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聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 虹色の未来1

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 カイトからプロポーズらしきものを受けた翌日、メイコは久しぶりに魔導省に出向いた。元々魔道士省があった部屋はリツによって半壊させられたので、今は魔導倉庫横にある小部屋が省執務室代わりだ。

「メイコ様、やっときてくださいましたか!」

 臨時人事でメイコの副官になった心響がホッとした表情を浮かべる。それを見つめながら副魔道士長になったブルーノも微笑みを見せた。先日のリツとの戦いにより10人ほどの魔道士が殉死、キヨテルを含む30人程が重傷で未だ出仕がかなわない。メイコの第27代奏国筆頭魔導師就任人事もあくまでも臨時人事だ。

「お怪我のこともありましたから、いつ出仕していただけるのかとヤキモキしてました。実はいくつか取り出したい道具が魔導倉庫の中にあるんですよ」

 心響の訴えに、メイコは心の底から申し訳無さそうに謝る。

「ごめんなさいね。私は大丈夫だって言ったんだけど、カイトがなかなか表に出してくれなくて」

 何気なく口にした事実だが、その場に居た魔道士達は意味深な笑みを浮かべた。

「カイト中将、噂取りメイコ様にご執心なんですね」

「今回のメイコ魔道士長の出仕も業を煮やした皇帝直々のご命令だったとか・・・・・・よっぽどメイコ魔道士長を表に出すのが嫌なんでしょうかね」

 どうやらカイトがメイコに執着しすぎて、出仕させるのを嫌がっているという噂が流れているらしい。それに気がついたメイコは慌てて否定する。

「そ、そんなことは無いと思うわよ。単にあいつは心配症なだけで・・・・・・っていうか男の子のほうが好きなんでしょ、カイトって」

 だがそんなメイコの言い分を信じるものは誰一人いなかった。

「何言っているんですか、メイコ様。カイト中将、既に宗旨替えを公言してますよ」

「それとメイコ魔道士長と一緒にいる時のあのオーラの色!あんな綺麗な薔薇色のオーラを纏わせているなんて、ねぇ。『俺はこいつに惚れている!』って大声で叫んでいるのと同じですから」

 カイトの想いを言いたい放題言う魔道士たちだったが、メイコはきょとんとしている。

「薔薇色?カイトが?」

 その一言に、魔道士達は顔を見合わせ一斉に溜息を吐いた。

「そっか・・・・・・メイコ様にはあまり繊細なものは見えないんでしたっけ」

「だからこそ魔導倉庫にも入ることができるんですものね」

「ちょっとカイト中将が気の毒に思えてきた・・・・・・:

「まぁ、今日は荷物を持ちだしたら、早々にカイト中将の屋敷に帰ってあげてください。でないと魔導省に押しかけてきてメイコ魔道士長をさらっていきそうです」

 ブルーノが発したその一言はよっぽど的を射ていたのだろう。メイコ以外の魔道士達は一斉に大笑いをした。



 魔道士らの要請でメイコは皇宮の修理に必要な魔導槌を3本と、工事用の鎮守魔法陣を描くための鉄筆50本を魔導倉庫から取り出す。そしてそれらを現場に出向している魔道士に配るためメイコは心響に連れられて皇宮修理現場へと向かった。破壊された場所は単に再建するだけでなく、一つ一つに魔法をかけ、魔導攻撃への備えを強くするらしい。その為魔道士達は修行中の学生も含めて総動員されていた。

「ミクからも聞いたんだけど、釘一本から建築資材一つ一つ全てに魔法をかけているんですってね?」

「ええ、そうなんです。今回のことを教訓に、魔導で破壊された部分は魔導攻撃に耐えられるものにしていこうと皇帝が仰って・・・・・・暫くは魔導省に予算が沢山下りそうですけど、ここまでこき使われると割にあわないというか」

 メイコの問いかけに心響がぼやく。それを聞いてメイコの眉が軽くひそめられた。

「それって他の予算が削られるとか、っていうんじゃ・・・・・・」

「削られますよ。特に軍の予算が・・・・・・っていうか今まで遠征続きだったので、向こう五年は必要最低限の出陣にするつもりだそうです。兵士達もようやく故郷過ごせますから文句はないでしょう」

