「VOCALOID小説」
見返り美人

見返り美人2~あたしの体に残ったものは(★)

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 細く、女性の指のように見えた海斗の指だが、直接肌に触れると思っていたより大きく骨ばっていた。その手が芽衣子の胸許へ入り込み、柔らかな乳房を包み込む。
 鮫ヶ橋に流れ着いてからだいぶ痩せてしまった芽衣子だが、胸はあまり痩せておらず、それなりの重量感を保っていた。その乳房をまるで壊れ物のように扱いながら海斗は背後から芽衣子の耳許に囁く。

「へぇ、椿ちゃんて結構着痩せするんだね。揉み心地がすっごく良いんだけど」

 先程より微かに熱を帯びた甘い声に、つい聞き惚れそうになる。だがそれに流されてなるものかと芽衣子は海斗を怒鳴りつけた。

「う、煩い!やるんならさっさとやっちゃって!」

 動揺をこの男に悟られてはならない――――――鮫ヶ橋の妓の意地が芽衣子の声を荒らげる。それほどまでに海斗の女の扱いは長けていた。肌を這うその指はどこまでも優しいが、巧みに芽衣子の官能を引きずり出してゆく。騙されて売られた遊郭で無理やり処女を散らされて以来、一切感じたことがなかった甘い痺れが海斗が触れる部分から広がるのだ。虫唾にも似ている、しかしその不快感とは明らかに違う、初めて感じるその痺れに芽衣子は戸惑いを覚える。少なくとも普段相手にしている、ただ欲望を吐き出すだけの客とは全く違う種類が違う男だということだけは本能で理解できるが、芽衣子にできることはそれだけだ。油断したら瞬く間に海斗の掌中に落ちるだろう。

(こいつに呑まれちゃダメ!)

 芽衣子は気を逸らそうとするが、海斗の愛撫がそれを許してくれなかった。やわやわと芽衣子の乳房を柔らかく揉みしだきながら、時折その頂きを軽く嬲る。既に固く勃っている乳首に触れられると、特に強い痺れが芽衣子の身体を走り抜けるのだ。
 その腰が砕けそうになる甘い痺れ、そしてそれをもたらす海斗の指先の動きに気を取られていると、もう一方の芽衣子の腰に絡みつき、瞬く間に芽衣子の帯を解いてしまう。すると辛うじて芽衣子の太腿を隠すだけの丈しか無い短い腰巻きと共に芽衣子の細く長い脚が露わになる。

「へぇ、脚も綺麗なんだね、椿ちゃんは」

 芽衣子の肩越しに覗き込みながら、海斗は感嘆の声を上げる。そしてその声と同時にもう一方の掌が芽衣子の太腿に触れてきた。だが無理やり芽衣子の脚をこじ開けようとする気配はない。ただ撫でさすり、時折刺激を与えながら芽衣子が根負けするのを待っているようだ。

(何、こいつ・・・・・・)

 逃げ出した遊郭でさえ―――――そこそこ格式のあった遊郭だった―――――ここまで女の扱いが上手い男はいなかった。これならば高級遊郭の御職だって簡単に落とせるだろう。それなのに何故掃き溜めのようなこの場所にやってきて、芽衣子のような最下級の娼婦を抱こうとするのか。芽衣子は混乱する。

「椿ちゃん、俺のこと探ろうとしてるでしょ」

 思案にくれていた芽衣子の耳許で不意に海斗が囁き、芽衣子の耳を甘噛みする。

「あうっ」

 思わず上げてしまった声には、快楽に溺れかけた甘ったるさがにじみ始めていた。そんな己の声に気がついた芽衣子は思わず口を塞ぐが、海斗は乳房を愛撫していた手を離し、自らの口を塞いでいる芽衣子の手を引き剥がした。

「やめようよ、そ~ゆ~無粋なの。お互い楽しもう?その方が気持ちいいじゃん」

 背中から芽衣子を抱きながら、海斗はクスクス笑う。その表情を芽衣子ははっきりと見ることができないが、明らかに面白がっているのは判る。要は気難しい娼妓を己の技量で落とすことを面白がるたぐいの男なのか――――――芽衣子がそう海斗の事を判断した瞬間、いつの間にか緩んでしまっていた芽衣子の太腿の隙間に海斗の手が滑り込んできた。

