「VOCALOID小説」
見返り美人

見返り美人外伝・櫻花の背徳6(★)

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 月影に、ひらひらと舞い散る桜の花弁が妖しい光を放つ。その影を受けながらレンは自分の上に跨っているリンを抱きしめた。決して大柄ではないレンの腕の中にさえすっぽりと収まってしまうリンの華奢な身体はどこまでも柔らかく、甘い香りがする。その香りに誘われるように、レンはリンの唇を再び貪り始めた。

「んんっ」

 息をも奪うレンの激しく、執拗な接吻にリンが苦しげに抗議の呻きを上げる。だがレンはリンの抗議を無視し、その細い背中からくびれた腰へと掌を滑らせた。その滑らかな肌触りに陶然としつつ、レンはリンの腰を引き寄せるように力を込める。すると更に二人の肌は密着し、ひとつに溶けてしまうのではないかと思うほどの熱を帯びてゆく。

「・・・・・・苦しいってば!」

 ようやくレンの舌から逃げ出せたリンが抗議の声を上げる。だがレンはリンの抗議など歯牙にもかけず、リンの頭を自らの胸許に引き寄せた。

「仕方ねぇだろ。リンが美味しそうなんだから。それに誘ってきたのはお前なんだからな。責任は取れよ」

「お、美味しそうって何よ!あたし、食べ物みたいじゃない!」

「そう大した違いは無いぜ。だって実際美味しそうだし」

 レンはリンの小振りな乳房を弄びながら、今度は軽い接吻を交わしてゆく。

「でなきゃ、姉弟なのにこんな事するわけ無いだろ?」

 その一言と共にレンは身体を反転させ、リンを寝台に組み敷いた。

「俺、絶対にリンを幸せにしてみせるから、あと数年・・・・・・学校を卒業するまで待っていて欲しい」

 リンを見おろしながら、レンは決意を露わにする。

「うん。待ってるから・・・・・・絶対に迎えに来てよ」

 笑顔で答えたリンの言葉と同時に、レンは腰を動かし始めた。さすがにまだ痛みは感じるようだが、それでも先程よりはまだましらしい。
 リンを悦ばせる技術をレンは未だ持たない。それでも男の本能のままただひたすら己の分身をリンに穿ち続け、リンと共に二度目の絶頂を迎えようと努力する。その思いはリンにも通じ、レンを受け入れようと痛みに耐える。櫻花舞い散る中の背徳は、ただ密やかに結実しようとしていた。



 翌朝、流石に疲れたのかリンとレンの二人はなかなか起きることが出来ず、女中頭が起こしに来てくれるまで布団の中で抱き合って寝ていた。

「ねぇ・・・・・・やっぱり朝ごはん、食堂で食べなきゃダメ?」

 布団で顔半分を隠しながらリンは女中頭に尋ねる。流石に昨日の情事を目の当たりにした上に、自分達のこともある。気恥ずかしくて顔を合わせたくないというのが本音だ。

「お加減が悪いようでしたら、こちらに何かお持ちしましょうか?」

 何も知らない女中頭は単にリンの気分が優れないだけと感じたらしい。寝室に食事を持ち込むことを提案してきた。

「じゃあお味噌汁とおにぎり。できれば梅干しがいいな」

 女中頭が漬けた梅干しはリンの好物だ。さり気なくリンはそれを注文する。

「承知しました。レン様は?」

「俺は食堂に行くよ。流石に二人揃って行かないのも何だし」

「では準備をさせていただきます」

 女中頭は穏やかな微笑みを浮かべつつ、扉を閉じた。

「じゃあ、俺行ってくるから」

 レンはリンの頬を撫でながら囁く。昨年の年末にはあかぎれまで作っていた頬は陶器のように滑らかになり、艶やかさも増している。三ヶ月でこれほどの変化だ。リンはますます美しくなってゆくだろう。

(色んな意味で、もう後戻りは出来ねぇんだな)

 その日一日を過ごすことさえ命がけだった鮫ヶ橋の生活には戻れないし、リンをあの中に放り込むような真似だけは男として絶対にしたくない。レンはリンの頬にひとつ口吻をしたあと、寝台から降り着替えを始めた。



 レンが食堂に出向いた時、既に海斗と芽衣子は食事を始めていた。

「あれ、遅かったんだね。てっきり先に食べているかと思ったら」

「・・・・・・誰かさん達がリンを煽ってくれたおかげで寝不足なんだよ」

 それとなく二人に嫌味を言って、レンは椅子に着く。

「流石にリンは気恥ずかしくってこっちに来れないってさ。今日は丸一日部屋での食事になるかも」

「まぁ・・・・・・ね。昨日はちょっとやり過ぎたかも」

 バツが悪いのか、芽衣子の目が泳ぐ。

「尤も鮫ヶ橋じゃ日常茶飯事だったけどさ・・・・・・ところで、進学の件なんだけど」

「やっぱりここから通うの?それとも向こうから?」

 海斗の問いかけにレンは首を横に振る。

「リンが傍にいたんじゃ勉強にならないから・・・・・・だから、俺が学生の間、リンを頼む。絶対に、結果を出してリンを迎えに来るから」

 決意に満ちた、その一言に海斗は満足気に頷いた。

「流石、仲小路前警保局長のお眼鏡に叶っただけのことはあるね。リンのことは心配しないで、しっかり勉強しておいで。君ならリンを養えるだけの仕事に問題なく就けるだろうし、俺も協力は惜しまないつもりだよ」

