「VOCALOID小説」
見返り美人

見返り美人9~あたしはここ、確かにいる

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 鮫ヶ橋の火事からおよそ一ヶ月――――――海斗達は必死に芽衣子を探したが見つけることが出来なかった。避難所だけでも10数回、復旧が始まった鮫ヶ橋の現場にも毎日足繁く通い、東京中の病院なども三人で虱潰しに探した。しかし生きている芽衣子の生死の情報どころか着物の焼け残り一切れさえも見つからずじまいだったのである。今日もリンの提案で口利き屋に芽衣子らしき女性が就職の斡旋を頼んでいないか尋ねたが芳しい返事を得ることが出来ず、三人は気落ちしたまま海斗の屋敷へと戻っていた。

「やっぱりめーちゃん、死んじゃったのかなぁ。こんなに探しても見つからないなんて」

 ぐずっ、と鼻をすすりながらリンが呟く。

「縁起でもないこと言うんじゃねぇよ。メイ姉のことだ。きっとどこかで生きているさ」

 リンを慰めようとするレンだったが、そのレンもあきらめ顔だ。そんな中、珍しくタキシードを身につけた海斗が二人がいる居間へと入ってきた。

「あれ?今日は夜勤じゃないの?そんな格好珍しい」

 いつにない海斗の礼装にリンが興味を示す。だが海斗はうんざりした表情も露わにその姿の理由を二人に告げた。

「仕事だったらどんだけ気楽か・・・・・・君ら風の言葉で言えば『ダチのツレ』の誕生日祝いっていうものに招待されていてね。半ば強制参加なんだ」

「誕生日?何だそれ?初めて聞く言葉だな」

 年齢というものは一月一日に皆で一緒にとる『数え年』がまかり通っているこの時代、誕生日という概念は庶民には無く、勿論リンとレンも初めて聞く言葉だった。不思議そうに尋ねてきた二人に海斗は誕生日の説明をする。

「西洋式の年のとり方なんだ。数え年より1,2歳若くなるから、貴族の女性ではそっちで祝う人が増えていてね――――――みんなで一緒に年始に年をとればいいと俺も思うよ」

 不満そうにぶつぶつと呟きながら、さらに険しい表情を浮かべる。

「しかも俺の見合いまで設定されている――――――抜け出したいからさ、屋敷で事故があったって俺を呼び出しに来てくれないかな、二人で」

 助けを求める海斗に二人は今までと打って変わって厳しい視線を向けた。

「いい大人が何言ってるんだよ。子供に助けを求めるなんて」

「そんなヘタレだからめーちゃんに振られるんじゃん。振るんなら自分で振りなよ」

 二人の冷ややかな反応に海斗はがっくりと肩を落とす。

「あ~あ。めーちゃんがいてくれたらそれを理由に断れるのになぁ。あ、因みに会場はここから東側に三軒行ったところの家だから何かあったら呼びに来てね」

 未練がましく二人に助けを求めた、その時である。普段は穏やかな執事が珍しく厳しい表情を露わに居間に入ってきたのである。

「海斗坊ちゃま。いい加減あちら様に行きませんと。既にお約束の時間から30分ほど過ぎております」

 執事の言葉にリン、レンが厳しい視線を海斗に投げかける。その視線にいたたまれなくなったのか海斗は未練がましく家を後にした。



 リンとレンの厳しい視線に見送られたおよそ10分後、海斗は友人宅の玄関先で馬車から降り立った。

「本当に面倒くさいよね。馬車の準備の時間とか考えたら、歩いた方が早いのに」

 『貴族の礼儀』にうんざりしながら海斗は友人宅の召使に案内され会場である大広間へと通される。その部屋には既に百名近くの客人がダンスや会話を楽しんでいた。部屋に充満するのは葡萄酒の芳香と女達の甘ったるい白粉の香り、それに交じる紫煙の匂い――――――入り混じったそれらの匂いにむせながら、海斗は先に来ているはずの妹の姿を探す。