「あれ?思ったより濡れてないね」

 少しがっかりしたような海斗の声が芽衣子の耳朶をくすぐる。確かに芽衣子の秘められた部分はしっとりと湿り気を帯びていたが、男を迎え入れられるほどには濡れていなかった。

「ふ、ふのりを使えばいいでしょ!」

 ゆっくりと花弁の縁をなぞり始めた海斗の指に気を取られながらも、芽衣子は怒鳴る。普段の客は愛撫なんかせずに芽衣子を抱く。その際怪我をしないよう潤滑油代わりにふのりを使うのだが、どうやら海斗にはその気はないらしい。

「別にいいよ。そんなの使わなくたって。ちゃんと延長分は支払うからさ」

 どうやら時間をかけて芽衣子を弄び、海斗を迎えいれられるまでにするつもりらしい。僅かな湿り気を利用しつつ、海斗の指先は繊細な芽衣子の花弁を丁寧になぞってゆく。その女を焦らし、徐々に快楽を昂ぶらせていく愛撫に芽衣子の息も上がってくる。

(やだ・・・・・・こんなの、いや)

 自分の身体が自分のものでないように制御が効かない。決して芽衣子を傷つけない、丁寧で繊細で執拗な海斗の愛撫は、仕事で我を忘れたことのない芽衣子でさえ溺れさせようとしていた。
 いっそこのまま海斗の愛撫に溺れてしまったほうが楽かもしれないとは思うが、それは芽衣子の矜持が許さなかった。娼妓が初見の客に翻弄されるなんて、恥の極みだ。だが、そんな芽衣子の決意とは裏腹に、芽衣子の身体は徐々に海斗に飼いならされてゆく。いつの間にか淫らな濡音が狭苦しい部屋に響き始め、明らかに快楽の熱を帯びた吐息が芽衣子の唇から漏れ始める。そして散々焦らされた挙句、つるりと撫で上げられた最も敏感な突起への刺激に、芽衣子は思わず鼻にかかった嬌声を上げてしまった。

「だいぶ準備は出来たみたいだね。本当はもっと濡らしたかったけど・・・・・・それは次回にお預けかな」

 どうやら芽衣子が初見の客に対しては身構えてしまうらしいと判断したらしい。芽衣子がある程度男を受け入れられる状態になったと判断した海斗は、不意に芽衣子を煎餅布団に転がした。

「じゃあ、そろそろしようか」

 ニコニコと人懐っこい笑みを浮かべつつ、海斗は己の着物の裾をまくり、下帯から熱り立った逸物を引っ張りだす。それをちらりと見てしまった芽衣子は思わず息を呑んだ。

(お、大きい・・・・・・ちょっと、これを受け入れろっていうの?)

 芽衣子の目に飛び込んできた海斗のそれは、並の男の逸物より明らかに一回りは大きかった。その上、海斗の妙に慣れた手管が加われば、本気で海斗に溺れかねない。そんな芽衣子の動揺を知ってか知らずか、海斗は意味深な笑みを浮かべつつ、己の逸物を芽衣子のとば口に押し当てる。

「じゃあいくよ」

 欲情に掠れた海斗の声が芽衣子の耳の奥をくすぐる。もう逃げる手立ては無い――――――芽衣子が諦めかけたまさにその時である。

「めーちゃん、たっだいまぁ~~~っ!お腹減ったぁぁぁ!!」

 ばん!と立て付けの悪い障子を乱暴に開けてリンが飛び込んできた。



 暫しの沈黙がおんぼろ部屋を支配する。全てが凍りついたように動きが止まった部屋の中で、まず動きを見せたのが芽衣子だった。

「こら、リン!障子を閉じているときは客を取っている可能性があるからっていつも言ってるでしょ!いきなり飛び込んでくるんじゃないの!!」

 海斗にのしかかられながらも芽衣子がリンを怒鳴りつける。子供が相手とはいえ、情事の最中に飛び込まれては勃つものも勃たなくなるだろう。いくら危険な臭がする客とはいえ、流石にそれはまずい。海斗に詫びを入れつつリンを叱る芽衣子だったが、当のリンはけろりとしている。

