「VOCALOID小説」
アプリとAI~それでもボカロは恋をする

ボカロ小説・アプリとAI~それでもボカロは恋をする2

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 山本麻友のアプリボカロ『めーこ』との会話チェックを終えたメイコは、マスターである北堀に一部始終の報告をした。一応その様子は部屋に取り付けてあるカメラで撮影されているが、何かと多忙な北堀である。MEIKO達の会話をのんびり聞くことなど不可能だ。

「・・・・・・というわけなんです、マスター。所内に行き交う情報でさえ彼女には負担らしくって。なので『めーこ』への情報流入をできるだけシャットダウンしていただけますでしょうか」

 全く想定もしていなかったメイコの報告に、北堀は軽い驚きを露わにする。

「所内情報なんて、部署間の事務的連絡くらいだぞ?それにさえも驚くなんて。麻友くんはどれだけ『めーこ』を過保護に扱っていたんだ」

 苦笑いを浮かべながら北堀はPCモニターに向かい『めーこ』に接続されている回線のチェックを始める。するとメンテナンス中のボカロと研究員の間で行われる会話用回線だけは唯一外部と繋がっていることは判明した。

「ああ、なるほどね。普段なら普通に開きっぱなしにしてある回線が、『めーこ』には負担だったようだ。少々面倒だけど『めーこ』の負担を考えると、会話の度に開いたほうが良さそうだね」

 すると何かを思い出したメイコが思わず声を上げた。

「あ、どうしよう。約束しちゃったのに」

「何か問題でもあるのか?」

 北堀が尋ねると、メイコは頷きつつ『めーこ』の為に自分の端末の一部を開放していることを告げた。

「ええ。もし精査中暇だったら『私』を使ってあちこち見て回ってもいいよって、私の『目』と『耳』の一部を『めーこ』用に開けてあるんですけど、回線を閉じちゃうとそれも出来ませんよね」

「ああ、それはちょっと無理だな。理由を告げて諦めてもらおう。尤も今まで『めーこ』が君の『目』を使った様子は無いんだろ?」

「はい」

「ならばしばらくは外部と完全にシャットアウトしておいたほうが良いだろう。むしろAI型に移行してからゆっくりと外部の環境に慣らし、そのあとでネット回線の接続も行ったほうが良さそうだ」

「まるで開発当初のAIみたいですね」

 メイコ自身もそうやって北堀の家族の許で外部環境に慣らしていってもらった覚えがある。昔を懐かしむように目を細めながら呟くメイコに、北堀は『その通り』と言葉を続けた。

「『めーこ』は開発当初のAIそのものだからね。当時のAIプログラムをそのまま焼き付け、ディスクに保存しているんだから。それが今まで綺麗な状態でいたのは奇跡に近い」

 そう言いながら北堀はキーボードを打ち続ける。

「取り敢えず『めーこ』はプロト・タイプか初期型AIのような方法で環境に慣らしていく方針でいこう。ところで話は変わるが」

 北堀は、モニターを注視しつつメイコに語りかける。

「メイコ。1時間後の『めーこ』のチェックのあと、一旦自宅に戻ってくれないか?カイトが『客人』に手を焼いているようでね。珍しく私にメールを寄越してきた」

 開発及びメンテナンスに携わる仕事をしている時、北堀家のボカロたちは極力連絡をしてこない。それは互いにこの仕事の大変さを知っているからだ。なのでよっぽどのことがない限り直接連絡はしてこないし、ちょっとした連絡ならばマスターである北堀を通じて連絡を取り合う。
 それでもカイトは殆ど北堀へメールをすることは無い。それだけにかなり切羽詰っているのだろう。

「お客様?今日って誰か来る予定・・・・・・あっ!」

 メイコは何かを思い出したかのように口に手を当てる。

「福部さんのところの兄妹がまとめてオーバーホールに来ているんでしたっけ?でもあそこにもKAITOがいるんだから手分けして面倒を見れば・・・・・・」

「いや、今日KAITOは仕事で来ていないらしい。というか『めーこ』の騒動があってKAITOパートの録音が出来なかったんで、先にミク、ルカ、リン、レン4人のオーバーホールをしたんだが」

