覗き見するというorz
因みにこの行為は、ボカロにとって風呂のぞきと同レベルの犯罪です(-_-;)


次回更新は4/26、最終回になります(●´ω`●)
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