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聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 玉虫色の暗殺者2

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 正体が掴めぬカイトの新しい愛人、その事情を聞き出そうとキヨテル、メイコ、ミクの三人は軍司令部が置かれている暁の間を訪れた。

「おう、キヨテル!久しぶりだな。皇帝とルカの婚礼のために戻ってきたのか?」

 そう声をかけてきたのは赤龍隊隊長のメイトだった。どうやら明日の婚礼、そしてその後のパレードの警備計画について会議していたらしい。だがその場に居なくてはならないはずのカイトはどこにも見当たらなかった。

「おや、カイト中将はどうなさったのですか?もしかして明日の予行練習をしているとか?」

 するとメイトが眉間に皺を寄せ、唇を尖らせた。

「それがさぁ、『疲れた』とかほざきやがって早退しやがったんだよ。明日が本番だっていうのに何であんなに体力を消耗させているのか・・・・・・新しい愛人とヤリ過ぎてんのかな」

 ガラの悪いメイトの一言二、その場に居た軍幹部たちは失笑し、メイコとミクは羞恥に顔を赤らめる。

「メイト中将、若い娘を前に戯言はお止めくださいませ。カイコ様にバレたら大目玉ですよ」

 キヨテルの口から妻の名前を出された途端、メイトは あからさまにぎくり、と教場を強張らせる。外面は亭主関白を気取っているメイトだが、実のところは妻・カイコの尻に敷かれっぱなしだということは周知の事実だ。その表情の変化を確認した後、キヨテルは更にメイトに尋ねる。

「ところで、カイト中将の新しい愛人ですが、どのような方か判りますか?」

 するとその場に居た軍幹部たちは顔を見合わせながら小首を傾げた。

「そういやあまり知らねぇな。確か戦争難民の少年だろ?」

「俺もそれくらいしか・・・・・・瓔珞高原の端っこに居たらしいな。あんな山奥にあんな美形がいるなんて、ってカイト中将が言っていたぞ」

「それにしても女装はないよな。でも本人の希望みたいだぞ。カイトは結構カタブツで『らしくない』服装を嫌がるからな」

「結局頼られると断れないですからねぇ、カイト中将は。今回もそこにつけ込まれたのでしょう」

 言いたい放題しゃべる軍幹部達だったが、そのおかげでようやくカイトの相手の輪郭が見え始めた。メイコ達は互いに顔を見合わせて頷き、メイトたちに笑顔を見せる。

「色々な情報をありがとうございます。取り敢えず私達はカイト中将の見舞いに行ってきますので。ではこれにて」

 キヨテルは一礼すると、メイコとミクを促しながら笑顔のまま部屋を後にした。だが、扉を閉じるなり、その顔は真剣なものになる。

「出身地と見てくれ以外何もばらしていないようね、カイトは。本当に面倒臭いわ、秘密主義者って」

 メイコが不不満を漏らすと、キヨテルも深く頷く。

「でも瓔珞高原、という出身地が判っただけでもありがたいですね。あそこは独特の発展をしている山岳魔導の聖地なんですよ。因みに狄国の皇帝一族も瓔珞高原の出身です」

 山岳魔導の聖地の出身――――――それが何を意味するか、メイコとミクには解らない。しかしキヨテルには何か思い当たるフシがあるらしく、城の出口とは反対の方へ進み始める。

「二人共、一緒に来てください。カイトの屋敷に行くならばある程度の『防御』が必要でしょう。ミクさんには少々重いでしょうが、耐えてもらいますよ」

 何があるか判らない場所に丸腰で行くことは出来ないと、キヨテルは二人を引きつれ城の奥へと進んでいった。



 二人を連れたキヨテルは、ひとつの扉の前に来ると足を止めた。

「久しぶりですね、ここを開けるのも」

 感慨深げに呟くと、キヨテルは腰にぶら下げた鍵を手に取る。そしてその鍵を鍵穴に差し込み右に回した。

「ここは一体?」

 各種魔導共通のルーン文字が刻まれた扉を見つめつつ、メイコが尋ねる。

「特殊な魔導の道具が置かれている納戸みたいな場所です。敵が何者かわからない今、先人の知恵に護ってもらうしか無いでしょう。さぁ、開けますから気をつけてくださいね。武器が纏っている『魔力』に中てられます」

