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聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 虹色の未来4

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 それはカイトがレンに本当の別れを告げた数日後の事だった。緊急軍事会議を招集された為、皇宮に出仕したカイトの前に、金色の髪をした少女が立ちはだかった。

「カイト中将、軍事会議の前に少しだけお時間をいただけますか?」

 緊張した面持ちでカイトを睨みつけているのは、新人龍騎士・リンだった。

「ああ、構わないけど・・・・・・君も軍事会議に出席するんだろ?」

「はい。でもこれから話すことは・・・・・・プライベートの事なので」

 周囲に聞かれるとまずいのか、少し小声になりつつリンは周囲を見回す。一体リンが自分に何の用事があるというのだろうか――――――カイトは疑問を抱く。龍騎士として稽古を付けることはあるが、リンを主に指導しているのは同じ女性であるルカだし、その次に面倒を見ているのは世話焼きのメイトだ。自分は最低限の指導しかしていないし、接点もそれだけだ。それなのに私的な事で話があるとはどういうことなのだろう。平静を装いながらもカイトは身構える。するとリンは白い頬を紅潮させ、言い放った。

「レンに関する一切の資金援助はあたしがします!だからレンから一切の手を引いてください!」

 思いがけない内容と、その声の大きさにカイトは目を丸くし、面食らう。

「何故俺がレンの資金援助をしている事を知っているの?っていうかレンと知り合いなの?」

 するとリンは更に頬を赤く染め、しどろもどろになった。

「そ、そんな事どうだっていいじゃない!ぐ、偶然会って意気投合したの!数日前に!!」

 リンは強く言い放つと、もじもじと俯いてしまった。その姿は年齢相応の恋する少女そのものだ。『意気投合』という、敢えて友人らしい言い方をしているが実のところリンはレンに恋をしてしまったのだろう。
 それならばメイコが数日前――――――カイトがレンと別れ話をしたその日に聞いた美しい音の理由も付く。メイコ自身もカイトのパートナーとして龍騎士に乗る資格を持っている。それならば『龍騎士が恋に落ちる音』を聞くことも可能かもしれない――――――その考えに至り、カイトはリンに対して柔らかな笑みを向けた。。

「レンに会ったんだ・・・・・・もしかしたらメイコが聞いた音、っていうのはそれだったのかな」

「音?なにそれ?」

 カイトの呟きに、リンが怪訝そうな表情を浮かべる。

「いや、こっちのこと――――――それよりもレンの資金提供の件、俺は構わないよ。レンにとっても俺と顔を合わせないほうが良いだろうし、君にしても癒やしは必要だしね」

 その瞬間、リンの顔が今まで以上に――――――さながら奏国沿岸地域名物の茹で蛸のごとく真っ赤になった。

「そ、そんなんじゃないもん!た、ただレンはあたしの愚痴を文句も言わず聞いてくれて・・・・・・そのお礼よ!」

「にしては提供する資金が多すぎる気がするけどね。ま、見習い龍騎士殿じゃお金を使う必要も暇も無いだろうし、将来有望な才能につぎ込むのなら構わないんじゃないかな」

 カイトの一言にリンは素直に頷いた。屋敷から使用人、使用する武器から衣装、髪飾り一つまで国からの支給なのだ。見習い期間を終え、私服を身につける余裕ができれば多少は金を使う必要も出てくるだろうが、見習いでは練習着や寝間着までお仕着せなのだ。
 これは龍騎士であっても特別待遇は許されない。なので与えられる給金は使われること無く金庫に溜め込まれるばかりなのだ。それ故レンのパトロンを引き受けても痛痒を感じることはない。