「そううまく話が進めばいいけれど」

 10日前の戦いで命を落としたリツは狄国の王族だ。しかも現国王と繋がりが深いと思われる。となると弔い合戦とばかりに狄国が攻め入ってくる可能性も高いだろう。いくらこちらが戦争をしたくないと言っても向こうはそう思っていないかもしれない。

「ま、その時のことはその時考えればいいか」

 メイコが呟いたその時である。建築現場で働いている男達の中、ひときわ華奢な後ろ姿が目についた。実った小麦のような金色の髪は少々伸びているが、その姿にメイコは見覚えがあった。メイコは連れが止めるのも聞かずその後姿へと近づいてゆく。

「ねぇ、もしかして君・・・・・・レン君?」

 その声に驚いたのか、華奢な後ろ姿の少年がメイコの方へ振り向いた。



 レンのその姿は今をときめく宮廷歌手とは到底思えなかった。お仕着せの作業着を身につけたレンは全身埃にまみれ、その顔は日焼けで赤くなっている。以前はかなり多くつけていたアクセサリー類だったが、今は左耳につけた蒼玉の耳飾り一つだけだ。その色はレンの瞳の色に合わせての事なのだろうが、何故かメイコはその色からカイトを連想した。
 カイトの髪の色、身に付ける鎧の色、そして率いている青龍隊の色にメイコを見つめる優しい瞳の色――――――それは全て青い。決して珍しい色では無いし、誰が付けていても問題のない色味だが、メイコの心は何故かざわついた。

(――――――落ち着きなさい、メイコ。別に蒼玉の耳飾りなんて珍しくもなんともないでしょう)

 メイコは心のなかで自分に言い聞かせながらレンに語りかける。

「何であなたがこんなところで働いているの?皇宮の再建は宮廷歌手の仕事じゃないでしょう?」

 その瞬間、レンの表情が険しくなる。そしてゆらりと立ち上がるとメイコに近寄り、不意のその襟を強く掴んだ。

「・・・・・・ああ、勿論宮廷歌手の仕事じゃねぇよ、こんなの。だけど・・・・・・歌う場所を壊されて、仕事が無くなった宮廷歌手がどうやって食っていけばいいっていうんだよ!カイトだってあんたや他の男に夢中で俺のことなんて忘れているのに!」

 その声は宮廷歌手のものとは思えぬほど掠れ、ひび割れていた。



 声変わりは少年宮廷歌手にとってまさに致命的である。その天使の声を失うということは宮廷歌手としての仕事を失うことに等しい。それを防ぐため少年歌手たちはパトロンを作って一生面倒を見させたり、あわよくば去勢手術の費用を出させてその声を一生ものにしようと画策するのである。
 レンもそのつもりでカイトに近づいたのだろう。だがカイトはメイコと運命的な出会いを果たし、しかもリツの誘惑を受けレンとの仲を解消してしまったのである。
 その時点ですぐさま次のパトロンを作れば良かったものの、レンの中に芽生えてしまったカイトへの未練――――――否、本気の恋情に囚われ、機会を逃してしまったのだ。既にレンの変声は始まっており、少年歌手として活躍するのはもう不可能だろう。声が落ち着けば大人の歌手としての道も開けるかもしれないが、それは少年歌手以上に狭き門である。それこそパトロンの後ろ盾がなければ絶対に就くことはできない。

「あんたさえいなければ・・・・・・カイトなんてちょろかったのに!!」

 ポロポロと涙を零しながらメイコの襟を更に強く握るレンの手を、メイコは振り払うことができなかった。否、それだけではない。メイコにしては珍しく相手の『気』に――――――レンの負の気に呑まれ、支配され始めていたのだ。
 いつもとは違うメイコの異変、それににようやく気がついた心響が慌ててレンの手を掴み、呪文を唱える。するとレンの手にビリビリとした痛みが走り、レンは慌ててメイコの襟から手を離した。

