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聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 朱鷺色の花嫁6

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 グミが拙い『通信』で仲間に連絡をとって暫くすると、ユニコーンに乗った若い娘達が『救いの村』にやってきた。時間帯からするとどうやら魔導学校の授業や、軍の訓練の途中を抜けだしてやってきたらしい。

「ルカ隊長!皇帝龍に乗ったって・・・・・・うわぁ!何ですか、これは!!」

 ラピスが感嘆の声を上げてルカの背後にいる聖龍を見上げる。そこにいるのは今まで見たことのない黄金の龍と、紫と朱鷺色をした聖龍だ。驚いたのはラピスだけではなく、リリィ、いろは、ゆかり、イア、カルの5人も驚きに目を見張る。

「きれい・・・・・・これってルカ隊長の影響なんですか?」

「まぁ半分はね。黄金龍はリンの影響で変わったから・・・・・・それと皇帝龍のこの色は婚姻色だと思うの」

 期待に目を輝かせ尋ねてきたカルにメイコが説明する。

「『白の魔導師』の口伝にも二色の鱗をした龍の話が出てくるのよね。英雄・ジェネラルが妻を娶った時、翠と群青の二色に青龍が変化したってあるから・・・・・・もしかしたら奏国の歴史を紐解けば何か出てくるかも。それよりも!」

 メイコはルカの部下達が持ってきた衣装の入った箱を指さす。

「さっさとルカをそれに着替えさせるわよ。お化粧がデキる子はこの中にいる?」

「あ、わたし出来ます。勿論化粧道具もバッチリ持ってきてますよ!」

 イアが手を挙げ、化粧道具が入っていると思われる別の道具箱をポンポンと叩く。ある意味戦場よりもやる気満々だ。その迫力に思わずルカは後退る。そんな気配を感じたのか、ふとメイコがルカの方を振り返り、にやりと笑った。

「・・・・・・ということで覚悟を決めてね、ルカ。あなたの部下達もあなたの新しい門出を祝福してくれる。あなたが皇帝を護るように、この子たちはどんなことがあってもあなたを護ってくれるでしょう」

 どんなことがあってもあなたを護る――――――そのメイコの一言に、ルカは部下達を見回す。確かに皆まだ若いが、ルカを慕って忠誠を誓ってくれる仲間たちばかりだ。

「そうだな。もう少し皆を・・・・・・頼りにしようか。まだまだ未熟な私だが、皆よろしく頼む」

 ようやく覚悟を決めたルカのその一言に、ルカの部下達は黄色い歓声を上げた。



 部下達が持ってきたドレスは決して派手なものではなかったが、ルカのプロポーションを最大限に活かすものだった。季節的に花を飾ることは無理だったが、端布で作ったコサージュがそれの代わりだ。どうやらグミの連絡を受けて慌ててかき集めてきたものらしい。決して豪華な衣装ではないものの、皆の気持ちがこもった、暖かさをひしひしと感じる。祝福の雰囲気に充たされたこの場所だったが、その中でただ一人、緊張にガチガチになっている人物がいた。

「ほ、本当に私なんかが先導を勤めて良いんですか?」

 リンが今にも泣き出しそうな顔で尋ねる。それもそうだろう、先程まで兵士見習いとしてひよこのように軍本隊の後ろにくっついていたのだ。それが黄金の龍に乗ってルカの先導をすることになるとは誰が予想しただろうか。あまりの事の大きさにうろたえるリンだったが、リンの先輩たちはそれほど甘くはない。

「当たり前でしょ!皇后になるかもしれない御方の先導なんて、龍騎士しか出来ないでしょうが!」

 容赦無いグミの一喝に、リンはぴぇぇ、と泣き叫ぶ。

「まぁまぁ、そう新人を脅かすなって。先触れは俺達がやってやるからよ」

 さすがに見るに見かねたのだろう。龍騎士の中でもかなり気さくな部類に入るメイトが、リンの頭を軽く撫でて慰めた。

「じゃあ先触れに行ってくる。そうだな・・・・・・僕らが出て行ってから一刻後くらいにここを出発してくれ。何だかんだで準備にそれくらいはかかるだろう」

 カイトの生真面目な一言にルカの顔が引き締まる。確かに二匹の聖龍が色を変化させ、14歳の龍騎士が誕生しているのだ。皇宮での騒動を鑑みたらむしろ一刻でも短いかもしれない。

