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聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 玉虫色の暗殺者1

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 狄国首都・煌仙にある颯月宮には一種異様な雰囲気に支配されていた。謁見の間、玉座の両側には有力貴族がズラリと並び、その背後には玉蟲部隊の魔導師と狄国近衛隊の兵士達が交互に配置されている。
 そんな彼らの視線の先には一人の少女の幻影が映しだされていた。否、少女ではない。それは少女の姿をした少年の姿であった。その幻影が、玉座にいる人物に向かって何かを説明している。それを貴族や魔導師、そして兵士達も聞き入っていた。

「なるほど・・・・・・では、新たな龍騎士が奏国に誕生したというのだな、リツ?」

 玉座に座った人物は、投影された幻影――――――リツに対して声をかけた。その姿はリツよりも更に年若い、14,5歳の少年だ。しかしその緑色の瞳に若さゆえの危うさは微塵も感じられない。むしろ百戦錬磨の将軍か宰相といった老練さを滲ませている。
 若者なのか、それとも若者の皮を被った老人なのか――――――そんな少年王に対し、幻影の女装の少年・リツは艶然と微笑む。

「御意。しかしまだ14歳の少女です。戦士としてはまだまだ未熟――――――何せ兵士見習いになってひと月にもなりませんので」

「なるほど。将来有望だがまだ生まれたてのひよこ、ひねるのは容易いか。それとも今から洗脳して狄国の犬にさせるか」

 少年王は美しい唇を微かに歪ませ、ニヤリと笑う。

「リツ、奏国はいつこちらに戦争を仕掛けてきそうか?」

 まるでゲームの『次の一手』を尋ねるような軽口で少年王はリツに尋ねる。が、その瞬間リツは初めて困惑を表情に浮かべた。

「それが・・・・・・皇后を娶る為、暫くは出陣しないと」

 すると少年王の両側に陣取っていた貴族から失笑が漏れ、少年王もちっ、と軽く舌打ちをする。

「ああ、あの噂になっていた白龍騎士か。ふん、女の色香にたぶらかされて・・・・・・我が彩鞠王朝が天下を取る日もそう遠くないな!」

 ひとしきり笑うと少年王幻影のリツに命じた。

「向こうが穴蔵に籠もるなら、穴蔵ごと破壊すれば済むこと!リツ、奏国皇帝・がくぽの婚礼の日に皇宮を破壊し、奏国皇族の血を全て絶やせ!」

「御意」

 リツは短く返事をし、一礼すると少年王・えそらの前からすっ、と消えた。



 ルカが皇帝龍に認められ、リンが黄金龍・陽炎の龍騎士になってから半年、華都城下は祭典前特有の華やかな雰囲気に満ち溢れていた。何せ明日は皇帝の婚礼及び皇后のお披露目行列が行われるのだ。およそ三十年ぶりの祝賀に浮かれるなという方が無理だろう。
 そもそも皇帝・がくぽは、自分とルカの婚礼は地方の御用邸でひっそり行うつもりでいた。でなければ元老院や貴族の反感を買うと思ったからだ。
 しかし、そんな質素な婚礼を許さなかったのは、意外なことに元凶と思われていた元老院であった。

「地方で婚礼などやられたら警備が手薄になります!それに国内外にも示しがつかないじゃありませんか!」

「やるなら奏国の威信をかけた、華やかなものにしていただきます!何なら各地から代表者にも参加してもらうというのは?」

「それは良いな!見物客が華都にやってくることになれば、その道中の宿場も潤う。願ったりかなったりじゃないですか!」

 どうせ自分達の娘や一族の娘が皇后になれないならば、自分達の領地が潤うよう派手な婚礼を行ってもらったほうが良い――――――そんな貴族たちの思惑と共に話がドンドンと進んでしまい、膨大になってしまった婚礼準備の為、挙式が半年も延期になってしまったのである。