「ありがとう、感謝する」

 この二人の許にいる間ならリンは問題無いだろう。これで心置きなく勉学に励むことができると、レンは深々と頭を下げた。



 初めての夜から一週間後、レンは予定通り下宿先へと引越す事となった。

「勉強、頑張ってね。レン」

 彼岸桜に変わり、染井吉野の花弁が舞い散る中、リンは笑顔を見せる。だが、その目は涙で真っ赤になっていた。

「ああ。お前も女学校でボロを出すなよ、リン」

「う~ん、それは難しいかも」

 早々のリンの敗北宣言に、更に芽衣子が助け舟を出す。

「そもそも女学校は結婚で中途退学も多いからね。途中で飽きちゃっても問題ないでしょ」

「・・・・・・メイ姉もリンには甘いよな。もうそんな逃げを用意してるなんて」

 リンの後ろにいる海斗と芽衣子を睨みながら、レンは毒づく。

「まぁまぁ。リンはレンと違って自由奔放だからね。女学校の枠にはそう簡単にはまらないさ。取り敢えず一ヶ月くらいは様子を見て、肌に合わなかったら家庭教師でも付ければいいんだから」

 結婚年齢が早いこの時代、殆どの生徒が中退してしまい、無事卒業できるのは勉学に励みたいという固い意志を持った者か、結婚相手が見つからない者のどちらかである。
 それだけに『学校の雰囲気が肌になじまない』という理由での中途退学でもそれほど目立たないだろう。むしろ卒業まで学業を全うしてしまったほうが目立つかもしれない。

「じゃあ、俺が卒業するまでリンを頼みます。できるだけ中退はさせないように!」

 まるで自分が兄であるかのように、レンは海斗と芽衣子に頼むと踵を返し、迎えに来た俥に乗り込んだ。



 この後、レンは努力の甲斐あって中学校を三席で卒業し、複数人の関係者からの勧めもあって大学へ進学する。そして内務省への入省、警保局勤務を果たした。
 その一方、リンは女学校を二ヶ月足らずで中退してしまう。しかしそれは女学校の雰囲気に馴染めなかった所為でも、勉学についていけなかった所為でもなかった。リンは初めて結ばれた夜に、レンとの子供を身籠ってしまったのである。
 それが発覚したのは編入して一ヶ月後の事だった。ようやく女学校の空気に慣れてきて、本人もやる気を見せていた矢先だったのでリンは中退を嫌がったが、こればかりは仕方がない。渋るリンを海斗と芽衣子、そしてルカ、がくぽ夫婦まで総出でリンを説得し、『友達との御茶会を必ず月一で開く』との条件で退学させたのである。
 ただ、流石に本当のことを世間に公表することは出来ず、生まれてきた子供は表面上海斗と芽衣子の子供として届けを出された。

「お役所は届出上で不都合がなければ細かなところは見ないからね。平気平気」

 目の前のレンに対し、海斗はヘラヘラと笑う。

「そのうち鏡音家の養子として届けを出せば問題ないし、何ならこのまま俺達の子供として始音家を継がせてもいいし」

「始音家?青音家じゃねーのか?」

 庶子とはいえ海斗は青音家の長男である。本来ならそちらを継ぐべきではないのかと訝しげにレンが尋ねる。

「それはミクが継ぐから問題ないよ。俺よりも義弟のクオのほうがしっかりしているし。それにさぁ」

 海斗が不意に情けない表情を浮かべる。

「めーちゃんになかなか子供が出来ないんだよねぇ。俺、頑張っているのにさ」

「妾でも囲えよ。メイ姉だってそうしろ、って言ってるんだろ?」

「めーちゃんが二人いたら考える」

 その一言にレンは苦笑いを浮かべた。警保局勤務の警察官という激職についていながら体力が有り余っているらしい。特に内勤に変わってからそれが顕著だという話である。

(リンから聞いた話じゃ、メイ姉ひとりじゃ相手にしきれねぇ、ってリンだけじゃなくルカさんやミクさんにもぼやいてるって言ってたよな)

 子供がほしい所になかなか出来ず、出来ては困る所に出来てしまうのは世の不条理なのか。だが自分達にとっては互いの不都合がうまくはまりそうである。

「子供の将来は流れに任せようぜ。まずは俺が一人前の警保局員になってからってところでいいだろ、上司様」

「じゃあ今取り扱っているヤマが終わったら、ってことでいいかな。鏡音巡査?」

「・・・・・・判ったよ。死ぬ気で働け、ってことだろ?始音警部補」

 不敵な笑みを浮かべると、レンは目の前の覚めた紅茶を一気に飲み干し、懸案の仕事に取り掛かるため部屋を後にした。





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『櫻花の背徳』最終話となります(*^_^*)本編を含め、ここまでのお付き合い本当にありがとうございましたm(_ _)m

実の姉弟でありながら結ばれてしまった二人ですが、周囲の助けによって辛うじてその関係は外部に漏れずに済んでおります。
(リンのお腹の子の父親に関しては海斗も芽衣子も口を閉ざしていたはず^^;)
そしてレンは無事海斗と同じ職場に就職しました。何せ『実績』がありますからねぇ( ̄ー ̄)ニヤリ官僚にさえなれば真っ先に引きぬかれますwwwそしてこの後は秘密を抱えつつも穏やかに一生を暮らしたかと・・・きっと関東大震災も生き延びたに違いありません(๑•̀ㅂ•́)و✧
なお、pixiv版は31日の木曜日のお昼前後か夕方くらいまでにUPいたします(*^_^*)


そして私事で恐縮ですが、次回カイメイ現代版、その次にがくルカ現代版を書かせていただいた後、1年ほど充電期間を頂きたいと思っております。オリジナルでの調べ物がハンパ無いのと、ボカロ小説でもネタ集めに集中したいかなと(^_^;)
わがままを言って申し訳ございませんが、ご理解の程をお願いしますm(_ _)m
(たぶん5月末~6月くらいまでは執筆続きます^^;)
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