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聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語外伝 颯月宮決戦4

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 奏国首都・華都近くにある紅蘭港は多くの人間でごった返していた。何せ皇帝自ら出陣した颯月宮決戦での大勝を引っさげて奏国軍が凱旋するのだ。本来凱旋門内で見物人は待機するのが通例だが、待ちきれなくなった一部の観客が紅蘭港に寝泊まりし始めたのをきっかけに、続々と人が集まり始め今では港を埋め尽くさんばかりになっている。そんな人混みに圧されながらも、レンは恋人の帰還を待ちわびていた。

「リンのやつ、大丈夫かな」

 魔道士からの『通信』が華都に届いてから三日、そろそろ兵士達を載せた艦隊が到着するはずだ。
 待ち遠しい反面、レンは不安でもあった。狄国王・えそらを仕留めたのはリンだが、その際リンもダメージを受けてしまったとも聞いている。果たしてリンは五体満足で帰還できるのか――――――。

(ま、龍騎士を引退するんなら俺が養えばいいか)

 今までリンには経済的支援を多く受けてきた。今では独り立ちできる売れっ子歌手になっているレンなら元・龍騎士を妻にすることも経済的には可能だろう。

(問題は元老院だよな)

 恋人という曖昧な関係ならいざ知らず、正式な夫婦となるとやれ身分がどうとかうるさく言い出すのが元老院である。優秀な外国人であれば『知識と新たな血を受け入れられる』と比較的寛容に受け入れられるのがレンには未だ納得行かない点だが、こればかりは仕方がない。

(でもリンが手柄を立てたんだ。きっと俺達の中も・・・・・・)

 レンが心の中で呟いたその時、上流の方にいた見物客が騒ぎ出した。

「黄金龍だ!リン様がご帰還されたぞ!!」

「リン様、ばんざぁ~い!皇帝陛下、ばんざぁ~い!!」

「奏国に栄えあれ!!」

 歓声は大きな波動となってレンの方へと近づいてくる。そしてその波動と共に遠くに金色の龍と、それに騎乗している小さな影がレンの目に飛び込んできた。

「何だ。大した怪我もしてねぇみたいじゃん。心配して損したぜ」

 憎まれ口を叩きながらもホッとした表情をレンは浮かべる。そうこうしているうちに金色の影は徐々に近づきレンの目にもリンの表情がはっきり見えた。その時である。

「レン!ただいま!」

 そう叫ぶなり、陽炎から飛び降りたリンはそのままレンの腕の中に飛び込んだ。

「うわっ!!」

 レンは慌ててリンを抱きとめる。その姿は五体満足、むしろ出陣するよりも元気いっぱいだ。

「おい、人前だぞ!」

 周囲の好奇の視線を気にしつつ、レンはリンを窘める。しかしそんなことくらいで大人しく引き下がるリンでは勿論無い。

「いいじゃん!久し振りなんだから!」

 にっこり笑うと、リンはレンに深いキスをした。ここまで来ると誰にもリンを止められない。レンは仕方なくリンの全てを受け入れる。

「・・・・・・あたし、レンの所に帰って来れたんだね」

 深いキスからようやくレンを開放すると、リンは感慨深げに呟く。だがそれはレンも同じだ。戦場に赴き、いつ戦死してもおかしくない状況にあるリンとこうやって抱き合えるのだから――――――。

「あ、そうだ!」

 リンは何かを思い出したように胸元から一枚の鏡を取り出した。

「何故だかわかんないけど、えそら王の攻撃を弾いてくれたの。あいつは特殊な魔導を操るから黒曜魔術のシールドでも防ぎきれなかったのに」

 そう言いながらリンは刀傷が付いてしまった鏡をレンに返す。

「へぇ。何でだろうね。確かこれは10年近く前に蚤の市で買ったものなんだけど・・・・・・そんなすごい防御魔法でもかかっているのかな」

「かもね。後でキヨテル魔道士長に聞いてみようか。メイコ魔道士長より暇そうだし」

「・・・・・・それ聞いたらキヨテル魔道士長、怒りだすぞ」

 レンは肩を竦めながら返してもらった鏡を胸元へしまう。後にこの鏡は皇宮所蔵の財宝の一つであり、300年以上行方不明になっていた『破魔鏡』だと知ることになるのだが、それはもう暫く後の話である。



 リンが一足先に紅蘭港に到着した後、続々と軍艦及びそれらに守られた御座船が港に入ってきた。何せ全軍の凱旋だ。それなりに準備もかかる。
 まず先陣を飾るのは今回最大の手柄を立て、一番若いリンと黄龍隊である。その次軍艦全てを操り全軍を狄国首都まで運んだメイト夫婦と赤龍隊、それに続いて皇帝近衛軍が続き、皇帝龍に乗ったがくぽ皇帝とルカ皇后が凱旋する。そしてしんがりは青龍隊と黒龍隊だ。

「ようやくのんびりした生活が送れそうだね」

 身重のメイコを先にスミレの上に乗せたカイトは、軽やかにメイコの後ろに跨ると手綱を取る。
 十年前出会った時はこのような未来を想像していただろうか――――――暴れ馬よりたちの悪い蛮族の魔導戦士が、今ではカイトの良き妻であり、子供達の良き母である。更にその魔力の大きさでキヨテルと二人で魔道士長をかけ持つという特例まで与えられている。だが、戦争も終わったことだし魔道士長の身分はそろそろ返上しても良いだろう。

