「短編小説」
横浜芸妓とヒモ男

横浜芸妓とヒモ男・其の参~仙吉の雛人形

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うららかな日差しが横浜に降り注ぐ。春もたけなわの三月三日は雛祭り、娘達のはしゃぎ声があちらこちらのうちから聞こえてくる。そんな声を聞くともなしに聞きながら、お鉄は目の前に繰り広げられている光景をじっと見つめていた。

「ねぇ、仙吉・・・・・・どうでもいいけど、二人でこんな大量の料理や菓子、一体どうやって食べろっていうんだい。正月のおせちよりも多いじゃないか」

お鉄は目の前に続々と並べられる雛の宴の食事に呆れ果てる。鯛の尾頭にはまぐりの吸い物、ちらし寿司、白酒、菱餅ときてとどめは仙吉自らが作ったひなあられと来てた。しかもそれぞれ大量だ。
さすがに数日かけたとしてもこれだけのものを食べるのは二人では無理だろう。しかし、その点は仙吉も考えていた。

「ああ、お鉄が昼見世に行った後で近所の子供達を招こうと思ってさ。男の子も女の子も関係なく」

「呆れた!女の子の節句にガキとはいえ男の子も呼ぶのかい?まぁ、あんた自身が野郎だから何とも言えないけどさ」

雛あられを一粒つまみつつ、お鉄は苦笑いを浮かべる。

「うん、まぁね。男の子も結構好きなんだよ、甘い物とか、雛飾りみたいな細かな細工物って」

仙吉も雛あられをつまみつつ、小さな部屋いっぱいに飾られた段飾りを見つめた・

「それにさ、今年やっと雛道具が全部揃ったんだよ。古道具屋で似たような大きさのものをちまちま探すの、大変だったんだから。それを自慢できるのなんて子供たちくらいだし」

冗談とも本気とも付かない言葉が仙吉から溢れる。並べられた雛人形は、大きさからすると明和年間に流行した古今雛だった。明治新政府になり、大名や旗本が手放したものらしい。そんな雛飾りを古道具屋で少しずつ集め、ようやく一揃いになったのである。

「まぁ、雛飾りの収集に関しては・・・・・・その大変さは認めるよ」

 どうも仙吉は綺麗なもの、華やかなものが好きなようだ。しかしそれは男の征服欲に拠るものというよりは、童女の憧れに近い気がする。武士の子としてそれ相応に厳しい教育を受けていたらしい仙吉が何故童女のように華やかなものに惹かれるのか理解できないが、それ相応の理由があるのだろう。
 その一方、お鉄は正直雛祭りには全くと言っていいほど興味はなかった。そもそも出される料理がお鉄の舌には甘すぎる。お鉄の好みを知っている仙吉が作ったものならば辛うじて食べることができるが、置屋や仕出し屋から出される雛祭りの料理ははまぐりの吸い物以外受け付けない。

「ま、わっちらは男と女が逆になったようなもんだしね」

 くすりと笑いながらお鉄は白酒を所望する。この白酒は仙吉が厳選した三種類の白酒を配合し、更に生姜を混ぜたものだ。そしてこれが唯一お鉄が飲むことのできる白酒である。

「はい、どうぞ」

 仙吉は笑顔で白酒の入った湯のみを手渡した。その瞬間、芳醇な白酒と微かな生姜の香りが鼻孔をくすぐる。その香りを堪能しつつ、お鉄は白酒を喉に流し込んだ。




UP DATE 2015.2.24 

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横浜芸者とヒモ男、第三弾は雛祭りですが・・・仙吉の方が力がかなり入っているようですwww
雛祭りには全くと言っていいほど興味を示してくれないお鉄を諦め、近所の子供達を呼ぶためにごちそうを作りまくり、三年がかりで雛飾りを揃えたくらいですからwww
一応仙吉の裏設定では明治元年彰義隊に参加→命からがら横浜に逃走→迂闊に刀なんぞ持っていたら怪しまれるので古道具屋に売り払いに行く→その際見つけた親王飾りの細工の細かさに一目惚れ、刀を売ったお金でそのまま買い取りお鉄に呆れられるという事になっておりますwww
どうもうちの仙吉にはオネェ属性があるようなないような・・・(^_^;)連載を続けていくうちに性格が固まっていくとは思いますので気長に見守ってやっていてください。なおお鉄に関しては男前の芸者、それ一筋です(๑•̀ㅂ•́)و✧
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