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聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 朱鷺色の花嫁4

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 奏国五軍の一つ、白龍隊を率いるルカが本気で剣を振るっているにも拘わらず、目の前にいる紅の魔導戦士は軽々とルカの攻撃を躱してゆく。誰が見てもその力の差は歴然としていた。次の瞬間にもルカが倒されてもおかしくない状況の中、胸と腰を覆っただけの下着姿のメイコはのんびりした口調でルカに語りかける。

「仮にも魔導師見習い相手にろくな防魔法対策もしないで攻撃してくるなんて・・・・・・華都でよっぽどの事がなければもう少しきちんとした準備をしてくるはずよね?」

 だがルカはメイコのその問に答えることなく、更に剣を振り回し続けた。よっぽど腹に据えかねる事があったのだろう。しかしルカの剣は全くメイコに届いていなかった。それだけではない。逃げまわるメイコを追い掛け回しているうちにだいぶ体力が落ちてきたらしく徐々にその足取りは重くなり、踏み込みも甘くなっていた。それでもルカはメイコに対する攻撃を止めようとはしない。

「お前さえいなければ・・・・・・事実上の白龍隊解散なんて話は出ないし、私も白龍隊隊長のままでいられるのに!」

 血を吐くようなルカの一言、その本気の叫びにメイコは何かを感じ取ったらしい。軽く溜息を吐きながらルカに同情の視線を送る。

「なるほど。大方陛下に『白龍隊の隊長をやめて側室になれ』とでも言われたんでしょう。でもね」

 今まで防御に徹していたメイコが不意に反撃に転じる。ルカは慌ててその攻撃を受けようとしたが、疲れのため一瞬だけ反応が遅かった。素早く間合いを詰めたメイコによってルカの手首が打ち据えられ、剣が地面に落ちる。そしてその勢いのままメイコはルカの上に馬乗りになり、箒の柄でルカの肩を押さえつけた。

「・・・・・・ご期待に添えなくて悪いけど、陽炎の本当に主は私じゃない。というか、陽炎の本当の主は既に見習いとして入隊しているわよ」

 メイコの言葉の意味が理解できず、ルカは目を白黒させる。するとメイコはいたずらっぽく笑ったまま、不意に大声を上げた。

「さっき私の腰に抱きついた金髪のおチビさん、出ていらっしゃい!」

 すると先ほどメイコの腰に抱きつき、その動きを封じていた少女が人混みの中から現れた。がたがたと震えながらも、精一杯虚勢を張ってメイコ達に近づいてくる。

「・・・・・・私にはリン、って名前があるの!チビじゃないわ!」

 蒼白な顔のままリンは叫ぶ。重圧に押しつぶされないよう必死に耐えているのだろう。そんな兵士見習いの少女にメイコは微笑みを返した。

「あらごめんなさい。あなたの名前を知らなかったから・・・・・・じゃあリン、隊長を助けたかったら、白龍に乗って華都から皇帝龍を連れて来て頂戴」

 さらっ、といったメイコの一言に、リンやルカは勿論その場にいた全員が唖然とした。



 兵士見習いの少女に対する、メイコからのとんでもない命令――――――その命令を聞いた後、まず最初に口を開いたのはルカだった。

「・・・・・・一体何を企んでいる、紅の魔導戦士よ?」

 メイコを睨みつけながらルカが低い声で唸る。

「その娘は10日前に入隊したばかりの見習いだ。それに対して白龍に乗れというばかりでなく皇帝龍を呼び出せだと?ふざけるな!」

 そして呆然と立ち尽くしているリンに対してルカは声を張り上げた。

「リン、私のことは気にするな!此奴の戯言に耳を貸す必要はない!」

 聖龍はその乗り手以外の人間に対して容赦なく攻撃をする。一歩間違えばその鉤爪でリンの首がはねられてしまう可能性だってあるのだ。それを避けようとルカは必死に叫ぶ。しかしその声はメイコによってあっさり否定される。

「あら、ふざけてなんかいないわよ」

 メイコはルカを押さえつけたまま艶然と笑う。

「聖龍が本当の主を得るということを見せてあげる――――――さぁ、リン!早く白龍の前に行きなさい!でないと隊長様の首が折れるわよ」

 メイコの強い口調にリンは渋々白龍の前に歩み寄る。そもそも白龍は自分を拒絶するに違いない――――――リンがそう思った刹那である、眩い光が白龍から満ち溢れ始め、周囲を包み込んだではないか。
 まるで太陽が地面に落ちたかのような激しい光に周囲にいたものは目を覆い、地べたに伏せる。その中でただ一人何事も無く立ち尽くしていたのは他ならぬリンだった。だが、決して冷静なわけではない。

「は、白龍の鱗が・・・・・・落ちてゆく!」

 真珠色の鱗はポロポロと剥がれ、その下から輝く金色の鱗が現れたのだ。黄金のたてがみと相まってその姿は神々しいばかりである。そして全ての鱗が金色に変わった後、陽炎はリンに対し頭を下げる。

《ようやく出会えましたね、我が主よ。貴方様がこの世に生を受けた14年前から、貴方様の気配だけを頼りにずっとこの日をお待ちしておりました》

 鈴を震わすような美声で、金色の龍はリンに挨拶をする。それに驚きを露わにしつつも、リンは陽炎に語りかけた。

「・・・・・・わ、私なんかでいいの?」

《勿論でございます。最後の主が亡くなってから100年以上、ようやく出会えた本当の主なのですから》

 そういうと陽炎は身体を低くする。どうやら自分に乗れということらしい。リンはちらりとメイコとルカの方に視線をやったあと黄金龍に変化した陽炎に乗り込んだ。
 すると陽炎は翅を大きく広げ、歌い出したではないか。数百もの繊細な鈴を一気に鳴らしたような繊細なその歌声に、周囲の人間は驚きも忘れて聞き惚れる。