 北堀は何故か神妙な面持ちでメイコに呟く。

「得てして本人が居ないところで愚痴っていうものは爆発するものだ。同じ『KAITO』としていたたまれないんだろ、うちのカイトは」

「なるほど。じゃあ『めーこ』関連の仕事が終わったら我が家へフォローを入れに帰ります」

 そんなメイコの言葉に北堀は父親のような笑みで頷いた。



 北堀の指示に従ってメイコは仕事を終えたあと、ボカロ研究所本局とボカロ・ビレッジを繋ぐ直通シャトルを使って自宅に戻った。つい最近開通したシャトルだが、これによって研究員や開発用のボカロの往来が楽になったため、メンテナンス程度であればボカロ・ビレッジで行うことができるようになった。今回福部のボカロ4姉弟がメイコ達のところにいるのはその為である。

「ただいま~」

「あ~~~~!!めーちゃん、お帰り~!!やっと帰ってきてくれた~!!」

 メイコが玄関を開けるなり、飛び出してきたカイトがいきなり抱きついてきた。どうやら家に近づいてきた足音を敏感に聞き取っていたらしい。

「ち、ちょっと何があったのよ?マスターから一度帰ってやれって言われたけど」

 抱きつきべそをかくカイトの頭を撫でながらメイコが尋ねる。

「うん。もう妹達の会話がツラすぎてツラすぎて・・・・・・内容があまりにも酷すぎるから、俺もアイツの事、フォロー出来なくて」

 どうもカイトの話だけでは理解できない。メイコはカイトを抱きつかせたまま部屋へと入ってゆく。

「ただいま~」

 メイコが部屋にはいると、そこには二人のミク、二人のルカ、そして二人のリンがお菓子を食べながら車座になっていた。どうやらガールズトークの真っ最中だったらしい。北堀家の開発ボカロたちは私服を、福部家のボカロたちはメンテナンス用の入院着を着てる。

「あら、レン達は?」

 怪訝そうにメイコが尋ねる。車座の中には弟達の姿が見当たらないのだ。

「ああ、レン達なら自分の部屋でゲームやってるよ!」

「と言うか、逃げ出したっていうのが正しいかなぁ」

 元気いっぱいに答えたリン達に続き、苦笑いを浮かべた北堀家のミクが姉に答える。

「逃げ出したって・・・・・・あんたたち、どんだけろくでもない話をしてたのよ。マスターがカイトを助けてやれって言うから仕事を切り上げて帰ってきたんだけど」

「あ、うちのお兄ちゃんの愚痴を北堀さんちの皆に聞いてもらっていました」

 あっけらかんといったのは福部雅之のミクだった。淡いグリーンのショートパンツ型入院着からすらりと伸びる美脚が目に眩しい。『初音ミク』の中でも美しい部類に入る娘だが、その口から飛び出したのは辛辣すぎる一言だった。

「だってうちのお兄ちゃん、救いようのないキモヲタなんですもん!勘弁してもらいたいって愚痴ってたんです!」

「そうなんですよ。本当に最低、最悪!あの男のヲタク気質のせいで私達の家族は『MEIKO』を未だ迎え入れることが出来ないんですから」

 福部のミクに続きそうぼやくのはピンク色の入院着を身につけたルカだ。こちらは身体をしっかり包み込むロングパンツ型の入院着を選んでいたが、胸元がきついのか第二ボタンまで開けて胸の膨らみを半分近くまで露わにしている。尤もメンテナンス中は全裸なので、その程度で目のやり場に困るといったことはまず無い。

「え?ヲタク気質のせいで迎え入れられない?私はてっきりMEIKOアレルギーのせいだと・・・・・・」

「それも正しいんだけど、元々は特別な『めーこ』にハマっちゃったから、っていうのが理由だもんね~兄貴のAI型MEIKOアレルギーって。あの子じゃなきゃ嫌だって駄々こねて、まるでガキだよね!」