「ねぇ、メイコ」

「何?」

「そろそろ魔道士長を引退して、グリアーノでのんびり暮らそうよ」

「・・・・・・そう言うと思った」

 メイコはクスクスと笑いながらカイトを振り返る。

「私はいいわよ。だけど陛下が許してくれたらね」

 何せ魔道士の仕事はむしろ戦後、これからが大変だから――――――そのメイコの一言に、カイトはしょっぱい表情を浮かべた。



 凱旋のわずか三日後、リンとレンの電撃結婚の知らせが華都を駆け巡った。
 これはリンが皇帝と謁見した際『今回、土地もお金も要らないからレンと正式な夫婦になる事を許可して欲しい』と訴えたためである。公の場で訴える方も訴える方だが、それを二つ返事で承諾してしまった皇帝も皇帝である。尤も皇帝自身も身分違いの恋に散々悩まされていたからということがあるのだろう。
 驚いたのはその場に居た他の龍騎士や魔道士、そして貴族たちである。二人の結婚を皇帝が許可したという知らせは瞬く間に貴族間に広がり、周辺でゴシップを拾っている瓦版書きによって庶民へと知らされた。華都の住人が二人の結婚を知るのに三日とかからなかった。

「良かったね。意外とあっさり認められて」

 許可の後、皇帝の気が変わらぬうちにと早々に結婚の届けを出したリンに、カイトが語りかける。隣にはメイトも一緒だ。

「ええ、おかげさまで」

 照れくさそうに鼻に皺を寄せながらリンはヘヘッ、と笑う。

「俺も『元カレ』としてひと安心だよ」

 冗談めかしながらそう言うと、カイトは更に続けた。

「俺達は暫くグリアーノでのんびりするつもりだから、華都の護りは君に任せるよ」

「あ、なにそれ!自分達だけずるくないですか!!やっと戦争が終わったんだから私達だってお休み欲しい!!メイト先輩だってそう思うでしょ!!」

 リンはメイトに同意を求めるが、メイトは『二人共、世の中そんなに甘くはない』と舌打ちした。

「さっき命令が下ったんだが、俺とカイコも華都を離れて狄領に行くことになった。グリアーノの時と違って未だ侵略者・奏国に対して敵意を持っている奴が狄領には多いからな。カイト、おめぇも他人事じゃねぇぞ。グリアーノ領との境界にゃあ残党の隠れ家がうじゃうじゃあるんだから」

「まったく・・・・・・人使いが荒いなぁ、陛下は。メイコは妊婦なんだぞ」

「そりゃあお前がどんどん仕込むからだろ。既に4人もいるんだから我慢しろよ・・・・・・てなわけだ。新婚ボケの龍騎士は暫く華都でおとなしくしてろ」

 つまり、厄介な戦後処理や残党による反乱などの粛清は先輩龍騎士達が行うということである。それはまだ経験が浅く、しかもこれから結婚するリンに対しての思いやりでもあった。

「メイト先輩、カイト先輩・・・・・・ありがとうございます!」

 リンは二人に対して深々と頭を下げた。



 リンとレンのささやかすぎる挙式が終わった後、カイト・メイコ夫妻は自分達の領地・グリアーノ領へ、そしてメイト・カイコ夫妻も子供達を伴って狄領・颯月宮へと入った。
 最初の一年こそ大変だったが、迅速な対応と徹底した残党狩りによりすぐにテロは下火になった。更に奏国独特の『新たに支配した国は3年間の税金免除、または軽減』という政策も功を奏しようだ。想定していたより短い3年という期間で残党の粛清を果たしたメイト夫婦は

 そしてそんなメイト達と入れ代わりるように今度はリン、レン夫妻が颯月宮へ入城した。これは残党が殆どいなくなって若い二人でも問題なく統治できるだろうと判断されたことと、二人の身分差云々を言い出す貴族がいないからという皇帝の配慮からだった。
 そして皇帝の配慮通り、穏やかな生活を手に入れることができた二人は、この地を長く統治し、骨を埋めることとなる。





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ようやく本当のラストを迎えました『奏国物語』、長々とした話にお付き合いしてくださった皆様、本当に有難うございますm(_ _)m
まさかここまで長い話になるとは思いませんでしたwww

レンがリンに渡した鏡『破魔鏡』についてちょっとだけ補足を。『破魔鏡』は元々皇宮の財宝の一つで、本来なら御物室に置かれなければならない代物です。しかし何らかの拍子で行方不明に・・・というかどこかの隙間に挟まったのか、誰かが盗もうとしたら見つかりそうになり、慌てて隙間に隠したか、そんなところなのでしょう。
そこへきてリツが皇宮を一部破壊→破壊された瓦礫の下から鏡が見つかる→まさかそんな御大層なものじゃ無いと思われるから蚤の市に売っておけ→レンが購入という流れになったんじゃないかと予想されます。
なお、この破魔鏡ですが、一旦は皇帝に返却しますが、リンレンが颯月宮に入る際、再び皇帝から下賜されることになります。この辺りもまじめにかけば一つの話が出来てしまいそうなので、この辺で割愛を(^_^;)

最終話まとめはたぶん木曜日あたりにpixivに投稿すると思います。そして来週からはがらりと装いを変えて『見返り美人』の二次を書かせていただきますので、よろしかったらお付き合いのほどよろしくお願いいたしますm(_ _)m
(時代は明治中期~くらいを予定しております^^)
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