「別にいいじゃん。そもそもこの程度で萎える野郎なんて鮫ヶ橋で遊べないでしょ」

 その一言に芽衣子と海斗は苦笑いを浮かべる。得てして貧民街に住む子供は早熟だ。リンもその例に漏れず、大人顔負けの蓮っ葉な物言いをするが、中には例外もいる。

「リン・・・・・・もうやめとけ。その客が気の毒すぎる」

 こめかみを抑えつつ、海斗と芽衣子を同情の目で見ているのはレンだ。こちらもまだ子供とはいえ周囲の大人や仲間に色々聞かされているのだろう。申し訳ないと海斗に頭を下げた後、芽衣子に事情を説明する。

「ごめん、メイ姉。焼き討ちの影響であちこちにサツ公がいてさ。商売どころじゃ無かったんだ。だから早く帰ってきたんだけどさ・・・・・・こんなことになるんだったらもうちょっと流してくればよかった」

 どうやら全く稼ぐことが出来ずに帰ってきたらしい。しかも芽衣子が客を取っている最中にリンが飛び込んでしまった。下手をすると料金を払ってもらえない可能性だってあるのだ。
 その覚悟をしたレンだったが、意外なことに芽衣子の上にのしかかっていた男――――――海斗は愉快そうに笑いながら芽衣子から離れ、リンとレンに声をかけてきたのである。

「あのさぁ、めーちゃんとかめい姉、ってもしかして椿ちゃんの本名?」

 海斗が『めーちゃん』の言葉を発したその瞬間、芽衣子の顔色が豹変したが、そういう空気を全く読まないのがリンである。

「うん!めーちゃん、美人でしょ?元々はオジョーサマだったんだけど色々わけあって身を持ち崩しちゃったんだって!」

 聞かれもしないことをペラペラとしゃべるリンに、芽衣子も諦めたのかがっくりと肩を落とす。黙れと言っても聞かれてしまえば素直に喋ってしまうのがリンの良いところでもあり悪いところでもある。そんな姉に翻弄されているレンは慎重な性格にならざるをえない。芽衣子の生い立ちを喋りまくるリンの横で、申し訳無さそうに身体を小さくしている。

「なるほどね。じゃあめーちゃんの名前を教えてくれたお礼に何かごちそうでもしようか。ええと、そっちの男の子?」

「レンでいい」

 海斗に名前を呼ばれたレンはぶっきらぼうに返事をする。

「じゃあレンくん。俺にちょっと付き合ってくれない?」

 そう言いながら、海斗は枕元に何かを置いた。

「ごめん、ここの相場ってよくわからないんだけど、これで足りる?」

 芽衣子がそれを見るとそれは二枚の一円札だった。それを見て芽衣子、リン、レンの三人は目を丸くする。

「ちょ、ちょっとこれ多すぎよ!!だからお坊ちゃんは!!」

 芽衣子は二枚の一円札を海斗に突き返す。

「ここの相場は一切り30銭よ!これだったら一晩相手をしたってお釣りを出さなきゃだわ」

「そっか。でも細かいの持ってないんだよねぇ。じゃあまた来るから、今回はこれだけ取っておいてよ。じゃあ行こうか、レンくん」

 海斗は一円札を一枚芽衣子に渡すと、芽衣子が反論を唱える前にレンを連れてそそくさと部屋を出て行ってしまった。



 二人が帰ってきたのはおよそ一時間後だったが、その理由は二人が抱えている風呂敷包みにあった。海斗が抱えていた風呂敷包みを置いてそれを開くと、中から六、七個の折り詰めが出てきたのだ。そしてレンの抱えている風呂敷包みの中身も同じもののようである。どうやら行き帰りと、その折り詰めを作ってもらうのに一時間ほどかかってしまったようだ。