 キヨテルはしつこいほどに二人に注意を促し扉を開く。すると埃っぽい臭いとともにズラリと並んだ魔導武器の数々が目に飛び込んできた。

「うわっ、すごい・・・・・・」

 それを目の当たりにした瞬間、メイコは思わず感嘆の声を上げる。

「じゃあちょっとここで待っていてくださいね」

 キヨテルは魔導武器に感動しているメイコに言い残し、自ら部屋の中に一歩足を踏み入れた。

「やはり私達が入るのは問題が?」

「まぁ、基本的にここには魔導師長しか入っちゃいけないんですが、それよりも埃っぽいでしょ?若い娘さんをホコリまみれにするのは私の趣味じゃありません」

 笑顔で言い残すと、キヨテルは部屋の中に入っていった。その瞬間、ミクはその場にしゃがみ込む。

「ミク、大丈夫?」

 メイコは慌ててミクに駆け寄り、背中を擦る。貧血か何かだろうか――――――そんなメイコに、ミクは半ば呆れたように声をかけた。

「・・・・・・お姉ちゃん、こんな強い魔法の渦の中にいてよく平気だね」

 真っ青な顔でミクはメイコを見つめる。

「ここ、すごいよ・・・・・・魔法同士が主張しあっって・・・・・・気持ち悪い」

「無理をしないで・・・・・・ここから少し離れようか」

 メイコはミクの肩を抱きながら、扉から離れる。

「・・・・・・お姉ちゃんの鈍さ、尋常じゃないよ。何で平気なの?」

「何故、って言われてもねぇ」

「魔導師長しか入っちゃ駄目、というより、魔導師長くらい力が強くで防御がしっかりした人じゃないと入れなよ、あの部屋」

「なるほどね。だからキヨテルは私達を入れないようにしたんだ」

 そんな会話をしているうちに、キヨテルが腕に何かを抱えて戻ってきた。

「魔導師用の鎖帷子です。ミクさんには少々重いでしょうけど・・・・・・大丈夫ですか?やっぱりあそこの部屋の魔法の強さに中たっちゃいましたか」

 キヨテルは申し訳無さそうにミクに謝ると、メイコをまじまじと見つめる。

「メイコさんは、大丈夫なんですね」

「ええ。まったく・・・・・・私、きっと魔導師には向いていないんですよ」

「いいえ。その逆です。魔法が使えるのに、それくらい鈍いというのはある意味すごいですよ・・・・・・ミクさんとは違った意味で、あなたも稀有な魔法使いなのかもしれません」

 キヨテルは鎖帷子をそれぞれに渡しながら言葉を続ける。

「本当は魔導師一個師団を引き連れていければいいんでしょうが、さすがににそれはね・・・・・・向こうでは何があるか判りません。もし、私に何かあっても逃げ切ってくださいね」

「逃げることができたら、ね」

 メイコは苦笑いを浮かべつつ、キヨテルから防魔の鎖帷子を受け取った。

「ミクは外で待っていたほうがいいかもね」

 メイコの言葉に、ミクは表情を強張らせる。

「お姉ちゃん・・・・・・やっぱりやめておいた方が」

 しかしメイコは首を横に振りつつ、ミクに言い聞かせた。

「自分達だけの問題ならね。でもカイトがどんなことになっているか・・・・・・本来なら戦争捕虜としてひどい目に遭わされても文句が言えない私達に、最高の待遇をしてくれたのよ。その恩を返さないとね」