「じゃあ決まりね。この事はあたしからレンに言うから!」

 リンは花のような笑みを浮かべると、カイトよりも先に会議室に入っていった。

「・・・・・・あ、リンに言い忘れた」

 不意に何かを思い出したようにカイトは呟く。

「レンにとっても君は癒やしになっているんだろうって」

 だが、既に会議室に入ってしまったリンにその呟きは聞こえなかった。



「なるほど、そんなことがあったのか」

 緊急軍事会議が終わった後、後宮手前のラウンジで花茶を飲みつつ皇帝が笑みを浮かべる。その目の前には会議室から皇帝に付き従ってきたカイトと魔導省執務室から抜け出してきたメイコ、そして後宮から顔を覗かせたルカがいる。その気になれば100人もの妻妾を抱える規模を持つ後宮だが、今現在の住人はルカだけだ。その為皇宮修理中は執務室を破壊された省庁が仮住まいをし、ルカは皇帝の部屋で共に暮らしている。本来夫婦であっても節度を弁えるようにと夫婦別部屋が基本の皇帝夫婦だが、非常事態ゆえのお目こぼしである。
 そんなお茶の席でカイトは会議前に起こった出来事を皆に話したのである。

「リンちゃんもレンくんも確か二人共14、15歳よね?特に問題は無いんじゃない?それくらいの年齢だと、グリアーノじゃ女の子の結婚適齢期だし」

「それは奏国の庶民でも同じかな。貴族は何かと遅くなるけどね――――――本来、見習い期間の『娘子隊兵士』は恋愛禁止らしいですけど、何せ師匠が厳しいお方ですからね。彼女にも癒やしが必要だと思うんですよね。なのでお目こぼしを、と思いまして」

 そう言いながらカイトはルカの方をちらりと見やる。

「あら、娘子隊兵士にそんな規則はございませんわ。相手が見つかったら自主的に辞めていくだけで」

 カイトの言葉が不本意だとばかりにルカが反論する。

「厳しい訓練に耐えられない軟弱者が、色恋を理由に辞めていくだけです。見習い期間からお付き合いをして、結婚まで果たした娘子隊兵士も大勢いますわ。いろは先輩のように。それと言わせてもらいますけど、私の稽古なんて決して厳しくなんてございませんわ。龍騎士の大変さはカイト中将だってご存知のはずでしょう?」

 眉一つ動かさずに言い放つルカの一言に、カイトとメイコは苦笑いを浮かべた。。

「暫くはリンも大変ね」

「あら、そんな事はございませんわ。少なくとも私が士官学校を卒業した時点より、リンはかなり優秀な戦士です」

 それを聞いてその場に居た3人は驚きを露わにする。

「それは意外だな。てっきり才能がないゆえに厳しく鍛え上げているのかと思ったら」

「そのような者を白龍――――――今は黄金龍となった陽炎が選ぶはずもございませんでしょう?見習い期間を終える3年後には、極めて優秀な戦士として出陣することも可能でしょう。少なくとも・・・・・・」

 ルカは花茶をひと口飲んだあとに続けた。

「初陣で敵に首を取られるような無様な真似はしないでしょう」

「ま、確かに龍騎士は狙われやすいからね。特に年端もいかない少女ならなおさらだ」

「だが・・・・・・三年間、じっくり育ててやれるか微妙なところだぞ」

 皇帝の言葉にカイトは頷き、ルカも悲しげに眉をひそめた。実は昨日、狄国から戦線布告を正式に受けたのである。この日の緊急銀時会議の議題もそのことであり、暫くの間は皇宮修繕を中止、軍事費に予算をつぎ込むことが決定されたのである。

「今度は小競り合いとは行かないでしょうね。瓔珞高原程度の戦いで済めばありがたいんですけど」

 カイトのぼやきにメイコが唖然とする・

「ちょっと・・・・・・瓔珞高原の戦いでさえ小競り合い扱いなの?」

 驚くメイコに、カイトは丁寧に説明した。

「ああ。あの時は赤龍隊も黒龍隊も出陣していなかったし、近衛軍も半分しか出陣していなかった。最強の娘子軍が全軍出撃していたとしても、他の部隊に比べたら小さなものだから、全軍の半分以下、ってところかな。本格的な戦になれば庶民からの志願兵も集まってくるから瓔珞高原時の3倍から5倍にはなると思うよ」

「ま、本気で戦ってさっさと戦争なんて終わらせるに限りますわ。それでなくても今までちょこちょこ出陣していたせいで予算を喰っているんですから。私も元老院からチクチク嫌味を言われるのは御免です」