「う~ん。この混雑ぶりじゃ難しいかな」

 広間を軽く一望しただけで海斗は妹のミクを探すのを諦める。いつもは仲の良い兄妹だが、今日に限って言えばできれば顔を合わせたくない相手だ。何故なら多忙な父親に代わり、ミクが海斗の見合いの『お目付け役』として来ているからである。
 ミクの目を欺いてこのまま帰宅できれば――――――海斗の心中に一瞬そんな思いがよぎったが、世の中はそこまで甘くはなかった。

「お兄ちゃん!遅い!」

 海斗の姿を見つけたミクが、長い髪をなびかせて海斗に駆け寄って来たのである。どうやらミクはずっと海斗を探していたらしい。

「ああ、ごめんミク。仕事がちょっと長引いてしまってね」

 海斗はミクの髪の毛を撫でながら微笑んだ。あまり実家に近寄らず、父親とも微妙な関係の海斗だが兄妹仲は極めて良い。特に海斗はたった一人の妹であるミクを猫可愛がりに可愛がっている。それを知ってか知らずか、ミクは海斗に対して言い難いこともはっきりと口にするのだ。だからこその『お目付け役』でもあった。

「本当にもう・・・・・・せっかくルカちゃんやがくぽさんがお膳立てしてくれたお見合いなのに遅刻するなんて!お父さんだって怒るよ?」

 妹、というよりは口煩いばあやのようにミクは海斗に説教をする。そんな妹に目を細めつつ、海斗はやる気のない返事をした。

「別にいいよ、そんなの。それに警察官の妻なんて、貴族の娘には耐えられないよ、絶対。だからいっそ振ってもらったほうが気が楽なんだけどなぁ」

 どこまでも今回の見合いに興味を示さない兄に業を煮やしたミクは、逃げ腰になっている海斗の手を強く掴む。そして上目遣いに睨みつけながらグイッ、とその手を引っ張った。

「またそんなこと言って。いつまでも結婚から逃げようっ立ってそうは行かないよ、お兄ちゃん!それに今回のお見合い相手、私もさっきルカちゃんから紹介されたけどすごい美人だし、しっかりした人だよ?絶対にお兄ちゃんの好みだと思うけどなぁ」

 どうやらミクは海斗が来る前に相手を紹介され、更に海斗の結婚相手としてかなり気に入っているらしい。いち早く相手に海斗を引き合わせたいのか、ミクは海斗の手をぐいぐい引いて、少々乱暴に人混みをかき分ける。

「ほら、あの人!あの肩のところで髪を切りそろえてる人!」

 だいぶ人混みをかき分けた後、ミクが部屋の奥の方を指差す。そこには今日の主役である海斗の友人とその妻、そして海斗の見合い相手であろう女性がいた。彼女だけは海斗に対して背を向けていたが、その後ろ姿に海斗は思わず息を呑む。

(まさか・・・・・・『彼女』がこんなところにいるはずはない!)

 一瞬にして浮かんだ可能性を海斗は振り払おうとする。だがその後ろ姿はこの一ヶ月、海斗が東京中を探しても見つからなかった『彼女』のものにしか思えない。

(もしかしたら、他人の空似かもしれない。そういうことはままあるし)

 期待をして裏切られるよりは、他人と思っていたほうが気が楽だ――――――そう思いつつ、海斗はミクに質問する。

「しかし珍しいね。貴族の娘さんなのにあんな短い髪なんて・・・・・・」

 貴族の婦女子なら髪を結い上げるため長髪が基本である。それなのに海斗の見合い相手の女性は肩の辺りで髪を切りそろえていた。それが余計に『彼女』を連想させるのだ。もしかして髪の長さのせいで『彼女』に見えるのかもしれない。そんな淡い期待を抱いた海斗だったが、ミクの答は海斗の淡い期待を裏切るものだった。

「うん。一ヶ月前に火事に遭っちゃったらしくてね。焼けちゃった毛先を切ったんだって」

 一ヶ月前に火事に遭った――――――その言葉に海斗の心臓は更に高鳴る。全ての条件が『彼女』へと通じるのだ。

(そんな事はない。そもそもあいつやルカさんとの接点が無さ過ぎるじゃないか!)