 メイコのウィンクに、ミクは表情を不安に曇らせたまま頷いた。



 三人は鎖帷子を身につけると、そのままカイトの屋敷へと向かった。

「・・・・・・屋敷そのものは特に変わってはいませんね」

 キヨテルの呟きに、二人は頷く。そして門をくぐり玄関の呼び鈴を少し大きめに鳴らした。すると扉の向こう側から軽やかな足音が近づいてきて、扉が開かれる。

「あら、いらっしゃいませ。キヨテル様」

 出てきたのは執事のハクだった。当然といえば当然なのだが、この屋敷ではカイトが直接対応に当たることも少なくないので、三人は少し驚く。

「メイコ様、ミク様もお久しぶりです」

「お久しぶり、ハク。ところでカイトは?」

 メイコの質問に、ハクは執事らしく淡々と答えた。

「ここ数日、徹夜仕事が続いたとのことで只今仮眠をとっていらっしゃいます。もし御用がお有りでしたらこちらから連絡を・・・・・・」

「いいえ。寝ているなら好都合。ちょっと気になることがありましで、できればカイトが介入しないほうが、こちらとしてはありがたい」

 そう言うとキヨテルはハクを押しのけ、屋敷の中に踏み込んだ。

「キヨテル様!」

「ハク。この屋敷に『リツ』という女装の少年は来るか?」

「・・・・・・はい。でもここ一ヶ月くらいですよ。新しい恋人だと」

「どうやらそいつが厄介らしい。カイトがそれを自覚していれば問題ないが、もしそれを知らずに洗脳でもされていたら奏国の存亡に関わってくる」

 するとキヨテルは何やら呪文を唱え始めた。

「『探索の魔法』、ね。私達も手伝いましょう」

 メイコとミクも玄関先で覚えたての呪文を唱えつつ、カイトの屋敷を探索し始める。だが、三人がかりの探索でもなかなか怪しい気配は見つけられない。

「・・・・・・特に変わったことは無さそうね」

 長い、長い探索魔法にまず音を上げたのは、細かいことが苦手なメイコだった。だがその次の瞬間、ミクが膝から崩れ落ち、ガタガタと震えだしたのである。

「ミク!大丈夫?!」

 慌ててミクを抱きしめるメイコに、キヨテルも慌てて近寄る。

「どうしたんですか、ミクさん?」

「屋敷の奥・・・・・・向かって右、二階かな。何かドロドロした気配・・・・・・でも黒じゃない。玉虫色の気配・・・・・・気持ち悪い」

 何かの気配を感じているミクは、額に脂汗を滲ませながら、自分が感じたものを口に出す。

「ハク!そこはカイトの寝室か何かか?」

 キヨテルの悲鳴にも近い声に、ハクも背筋を伸ばし、応える。

「いいえ。今はお客様用の寝室になっております。昨日もリツ様がお泊りに・・・・・・」

「失礼するよ!」

 キヨテルは二人をおいて二階へと駆け昇る。そしてミクが示した部屋の扉を乱暴に開けた。

「うっ・・・・・・これ、か!」

 客用の寝台の横にある卓、そこには玉虫色の玉が置かれている。圧倒的な負のエネルギーに吐き気を催しながらも、キヨテルはその玉に近づき、鷲掴みにした。その瞬間、手に焼けるような熱さと痛みを感じる。

「うっ・・・・・・」

 早くこれを壊さなければ――――――キヨテルは反射的に窓を開け放ち、それを外へ投げつけた。

パリン!

 玉虫色の玉は割れ、砕け散る。すると玉虫色の煙が立ち上り、空中に霧散した。

「・・・・・・ひどいものですね」

 キヨテルは己の左手を見つめながら毒づく。玉を掴んだキヨテルの左手は、まるで炎に手を突っ込んだかのように焼けただれていた。



「済まない!・・・・・・どうりで異様に疲れやすいと思っていたら、リツがそんなことを・・・・・・」

 カイトは目の前にいるキヨテルに深々と頭を下げた。心の隙を突かれて敵に入り込まれるという、龍騎士にあってはならない失態を犯したのだ。謝るのも当然である。

「本当に気をつけてくださいね。女の格好をした少年に寝首をかかれた何で事になったら奏国の恥ですから」

 冗談半分に笑いながらいうキヨテルだったが、その目は笑っていなかった。それだけにカイトは大きな身体を更に縮こませる。

「今回の件については反省している」

「ま、本気であなたを乗っ取るというよりは、あなたの心を吸い取って情報を得るといった道具みたいでしたしね。敵が本気だったらあなたはとっくに死んでいます」

 キヨテルは更に渋い表情になる。

「どこまで敵に情報が流れているか判りませんが・・・・・・明日の警備は更に大変になりそうです」

 キヨテルの一言に、カイトも深く頷いた。




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ある意味、危機一髪のところでカイトは助けられました(^_^;)というか、お泊りをさせておきながら寝室が別って・・・もしかしたら、リツとは身体の関係までは行っていないのかもしれません。下心はあるかもしれませんが\(^o^)/
きっとそこを付け狙われて、2度目か3度めのお泊りの際、玉虫色の玉を置かれてしまったのでしょう。お掃除に誰かが入っても『忘れ物かな~』くらいしか思わないでしょうし。もしかしたら前日にお泊り→皇帝の婚礼準備で使用人達も忙しく、ゲストルームのお掃除は後回しになっていた可能性もあるかもしれません。
(ていうか忘れ物→カイトが預かってくれるはず→更に玉虫色の玉がカイトに近づくことになり情報を吸い取りやすく、という算段だったのかも)

次回更新は9/1,ようやく皇帝の婚礼本番となります(*^_^*)
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