「取り敢えずめーちゃんから突き返された一円分の折り詰めを作ってもらってきた。これなら三人で二、三日は持つでしょ?」

 屈託のない笑みで言う海斗の横で、レンが神妙な面持ちで座り込んでいる。

「レン、何があったの?」

 レンの表情に気がついた芽衣子が尋ねるが、レンは首を横に振って芽衣子に告げる。

「男の約束だから、ちょっと言えない」

 そう言ってレンは固く口を引き結んだ。確かにこれだけの量の食料を手に入れるにはそれ相応の裏技があるのかもしれない。すると海斗がレンの代わりに口を開いた。

「細かい店の名前は言うなってレンに言っておいたんだ。今回はちゃんとお金を払って来たけど、レンが店に顔を出したら残飯を譲ってやってくれって店にも頼んでね。だけどそれが近所にバレるといろいろ厄介でしょ?秘密の場所を知っている人間は少ないほうが良いからさ。レンくんは口が固そうだし問題ないかなって」

 そう言いながら手にした荷物を置くと、それを開く。すると折り詰め中から大量のいなり寿司やら干瓢巻き、握り飯などが出てきたではないか。

「わぁ、おいしそう!」

 リンが目を輝かせ、思わず手を伸ばそうとした途端、芽衣子がその手をぺちん、と叩いた。

「こら!ちゃんと取り皿とお箸を持ってらっしゃい!ズボラをしないの!」

 そして芽衣子はリンを連れて土間へと降りる。どうやら全員分の箸と取り皿を持って来るつもりらしい。その後ろ姿を見ながら海斗がレンに囁く。

「めーちゃんって結構躾、厳しいの?」

「ああ。実の親より厳しいぜ、メイ姉は」

 それを聞くと海斗は頷き、不意に立ち上がった。

「じゃあ俺はこれで。俺がいるとゆっくり食べれないでしょ?」

 どうやら食料だけ置いて帰ってしまうつもりらしい。その行動に慌てたのは芽衣子である。

「ちょっと待ってよ!花代だって多すぎるし、こんなにご飯も・・・・・・どういう風の吹き回しよ!」

 いくら何でも過剰すぎると芽衣子は唇を尖らせるが、海斗はヘラヘラを笑いながら背中を見せる。

「それくらいはまだ序の口だよ。好きな子を落とすにはガンガン貢がなきゃ。ね、めーちゃん」

「や、やめてよ!そのめーちゃんっていうの!」

「ん?それはだめ。じゃあまた3日後くらいに来るからね、めーちゃん!」

 どうやら今後は芽衣子を渾名で呼び続けるつもりらしい。呆れ果てる芽衣子達を尻目に、海斗はまるで風のようにその場を去ってしまった。



 そして海斗が告げたように、三日に一度、または四日に一度は必ず芽衣子の元へ顔を出すようになっていた。本当ならばこんな場所に来るべきではない相手だと解っているが、金払いの良さ、リンやレンに対しての優しさ、そして何よりも芽衣子の体を扱う丁寧さにずるずると関係を続けていた。

「本当に、いい加減になさいよ。こんなところで遊んでいるなんてバレたら大変なんだからね!」

「はいはい」

 そう言いながらも海斗はヘラヘラと笑ったまま芽衣子の後についてボロ長屋に入ってゆく。いつの間にか日常に溶け込んでしまった非日常――――――だが、事は芽衣子が預かり知らぬところで動き始めていた。




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本番まで行くと思いきや、フラグクラッシャー・リンによって寸止めを食らわされた海斗ですwww
まぁ、その様子から女性には不自由していなさそうですが、お金をもらう側としては『こんな状況で支払いをしてもらえるのか?』とハラハラしたでしょうね(^_^;)幸い金払いの良かった海斗ですが、この金払いの良さ、そしてレンを連れて行って食料を調達していた事の裏側には何かあるようですが・・・( ̄ー ̄)ニヤリその秘密は次回に持ち越しということで♪

次回の更新は12/22、芽衣子との情事を終えた海斗が向かう先は・・・海斗の正体がようやく明らかになります(*^_^*)
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