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聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 朱鷺色の花嫁1

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 皇帝軍凱旋の翌日、戦勝祝賀会が催された。とは言っても日中は勲章や新たな官位など褒章の授与式が中心であり、関係無い者にとっては退屈極まりないものである。
 カイトに連れられて授与式に参加したメイコとミクも同様で、あくびを噛み殺しながらカイトの袖の裾を引っ張った。

「ねぇ、この授与式っていつまで続くの?用が無いなら退席しちゃいたいんだけど」

 何もせず、ただじっと他の人間のやることを見つめていなければならない授与式は、メイコやミクにとって苦痛この上ない。さすがに待ち疲れを見せ始めたミクを気遣いメイコがカイトに尋ねる。

「これなら数日にわたる山中修行のほうが遥かに楽だわ」

 メイコのぼやきにミクも激しく頷いた。その頷き方にカイトは思わず苦笑いを浮かべる。

「・・・・・・まぁ、確かにね。俺だって戦場にいるほうが楽だと思うし。だけどね」

 カイトは視線を諸々の授与が行われている玉座に向けつつ、二人にこの場から退席できない事情を説明する。

「君らも魔導省へ特別入省してもらうから、その任命式があるんだよ」

「え?何それ!」

 思わず小声で叫んでしまったミクは、周囲の刺さるような視線を感じ、慌てて口を手で塞いだ。

「驚くのも仕方ないよね。俺だってこの授与式の直前に魔導省の役人から聞いたんだから」

 カイトも呆れ顔で肩を竦める。

「今回は留守を任されていた赤龍隊以外、全ての部隊が大きな戦果を上げたから授与式関係で何かと混乱しているみたいだ。かと言って戦勝祝賀会を遅らせるわけにも行かないし」

「まぁ、確かにね。こんなに大勢の人が集まっているんだもの。一日ずらすだけでも大変そう」

 メイコとミクは納得し、思わず頷いてしまった。授与式が行われている玉座の間だけではない。この隣にある大広間や舞踏の間、そして皇宮前庭や朱夏門広場にも多くの貴族や民衆が押しかけている。この大衆を制御するだけでもかなり大変だ――――――そうメイコが思ったまさにその時である。

「グリアーノの魔導師見習い、メイコ、ミク。前へ!」

 二人を呼ぶ声が玉座の方から聞こえた。どうやらメイコ達の授与式の順番がやってきたらしい。

「ほら、行くよ。俺も一緒に行って作法を教えるから」

 さすがに勝手が判らぬ二人だけで玉座の前に放り出すことはできない。カイトは二人を促しつつ、玉座の前へと向かった。



 玉座の前に進み出たメイコとミクは、宰相によって魔導省への編入を告げられた。しかもメイコは上から三番目の判官(じょう)の位を与えられたのである。因みにミクは主典(さかん)であるが、これから魔導学校で勉強する立場でのこの身分はかなりの優遇だ。

「二人共見習いとはいえかなり強い力を持つと聞く。元々白の魔導師ゆえ、戦にその能力は使えぬかもしれぬが、奏国の為、そして今回の戦によりグリアーノ領となったそなた達の故郷の為その力を発揮するように」

 朗々と響く声で口上を述べる宰相に対し、メイコは恐る恐る尋ねる。

「あの・・・・・・そういえばグリアーノの皆は、どうなっているでしょうか?」

 任命式の場で尋ねるのは非常識だと思ったが、グリアーノの名を聞いてしまってはそれどころではない。そんなメイコの横ではミクも深く頷き、大きな目でじっと宰相を見つめた。訴えるようなその視線に一瞬怯んだ宰相だったが、すぐに笑顔を見せる。

「グリアーノの習慣と我々の習慣の違いによる混乱は多少あるようだが、特に流行病にも罹ることもなく皆元気との報告を担当者から受けている。もし何ならカイトに『救いの村』に連れて行ってもらうがよかろう」

「え?良いんですか?」

 思いもしなかった宰相の提言に、メイコとミクは嬉しげに瞳を輝かせる。

「別に病気による隔離ではないのだし、同郷の仲間を訪ねるのは問題ない。特にグリアーノは前の国王の圧政の所為か、問題行動を起こすこともなく従順だし――――――ただ、華都から歩いて丸一日かかるが、その覚悟だけはしておくように」

 どうやら宰相としては若い娘に脅しをかけたらしい。しかしグリアーノで魔導師としての厳しい修行を行っていたメイコとミクにとって、奏国の平地を丸一日歩く程度は大したことではない。宰相の言葉にメイコとミクは微笑み、一礼して下がった。



 授与式及びその他諸々の戦勝祝賀会関係の儀式が終わったその夜、皇宮では舞踏会を伴った大宴が行われた。カイトに付き合ってその大宴に参加したメイコとミクだったが、着るものはさすがに間に合わず黒曜教の導服だ。