「本当にいい加減よね~元老院なんて」

 明日、皇帝とルカが乗るための御輿に朱鷺薔薇を飾りながら、グミが唇を尖らせる。

「どのみち自分の娘や親戚筋が皇后になれないから、ってことなんでしょ?」

 リリィも香り高い紫珠百合を取り付けつつ苦笑いを浮かべた。

「でも下手に有力貴族の娘が皇后になるよりは、ルカ隊長が皇后になったほうが良かったんじゃない?貴族の力関係からするとさ」

 真珠華を手際よく挿してゆくカルの言葉に皆は一斉に頷く。そんな元・ユニコーン隊の面々やメイコ、ミクが井戸端会議をしているのを、ルカは微笑みを浮かべながら見つめていた。
 婚礼前日、この日は新郎新婦が乗る御輿や新婦の花飾りの最終仕上げの日である。これは新婦側の血縁や友人たちの仕事で、『花のように咲き誇る結婚生活を』との願いを込めながら作られるものだ。因みに使い終わった花々は『恋が叶う』縁起物として若い娘達に配られる、というか我先にと奪われる。
 冬真っ盛りだった半年前と違い。この季節はあらゆる花が咲き誇っている。それだけに花飾りの為の花の種類も多く、皆遠慮無くどんどん花を飾ってゆく。

「そういえば、メイコさん知ってます?カイト隊長にまた新しい愛人ができたんですよ!」

 まるでカイトの悪さを言いつけるように、イアが小声でメイコに告げる。

「え。そうなの?」

 イアの言葉にメイコが目を丸くする。半年間、『救いの村』と魔導省の往復でカイトとは殆ど顔を合わせていない。それだけにカイトがどんな生活をし、どんなパートナーを持っているか全くわからないのだ。だが恋人にしろ愛人にしろ、パートナーが出来たことはめでたいことに違いない。

「だったらカイトもお祝いしてあげないと・・・・・・」

 メイコが呟いたその瞬間、メイコ以外の女性陣が一斉に溜息を吐いた。いろはに至っては床にがっくりと手をつき、ルカはこめかみを押さえている。実の妹のミクでさえ同情の眼差しでメイコを見つけるではないか。