「――――――龍の歌、初めて聞いた」

 メイコに押さえつけられていたルカが呻くように呟く。

「確かに・・・・・・あんな変化をされた上に龍の歌まで奏でられては、私の出る幕はないな」

 諦観の呟きをルカは吐き出した。皇帝の気紛れによる小さな地位争いなど吹き飛んでしまうほどの大きな出来事、それを目の前にしたら諦めざるを得まい。ようやく陽炎を諦めたルカに、メイコは穏やかに語りかけた。

「そういうこと。だからあなたに相応しい龍を――――――皇帝龍をあの子に呼んできてもらうんじゃない」

 その瞬間、ルカは目を丸くする。

「じ、冗談は大概にせよ!皇帝龍なんて恐れ多い・・・・・・」

「14歳の兵士見習いの女の子が『龍騎士』になったのよ?別にあなたが皇后になったっておかしいことじゃない。ま、奏国の法では認められなくても・・・・・・皇帝龍はあなたのことを待っている。ある意味陛下以上に」

 まるで預言者のようにメイコは確信に満ちた声で言い切った。



 リンを乗せた金色の龍は疾風のような速さで華都へ向かった。そしてその姿が華都の空にに現れた瞬間、とんでもない騒動になった。その騒ぎは『救いの村』の比ではない。

「お、黄金の龍だ!」

「あんな龍、見たこと無いぞ!新しい龍を捕まえたのか?」

「誰か乗っているみたいだが・・・・・・小さすぎてわからねぇ」

「瑞兆なのか凶兆なのか・・・・・・くわばらくわばら」

 今まで見たことのない黄金龍の飛来に都中が驚き、都に駐屯している青龍隊や赤龍隊にも出動命令が下る。そして黄金龍のその姿は魔導学校の休み時間中のミクとグミの目にも飛び込んできた。

「何あれ!軍からちょっと離れた隙にあんな龍が現れるなんて!もう、皇帝命令が恨めしいったら!」

 魔導戦士になるため、白龍隊から出向しているグミが地団駄を踏む。軍隊にいれば間違いなくあの黄金の龍を追いかけることが出来たであろう。そんなグミを余所に、ミクが思わぬことを言いだした。

「あの龍――――――新しい龍じゃないよ!陽炎・・・・・・白龍だよ!」

「嘘ぉ!全然色が違うじゃん!」

 ミクの言葉にグミは驚きの声を上げる。

「だってまとっている気は陽炎のものだよ!何があったのかは知らないけど、白かった陽炎が金色になっちゃったのだけは確かだから!」

 そうこうしているうちに黄金龍は歌い出し、その声につられるように紫龍――――――皇帝龍も空に現れた。

「ちょっと!陛下が騎乗していらっしゃらないのに皇帝龍が出てきたよ!一体何があったの!」

 すると二頭の龍は『救いの村』の方へと飛び立ってゆくではないか。こうなるともうじっとしてなどいられない。グミはミクの手首を掴むと校門の方へ引っ張り始める。

「追いかけよう!何があったか解らないけど、ものすごく大きなことが起こりかけている気がする」

「ちょっとグミちゃん、授業は?」

「そんなもの、サボるに決まっているでしょ!」

 皇帝の意向によって作られることになった魔導戦士隊、その構成員を作るために各部隊から集められた兵士たちは30人ほどになり、編入ではなく特別クラスとして構築されている。そんな皇帝命令を受けているにも拘わらずグミは授業をサボり、黄金龍の行く先へと行こうというのだ。

「今ユニコーンを連れてくるから、ミクちゃんも一緒に行こう!」

「・・・・・・救いの村にはお姉ちゃんも行っているし、やっぱり心配だな。じゃあグミちゃん、お願い!」

 そして二人の少女はそのまま学校を飛び出し、ユニコーンの厩舎へと走りだした。



 四半刻後、 黄金竜を先導に皇帝龍がやってきた。地面の上に降り立つと、紫龍はメイコに向かって言葉を掛ける。

《紅の魔導戦士よ。話は陽炎から聞いた。我が主の魂の片割れを説得してくれたようだな。礼を言う》

「いえ、まだ説得に成功はしていないのですが」

 メイコは申し訳無さそうに紫龍に謝る。

「こうなったら実力行使でしょう」

 そう言ってメイコはルカの上から降りると強引に立ち上がらせ、紫龍へと突き飛ばす。

「まずは皇帝龍に乗ってみて!そうすれば自分が何者なのか――――――そしてあなたの本当の使命が判るはずだから」

 箒の柄を構えたままメイコはルカに皇帝龍に乗るように命じた。




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まずは白龍の方から問題は解決いたしましたヽ(=´▽`=)ノ本当の主は入隊したての14歳の少女・リンでした。まだまだ兵士としては未熟もいいところですが、龍の選択はそんな人間の都合など一切関係ありませんからwww
そして白龍、というか黄金龍から降りることになってしまったルカも、本当に自分が乗るべき龍――――――皇帝龍が立ちはだかっています。こちらはさんざん焦らされていますんでねぇ。ある意味がっくんよりもテンションが上がりまくるのではないでしょうか(^_^;)

次回、皇帝龍に乗るルカの許にグミやミク、そして出動命令を受けたカイトやメイトもやってきます。
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