 そういったのはリンだ。ややオレンジがかったショートパンツ型の入院着から伸びる手足はどこまでも健康的である。そんな手足をばたつかせながら――――――どうやらメンテナンス後で感覚が完全に戻っていないらしい――――――言葉を続ける。

「まだ水着写真の隠し撮りとか部屋に貼り付けているんならあたしも理解できるけどさ。何が悲しくて麻友さんのところの『めーこ』さんのピアノロールやトラックエディター画面の隠し撮り画像を壁にベタベタ貼り付けてるのか・・・・・・理解に苦しむ。マジ変態」

「本当にリンちゃんの曲じゃないけどゲジゲジと脳みそ変えてほしいよね~」

「うん半径5光年どころか半径一億光年くらい近付かないで欲しいんだけど」

「アリかナシか以前の問題ですわ。勿論ナシで」

 辛辣すぎる福部ボカロの妹軍の言葉に、カイトは更にメイコに強くしがみつく。

「これをず~~~~っと聞かされている俺の気持ち、判るでしょ?もういたたまれないし辛いし、俺も影でこんなこと言われていたらと思うと・・・・・・」

「あ、お兄ちゃん安心して。そもそもお兄ちゃんキモヲタじゃないし」

 カイトの嘆きにそうフォローを入れたのは、自分たちの妹だった。そしてその言葉に入院着を身につけた福部ボカロ達も頷く。

「その抱きつき方、どう見てもリア充だよね~。いいな~北堀さんのところのお兄ちゃん」

「いや、あれを毎日見せつけられるのも、違う意味で勘弁してもらいたいよ。特にうちの姉兄は仲がいいらしくって、皆に冷やかされるし」

「でもピアノロール画像でヨダレ垂らしそ~な顔してるよりは遥かにマシじゃん。あたしもちゃんとしたAI型の『MEIKOお姉ちゃん』欲しいのになぁ。リアルカイメイ間近で見たい!!」

 妹達の会話は更にヒートアップしてゆく。それを見つめつつ、メイコはふとあることに気がついた。

「あのね、あなた達のお兄さんのお気に入りの『めーこ』さん、今研究所でAI化しているんだけど、もしかしたら彼女のAI化が成功したら・・・・・・」

「どうだろう?私は無理だと思うなぁ。だってお兄ちゃん二次元厨だもん」

「リア充とは程遠いもんね~。ていうか何もあんなキモヲタじゃなくてもそのメイコさんならすぐに別の彼氏できるんじゃない?人間でも他のボカロでも」

「むしろあのキモヲタに近づけちゃいけないと思いますわ。瞬く間に汚染されてしまいます」

 福部ボカロたちの散々な言いようにメイコも笑うしかない。しかし彼女らの発言がかなり『控えめ』であることを、メイコはこの翌日に知ることになる。





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・・・どうやら福部雅之のところのカイトはキモヲタ(妹's談)らしいです\(^o^)/得てして女きょうだいの兄弟評というのは辛辣なものですが、福部さんちは相当ヒドイwww
ただ、幸か不幸か麻友の『めーこ』はそのキモヲタ振りに全く気がついていないようです。そもそも完全な箱入り娘ですし、XPの古ぼけたモニターと恋する乙女フィルターがダブルでキモヲタカイトを美化しているのでしょう(-_-;)恋は盲目、キモヲタでもイケメンに変換してしまうものなのです・・・尤もカイトも自分のキモヲタを隠していたに違いない。
(私自身も旦那の鉄ヲタ&阪神ファンを結婚前に見抜けなかった・・・そんなもんだよ、世の中って( ´ー`)フゥー...)

次回更新は4/19、次回が最終になるのか、それとももう一回くらいかかるのか微妙なところなのですが・・・取り敢えず『めーこ』のAI化から書き進めて、あわよくばカイトとの出会い(キモヲタ大爆発)まで書ければ、と目論んでおります(^_^;)
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