「え?ど、どうしたの?」

 周囲の反応が理解できず、メイコはきょろきょろと皆を見回す。

「メイコさん・・・・・・あなた、まさか気がついていないんですか?カイト中将が本当に好きなのが誰かを」

 ルカが呆れたように口にする。

「恋愛に疎いと自負している私だって、ひと目で判りましたのに」

 ルカの言葉に他の娘達も激しく賛同し始めた。

「そうそう!女嫌いで通っていたカイト隊長だったけど、メイコさんには激甘だしねぇ」

「そっか・・・・・もしかしてメイコさんに相手にされないから、また男の子に走っちゃったのかな、カイト隊長」

「しかも今度の子には女装させているしね。間違いないよ、きっとメイコさんの代わりなんだよ」

「カイト隊長が本格的に壊れないうちに付き合ってあげなよ、メイコさん」

 口々に言われメイコは戸惑いの色を隠せない。そんな中、唯一妹のミクは神妙な表情のままメイコに耳打ちをした。

「お姉ちゃん、後でカイトさんの愛人のことでちょっと話したいことがあるの。みんなとは別の意味で気になることがあって」

 みんなとは別の意味――――――それは魔導師としての見方なのだろう。メイコは表情を変えぬまま小さく頷いた。



 花飾り作りを終えた後、メイコとミクは未だ井戸端会議をしている皆と別れ、部屋を後にした。

「あのね、お姉ちゃん」

 近くに誰も居ないことを確認した後、ミクが言葉を選びながらメイコに語りかける。

「カイトの愛人の件ね。あなたが気になるってどんな点?」

 メイコと違い、慎重なミクである。確信を得ない限り思ったことを口に出すタイプではない。それだけにメイコは真剣にミクの言葉に耳を傾ける。

「・・・・・・オーラの色が普通と違うの。あんな色、人間のものじゃない」

 きっぱりと人間じゃないと言い切るミクに、メイコは声を潜めながら更に尋ねる。

「何ですって?一体どんな色だったの?」

「虹色というか・・・・・・もっと毒々しい、玉虫色?ってかんじかな。普通は多くたって2色でしょ?またはグラデーションか」

「ということは人間の姿をした魔物、ってこと?」

 だが、ミクは困惑の表情のまま少し考えこんでしまう。

「・・・・・・でも、魔物の気配とも違うの。気配は人間なんだけど・・・・・・もっと勉強をすれば解るのかもしれないけど、今の私にはわからない」

 とうとう涙を浮かべ始めたミクを、メイコはそっと抱きしめた。

「・・・・・・これから魔導省に行きましょう。そしてあなたが感じたことを魔導省の人達に全部話してみて。もしかしたら知っている人がいるかもしれない」

 メイコの促しに、ミクは抱きしめられたまま深く頷いた。



 魔導省の執務室にメイコとミクが訪ねた時、そこにはグリアーノから帰ってきていたキヨテルが居た。どうやら皇帝の婚礼に合わせて一時的に奏国に帰還したらしい。

「おや、お久しぶりですね、メイコさんにミクさん。ますますお美しくなられて」

 カイトと違い、女性に対する褒め言葉がまるで呼吸のように飛び出すキヨテルに、二人は照れ笑いを浮かべた。

「お久しぶりです、教導師団隊長。というより第26代奏国筆頭魔導師様と言ったほうが良いのかしら・・・・・・グリアーノはどうなっていますか?」

 メイコがしゃちほこばって尋ねると、キヨテルは照れくさそうに頭を掻いた。

「キヨテルでいいですよ。筆頭魔導師なんて体の良い雑用係なんて・・・・・・ところでグリアーノ、あそこは本当に豊かな国ですね。ほんのちょっとの指導しかしていないのに領民はどんどん知識を吸収し実践してゆきますからね。今年の収穫が終わったら、優秀な人物を数人、華都に留学させようかと目論んでおります」

 キヨテルの手放しの褒めように二人は我が事のように頬を染めるが、ここに来た本来の目的を思い出し、不意に真顔になる。

「キヨテルさん。実はお伺いしたいことがあるのですが・・・・・・玉虫色のオーラを纏わせる『人間』っていると思いますか?」

 メイコが尋ねたその瞬間、キヨテルの顔から笑顔が消えた。

「何ですか、その化け物は?少なくとも奏国では聞いたことがありませんけど」

 やはり『玉虫色のオーラの人間』は尋常では無いのだ――――――確信したメイコは事情を説明した。

「実は・・・・・・カイトの新しい恋人のオーラがその色だってミクが。私は救いの村と魔導省の往復でここ最近カイトに会っていなくて判らないのですが」

 そして続けてミクが口を開く。

「え~っと・・・・・・瓔珞高原?あそこの戦いで私達と合流した部族の一人です。一応男の子なんですけど、女の子の格好をするのが好きというか・・・・・・カイトさんにそういう趣味があればまた別・・・・・・」

「ああ、そういう趣味はカイトにはありませんよ。結構堅物で、祭りの際の仮装だっていい顔をしないくらいですから」

「じゃあ何故そんな子を傍に・・・・・・」

「・・・・・・思考を乗っ取られている可能性がありますね」

 キヨテルはいつにない低い声で呟く。

「とにかく本人達を見てみないことには埒が明きません。一緒に来てくれますね?」

 キヨテルの申し出にメイコとミクはゴクリ、とつばを飲み込んだ。




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奏国物語もかなり佳境に入ってまいりました((o(´∀`)o))
皇帝とルカの婚礼に乗じて狄国が動き始めております。しかも狄国の王は見た目少年という(@@;)尤もこの見た目が年齢通りかどうかは定かではありません。なお少年王のモデルになってもらった彩鞠えそら君はUTAUのキャラクターです(〃∇〃)

そしてリツの工作の中でどうやらカイトが狙われているようですが・・・果たしてこちらはリツに乗っ取られているのか、それともカイトが自分の思惑でリツを傍に侍らせているのか―――――次回8/25をお楽しみくださいませ(*^_^*)
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