 できることなら『彼女』と再会したいと願う。だが全くの赤の他人だったら相手にも失礼ではないか――――――海斗は心の中で繰り返す。そんな海斗を無視し、ミクは談笑している三人に声をかけた。

「ルカちゃ~ん!やっとお兄ちゃんが来たよ!ごめんね、遅刻魔で!」

 ミクのよく通る明るい声に、がくぽとルカの視線が動く。そして続けて海斗達に背中を向けていた女性が振り向いた。その瞬間、海斗は思わず声を上げてしまう。

「あ・・・・・・!!」

 そしてそれは相手も同じだった。振り向き、海斗と目があった瞬間、小さな声を上げて手にしていた扇子を床に落としたのだ。

「な、何で・・・・・・」

 彼女の形の良い唇が小さく、しかしはっきり動くのが海斗の目に飛び込んでくる。彼女の小さな呻き、それは海斗の心の叫びでもあった。この一ヶ月、どこを探しても見つからなかった人が何故ここにいるのか――――――混乱したまま海斗は思わず彼女の名前を口にする。

「め・・・・・・ちゃん?」

 海斗の口から彼女の名前が零れたその瞬間、彼女は――――――芽衣子は踵を返し、その場から走りだした。そして一番近くにある扉から大広間を飛び出す。

「待って、めーちゃん!!」

 逃げる芽衣子を追いかけて海斗も走りだした。その後姿をがくぽとルカ、そしてミクは唖然と見つめる。

「・・・・・・『めーちゃん』ですって?お姉さまになんて馴れ馴れしい」

 暫くしてようやく我に返ったルカが憤慨の言葉を露わにする。その一方ミクは不思議そうに小首を傾げた。

「ていうか私、お兄ちゃんに芽衣子さんの名前まだ教えていなかったんだけど、何でお兄ちゃん芽衣子さんの名前を知っているの?」

 あまりにも謎すぎる海斗と芽衣子の行動に、ルカもミクも困惑を隠せない。そんな中、がくぽは二人が出て行った扉の方に厳しい視線を投げかける。

「どうやらあの二人の間には、僕らが知らない何かあるようだね――――――取り敢えず僕が様子を見てくるから、ルカはお客様への対応を頼めるかな。ミクちゃんも申し訳ないけど、ルカを助けて欲しい」

 海斗と芽衣子の間にどんな関係があるのかは判らない。しかし、感情の昂ぶりによって何らかの事件があってからでは遅すぎるのだ。そんながくぽの言葉に、ミクは花のような笑みを浮かべる。

「うん。もちろん!それよりも、お兄ちゃんを・・・・・・」

「勿論。じゃあちょっと行ってくるよ」

 二人にそう言い残し、がくぽも二人が出て行った扉から部屋を後にした。





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一ヶ月近く捜索しても見つからなかっためーちゃんが、なんとびっくり三軒となりの家におりました/(^o^)\灯台下暗しとはまさにこのことでしょう(・∀・)その原因は時間差でがくぽ・ルカ夫婦の屋敷に連れてこられた上に一ヶ月間ほぼ軟禁状態というか屋敷から芽衣子が一歩も出ていないことにあります。しかも海斗やリン・レンは今現在の芽衣子ゆかりの場所を中心に探していましたからねぇ。接点がまるで無いというwww
そんなすれ違いを経て、二人が出会ったのが何とルカの誕生パーティ(*´艸`*)今年はルカ生誕祭作品を書くことが出来ませんでしたので、せめてものお詫びをと(^_^;)一応お祝いする気はあったんですよ~ルカ生誕祭(^_^;)

次回更新予定は2/9、部屋を飛び出していった芽衣子とそれを追いかけていった海斗、二人の再会はどんな結末を迎えるのかお楽しみに~(^_^)/~
(一応pixivには14日~17日に小分けにUPしましたしていく予定です♪二人のエロは・・・上手く本編に組み込めるかちょっと怪しい(^_^;)できれば一緒くたにしてしまいたいのですが、もしかしたら別立てで一話にしてしまうかもです)
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