「でも、むしろこっちのほうが良かったかも」

 グリアーノでは見たこともない陶器の盃を空けながら、メイコはほろ酔い加減ではしゃぐ。

「だって踊りなんて知らないもの。この格好だったら踊らなくても問題無さそうだし、見習い魔導師でも一応敬意は払ってもらえているみたいだし。それにしても美味しいわね、奏国のお酒って」

「お姉ちゃん、飲みすぎだよ!少しは控えないと」

 そういうミクも陶器の盃を手にしていた。さすがにミクが飲んでいるものはそれほど強くない馬乳酒だったが、メイコに負けず劣らず微酔いだ。
 華やかな席の中、メイコ達のように地味な服を着ているものは殆どいなかったが、もう一人だけドレスを身に付けていないものが居る。それが白龍隊隊長のルカだった。
 さすがに鎧こそ身に付けていないが、いつ何が起こっても対応できるよう、動きやすい護衛官の服を身に付けている。なまじすらりとした美女だけに、妖しい美しさを醸し出しているが、本人は全く気にも止めていない。そんなルカやその他取り巻きを引き連れて、皇帝がカイトの近くにやってきた。

「カイト、かなりこのお嬢さんたちがお気に入りのようだね」

 皇帝の語りかけに、カイトは頭を下げつつ応える。

「お気に入りというかなんというか・・・・・・彼女たちはグリアーノから出てきたばかりで、奏国の習慣に詳しくありませんので、俺が一応指導をしております」

 ちらりとメイコとミクに視線を投げかける。その視線に気がついたメイコとミクは慌てて頭を下げた。その慌てぶりがあまりに可愛らしかったのか、皇帝の頬が思わず緩んだ。

「苦しゅうない。この場は無礼講、多くの国や地域からの客も多いゆえ――――――習慣については追々覚えていけば良いだけだ。ところで」

 皇帝が不意に話題を変える。

「メイコとやら。そなたの火矢を操る力は瓔珞高原で見させてもらったが、純粋に戦士としての腕もなかなかとのことらしいな?」

 その瞬間、皇帝の背後に控えていたルカの表情に険が含まれた。そのルカの評定の変化にカイト、メイコ、ミクの三人が素早く気がつく。

(あ・・・・・・これはまずいよ。意外と空気を読んでくれないからなぁ、陛下は)

 この場で事を荒立てては今後のメイコ達の生活に支障をきたす。それを極力避けるため、カイトがさり気なくメイコを肘で突付き、返答に注意するように促した。それに対してメイコが小さく頷く。

「え、ええ。野育ちゆえ、多少は・・・・・・・」

 メイコは言葉を濁したが、皇帝の追求はそこで終わることはなかった。

「話しに聞くところによると、青龍隊の精鋭歩兵達相手に一人で立ち向かい、ほぼ勝利を収めたとか・・・・・・カイトが相手をしなければ歩兵全員が倒されていたかもしれないと、小耳に挟んだぞ」

 どうやらかなりの情報を聞き込んでいるらしい。カイトは皇帝に対してわざと渋い表情を浮かべつつ、進言する。

「あれは火事場の馬鹿力というやつです。そもそも戦う前に炎の幻視で戦意を半分以上喪失していた輩相手ですからね。魔導省がこの二人を手放しはしませんよ」

 幾らなんでも行政府の意向を無下にする事はできないだろうとカイトは釘を差したが、何故か皇帝は引き下がらなかった。

「それは余の気持ちひとつ、と言っておこうか。その気になれば魔導省長官の首の一つや二つ、すげ替えることは可能だ」

 皇帝はカイトに対してにやりと笑う。そしてメイコに対してとんでもない事を尋ねたのである。

「メイコとやら。そなたは聖龍に乗ることができるようだし・・・・・・ルカに代わって白龍隊の隊長をやってみる気は無いか?」

 空気をまるで読まない皇帝のその一言に、更にルカの表情は険しくなり、三人は目眩を覚えた。




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本格的な宮廷編、まずは授与式&その後のパーティ風景と相成りました。田舎から出てきたばかりのメイコ&ミクにとって授与式はかなり辛かったと思いますが、これも宮廷で暮らすために必要なことと諦めてもらうしかありませんwww彼女たちにとって魔導師の苦行のほうが楽なんでしょうけどねぇ。
そしてその夜のパーティで皇帝・がくぽが空気を読まない爆弾発言をいたしましたwww彼としてはルカに娘子隊を退官してもらって自分の側にいてもらいたいのでしょうが、やり方が少々強引すぎ・・・カイト、メイコ、ミクにとって、皇帝に逆らうよりも、ルカの逆鱗に触れてしまったことのほうが恐怖だったに違いありません。ヘラヘラしている皇帝・がくぽのすぐ後ろで怒りの炎をメラメラと燃え上がらせているルカ・・・ちょっと、いや、かなりコワイかも(^_^;)

次回更新は7/7、白龍隊隊長を打診されたメイコはどうやってこの話を断るのか、そしてルカの反応や如何に(^_^;)次回をお楽しみくださいませ(#^^#)
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