「魔道士長様!一度魔導省に戻りましょう!カイト様へは私から連絡して迎えに来て頂きます!」

 それはメイコに聞かせるというよりは、レンへの牽制だった。心響はレンを睨みつけながらまだ放心状態のメイコの肩を抱き、その場を早々に後にした。



 『レンとメイコの間にトラブルがあった』という心響の連絡を受け、すぐさまカイトが軍司令室から魔導省執務室へやってきた。

「メイコ!大丈夫か!!」

 魔道士達への挨拶もそこそこに、カイトは部屋隅にある長椅子に横たわっているメイコの傍に近づく。

「大丈夫、と言いたいところですが状況はあまり芳しくありません。執務室に戻った直後に倒れこまれまして・・・・・・」

 ブルーノの説明を聞きながら、カイトはメイコの顔を覗き込んだ。その顔色は青ざめ、唇まで紫色に近くなっている。以前玉蟲部隊の暗殺者の杖を握りつつ、窮奇(きゅうき)と戦った時に同じくらい憔悴したことはあったが、それほどまでの衝撃を受けたというのか――――――カイトは心配そうに自分達を見つめている魔道士達に尋ねる。

「伝達によれば、レンに迫られてとのことだったが・・・・・・本当にそれだけなのか?レンが何者かに乗っ取られていたとか、そのような気配な?」

「いいえ、ありませんでした」

 そう答えたのは、メイコに付き従っていた心響である。

「ただ、恐ろしいまでの嫉妬・・・・・・あそこまでの嫉妬を叩きつけられてしまえば、感知力のない、普通の人間でも怯んでしまいます。普段であれば信じられない程の強さ――――――この場合、あえて『鈍さ』と言わせていただきますが、それを持つメイコ様でも、直接の恋敵ということで、その影響をまともに受けてしまったようです」

「恋敵、ねぇ」

 心響の言葉にカイトは複雑な表情を浮かべた。

「・・・・・・レンは単に俺を利用していただけで、恋情なんて一欠片もないと思っていたけど」

「それでも身体を重ねていれば情が湧くものですよ、カイト中将」

 カイトの言葉を否定したのはブルーノだった。

「そしてメイコ魔道士長も――――――カイト中将を強くお慕いしているのでしょうね。でなければここまで相手に共鳴はしないでしょう」

 その言葉にカイトは大きく目を見開く。

「メイコが・・・・・・俺のことを、強く?」

 思わずこの場には不釣り合いな笑みが零れそうになるが、カイトは辛うじてそれに耐えた。しかしメイコがここまでレンに共鳴を起こすほど自分を慕ってくれているとは――――――カイトの心は不謹慎にも弾む。

「ご本人は気がついていないようですけどね。取り敢えず今日は帰宅したほうが良いでしょう。カイト中将、お願いできますか?」

「ああ、解った。明日からの出仕に関しては暫く様子を見てから、ということでいいかな」

「ええ。当座の間必要な物は全て取り出してもらえましたから、十日ほど休んでいただいても問題ありませんよ。何かありましたら馳せ参じますので」

「ありがとう」

 カイトはブルーノに礼を言うと、メイコを両腕に抱きかかえる。その身体はぐったりと力が抜け、いつも以上に重く感じた。





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『奏国物語』本編最終話、『虹色の未来』編に突入ですヽ(=´▽`=)ノ
『祖国』にしようか『未来』にしようか迷っていたのですが、今回ではメイコの祖国であるグリアーノまで出せ無さそうなのと、それぞれのキャラクターの未来図を出せそうということで『未来』とさせていただきました♪

皇宮復興工事の中、メイコとレンは思わぬ再会を果たしました。カイトとの仲を解消したレンは宮廷歌手としての仕事を失い、工事現場で働いているという・・・その恨みつらみを全てメイコに叩きつけてしまいました(>_<)
決して悪い子じゃないんですよ・・・ただ思い通りに行かない自分の人生に苛立ち、元・恋人の相手と思われるメイコに八つ当たりをしてしまったというのが正直なところで・・・ま、後日カイトにフォローは入れてもらいますし、レンにはレンの新たな恋人ができる予定ですので、生暖かく見守っていただけるとありがたいです(*^_^*)

そしてメイコは珍しくまともに精神的攻撃のダメージを受けてしまいました。これはレンが魔道士でない事、そしてメイコ自身がカイトに対して深い想いを抱いていることに気がついていないことが仇となってしまいました。同じ相手に同じ恋心を抱いている場合、対立もしますが共鳴もしやすいのです・・・今回は『共鳴』の方に針が傾いてしまったようですが。
こちらもカイトに後始末をしてもらわないと行けないようですので、頑張ってもらいましょう( ̄ー ̄)ニヤリ

次回更新は10/6、カイトの屋敷でのカイトとメイコの会話になります(#^^#)
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