「判った。では頼む」

 ルカの言葉を受け、カイトとメイトの二人はそれぞれの聖龍に乗り、ふわり、と空に浮かんだ。



 カイトとメイトが先触れとして皇宮に入り、『救いの村』における顛末の一部始終を皇帝及び元老院、貴族の代表者に告げた。案の定皇宮内は大騒動になったが、その騒動の中心はルカではなく、新たに龍騎士となった14歳の兵士見習いだった。ルカに関しては元々皇帝の執着があったし、ルカ自身も龍騎士として今まで活躍しているから、ある種諦めに近いものがあったが、新たな龍騎士はそうはいかない。

「取り敢えず暫くは戦をするつもりもないから問題ないだろう」

 という皇帝の一言で取り敢えず落ち着く。そうこうしているうちに二匹の龍が北方から飛んできた。そして黄金の龍はバルコニーにとどまり、紫と朱鷺色の龍はそのまま皇宮の大広間へと進んでゆく。

「ルカ」

 皇帝は龍の上にいる愛しい人を見上げながら語りかける。すっきりとしたドレスに端布で作ったと思われるコサージュが愛らしくルカを飾っている。決して豪華なものではないが、初めて見るルカの女性らしい姿に皇帝は目を細めた。

「ようやく我が想いを受け入れてくれるのだな?」

「・・・・・・御意。我が後継に有望な若人が就きましたゆえ」

 するとその時、黄金龍・陽炎から降りてきたリンが皇帝の前に進み出て跪いた。そのあまりの幼さに皇帝は勿論、元老院の代表、その他貴族たちは驚愕の声を上げる。

「こ、これほどまでに幼き者を聖龍が選ぶとは」

「しかも鱗が黄金色に変化している・・・・・・間違いない、陽炎の本当の主はあの幼い少女なのだ!」

「だが、龍騎士の勤めが果たせるのか?だったら今までどおりルカに任せたほうが」

「それは聖龍が許さないだろう。あんな見た目の変化をするほどなのだから」

そんな囁きの中、ルカを傍に侍らせた皇帝がリンに声をかける。

「幼き龍騎士よ、そなたの名と所属を答えよ」

「わ、わたしは・・・・・・リン、と申します。10日前に白龍隊見習いになったばかりで、所属と言われましても・・・・・・」

「確かに困るな。ならば暫くは『龍騎士見習い』としてルカの直属としようか」

「陛下?」

「龍がその色を変えるほどの逸材だ。大事に育てなければならないだろう。どうやら士官学校にも入っていないようだし・・・・・・」

 確かに士官学校の女性枠は極めて少ない。一年に立った三人の枠に入れず涙をのむ女性兵士見習いも少なくないのだ。それ故ルカはあぶれた少女達を『兵士見習い』としてかなり若年から白龍隊に入隊させていたのだが、今回はそれは功を奏した形になった。

「では、リンの士官学校入学を認めて頂けますでしょうか?」

「勿論だ。でなければ奏国の恥になろう。それでなくてもこれほど目立つ聖龍だ。戦場に出ることになれば真っ先に狙われるに違いない」

 ルカ以上に華奢で弱々しい少女は賞金首を狙う傭兵から誉れを獲得しようとする正規の兵士までの格好の餌食になろう。たとえ初陣であってもリンに失敗は許されないのだ。

「尤も、元老院の許可もいるがな・・・・・・それとルカ、そなたの皇后位のことも」

「え?」

 その瞬間、ルカは頬を染める。

「陽炎ほどでなくても皇帝龍も変化をしている。さすがに元老院も考えるだろう。皇后位は無理でも側室くらいにはなれるだろう」

 その声は妙に弾んでいる。その様子を遠目に見ながらカイトはメイコに囁いた。

「どうやら皇帝の希望通りの展開になりそうだな」

「そうね。細々したことはまだこれからみたいだけど」

 元老院代表の困惑顔をちらりと見ながら、メイコも微笑んだ。



 何せ『白龍』だと思っていた陽炎が『黄金龍』であり、その乗り手が奏国史最年少――――――もしかしたら世界的に見ても最年少かもしれない、14歳の、しかも少女なのである。成人後、正式な『龍騎士』になるのあっさりは認められたものの、それまでの間の立場及び教育については喧々諤々の議論がなされた。