「それは・・・・・・反省している」

 ルカの言葉に皇帝が小声になり、他の三人は思わず笑ってしまった。



 宣戦布告を受けた奏国は奏狄十年戦争と言われる長期戦争に突入する。その為皇宮の修繕は5年の歳月を要してしまうことになった。だが、それ故の皇帝、皇后の同部屋同居が功を奏したのか、この五年の間に二人の皇子に恵まれる事となる。
 更に近年稀に見る農作物の豊作にも恵まれ、税収は上がったものの庶民が飢え苦しむことは無かった。むしろ狄国による交易の妨害に不満を持った庶民らが志願兵として立ち上がり、奏国軍は一時期正規軍の10倍にまで膨れ上がる。この事によって奏国は優位に戦況を運ぶことになるが、堅牢な首都、そして玉蟲部隊の暗躍によって10年の間戦争を終わらせることが出来なかった。

 ミクやグミ、そして魔導を習ったユニコーン隊の乙女たちは一旦皇后直属の近衛兵として配属される。その後各部隊へと出向することになるのだが、ミクだけは『戦闘に不向き』とされ戦争参加を免除された。その代わり戦争で荒れ果てた土地の修復を一手に引き受けることとなる。近年稀に見る豊作はミクの力によるものが極めて大きい。
 その力の強さ、そして美麗な歌声は伝説となり『大地の歌姫』『豊穣の処女』と呼ばれることとなる。

 未だ見習い騎士のリンは三年後に一人前の龍騎士認定を受け、17歳の若さで初陣を飾る。その際、敵の中隊をたった一人でほぼ壊滅状態に陥れ、『道を創りだすもの』を意味する『ロードローラー』の異名で狄国兵士から恐れられることとなった。彼女の活躍もあり一気に勝負は決まるかと思ったが、そこからの狄国粘りは激しく、結局終戦まで十年かかっている。この終戦後、リンはレンと結ばれ四人の子供をもうけることとなる。

 カイトとメイコは奏狄十年戦争開戦の翌年に結婚し、更に二年後整備を終えたグリアーノへ領主として入ることとなる。この二年のブランクはメイコの魔道士としての力が華都で必要だったこと、魔導部隊の復活に三年の月日が必要だったためだ。
 グリアーノ領に入ったカイトは戦場に出ずっぱりだったが、それでもまめに帰城していたのか戦時中に4人、戦後に双子一組、合計6人の子宝に恵まれる事になる。


 それぞれの色のそれぞれの未来は虹のように折り重なり、美しい協奏曲を奏でてゆく。時には荒々しく、不快な和音もあるが、それでもその音色は心地よいものだ。
 後に彼らが礎を創った『聖龍の国』奏国は奏狄十年戦争の後、更なる発展を遂げ、数百年に渡る歴史を作っていくことになる。




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ダラダラと長くなってしまった『奏国物語』ですが、この話を持って本編最終話となりますヽ(=´▽`=)ノここまで付き合って下さった皆々様、本当にありがとうございますm(_ _)m
なおpixivへの投稿は水曜日か木曜日・・・時間ができ次第&管理人の気力体力次第となります(^_^;)

ファンタジー作品としては『人物紹介&大きな事件が始まる予告編』部分で終わってしまいますが、私にとってはこれが精一杯・・・ファンタジーが書ける人ってやっぱりすごいなぁと改めて思い知らされました(^_^;)
一応それぞれの未来を最後にまとめて書かせていただきましたが・・・この中でカイト&メイコの新婚初夜とリンレンの恋の行方に関してまもうちょっとだけ書きたいですので、それぞれ短編として書かせて頂きます。一応カイメイのみR-18で(^_^;)
ちなみにリンレンの話は奏狄十年戦争終結の話になります。

改めてここまでのお付き合いありがとうございますm(_ _)m残り短編二話、よろしかったらお付き合いのほどよろしくお願いします(*^_^*)
(たぶん双方ブログ記事で2話ずつくらいになる予定です・・・ただしエロが長くなる癖があるので、長くなったらスミマセン><)
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