「あたしは、士官学校への入学が認められるだけでも御の字なんだけどなぁ」

 皇宮の中庭――――――後宮にも面している庭には大きな卓が置かれ、ルカを中心にユニコーン隊の乙女たちと新たな龍騎士・リン、そしてメイコとミクの姉妹が茶を嗜んでいた。

「さすがにルカの直属として直接指導を受ける、というのは気が重いよねぇ。何せ『皇后陛下』になるんだから」

 メイコも苦笑いを浮かべる。

「やっぱり一番いいのは私達と一緒に魔導学校の特別クラスに入ることじゃないかな。殆ど軍から来ているわけだし、龍騎士だって魔導が使えたほうがいいし・・・・・・カイト隊長みたいにさ」

「それが一番いいのかな。迂闊に士官学校に入っても、妬みからいじめられても困るしねぇ」

 事情が解っている士官学校編入組ならいざしらず、普通の士官学校生だと『特別扱い』のリンを妬むかもしれない。なまじ微妙な身分の者が入学することが多いだけに厄介なのだ。

「リンの進路はそのうち元老院が決めるだろうけど・・・・・・こうもあっさりルカの皇后位が認められるとは思わなかったな」

「確かにねぇ」

 そう言いながら皆はルカの方を見る。元々皇帝と恋仲だったこともあるし、龍騎士としてその生真面目すぎる人となりも元老院には理解されている。
 そこへきて婚姻色に染まった皇帝龍に乗って皇宮に乗り込んできたのである。聖龍が認めたならば―――――――元々ルカが乗っていた陽炎が本当の主を見つけてしまったこともあり―――――――これもいい機会だとリンの懸案よりあっさり決定してしまったのである。30人の元老院議員のうち反対はたった一人という圧倒的賛成ということでもそれは理解できるだろう。

「ま、外国から諜報半分の妖しい妻を娶るよりは安全よねぇ」

 いろはの毒のある一言に皆思わず頷く。

「で、婚礼の儀はいつになるんですか?」

 グミの質問に皆も身を乗り出す。やはり乙女の最大関心事はそこに行き着くのだ。期待の眼差しを受けつつ、ルカは頬を染めながら答える。

「まだまだ先ですわ。半年は準備にかかるとのことですし」

 その指には金剛石の指輪がキラリと光る。それは代々の皇后が身につけるものだ。皇帝の言葉ではないが、兵士の鎧姿よりもルカにはこちらの華やかな姿の方が似合う。
 未来を語り続ける乙女たちの上には黄金の陽光が柔らかく降り注ぎ、彼女たちの未来を祝福していた。




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『朱鷺色の花嫁』編、これにて完結ですヽ(=´▽`=)ノ
まだまだ未熟ながらルカの後釜も決まりましたし、リンの騒動のお陰でルカと皇帝の結婚も認められることになりましたし―――それくらいリンの龍騎士就任は珍しいことなのです(^_^;)基本的に士官学校卒業後の年齢にならないと聖龍もパートナーを選びませんし・・・うん、よっぽど我慢ができなかったんでしょうねぇ、陽炎は。

なお陽炎の本来の色は金色なのですが、あまりにも長きにわたって『本来の主』が得られなかったためすっかり色が抜け落ちておりました。人間で言うと白髪みたいなものですかねぇ。なのでリンという主を獲得した事によって陽炎も若返ったと思っていただけると嬉しいかもです。

そしてようやく皇后になることとなったルカと皇帝・がくぽの婚礼はこの時点から半年後となります。ただ、その結婚披露宴においてとんでもない事件が発生し――――――((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
来週は帰省のためお休みを頂き、再来週8/18から『玉虫色の暗殺者』編を開始いたします。取り敢えず皇宮の半分くらいは吹っ飛び予定でおりますが・・・(^_^;)よろしかったら次作もお付き合いお願いいたしますm(_ _)m
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