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聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 山吹色の宮廷歌手1

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 奏国首都・華都の南側にある凱旋門をくぐり抜けた皇帝軍を待っていたのは、耳を聾する民衆の歓喜の声と大通りを埋め尽くさんばかりの人混みだった。龍一頭がようやく通れるほどまで狭くなってしまった大通りを、青龍隊を先頭に白龍隊、そして皇帝近衛隊である紫龍隊が凱旋する。

「すごい人の数ね・・・・・・シャンジェの何倍くらいいるのかしら」

 凱旋行進にも拘わらず、相変わらず青龍に乗せられたままのメイコが背後のカイトに尋ねる。

「たぶんこの通りに出てきた人間だけでもシャンジェの5倍くらいはいるんじゃないかな。人が多すぎて危険だから女子供、高齢者は見物を控えるように、って毎回お触れを出さないといけないほどなんだ」

 嬉しさと困惑が入り混じった声でカイトがぼやく。皇帝の帰還、特に戦争に勝利しての凱旋行進には民衆が多く出迎えてくれる。しかしその人混み故に毎回怪我人が多数、時には死者まで出てしまう有り様なのだ。祝いの凱旋に死傷者が出てはまかりならんと、毎回見学者を規制するお触れを出すのだが、皇帝の人気と相まってまるで効力が無いのが実情である。

「特に今回は瓔珞高原で大勝したからね。民衆の高揚ぶりも半端じゃない」

 カイトのその言葉にメイコも深く頷いた。瓔珞高原における青龍隊の奇襲攻撃は既に華都にも届いているらしい。露払いを兼ねている青龍隊には特に大きな歓声が沸き上がるのだ。そしてその声に混じり、娘たちの嘆きの声もメイコの耳に届いていた。

「カイト様の青龍に一緒に乗っているのって・・・・・・誰よ」

「黒龍教の制服を着ているってことは、魔導師ってことよね?」

「でもあれ、女性よね?カイト様って男の子が好きだったんじゃないの?」

「それってもしかしたら単なる噂で、実は女性もお好きだとか?」

「だったのかもね。でももう遅いわよ・・・・・・聖龍の掟はあんただって知っているでしょ?」

「そりゃあ知っているけど・・・・・・お妾とかのチャンスは有るわけよね」

「無理無理。鏡を見てからモノを言いなさいよ」

 どうやらカイトは民衆の娘たちにもかなりの人気を誇っているらしい。そんな娘たちへの申し訳無さと同時に、大衆の面前でカイトに腰を抱えられながらスミレに騎乗している状況に、メイコは不意に羞恥を覚えた。

(私の魔法を警戒してのことなんだろうけど・・・・・・傍から見たら特別な関係に見えちゃうよね、これって)

 自分は捕虜として捕まっているのだと声高に叫びたいが、この状況では誰も信じてくれないだろう。言いようのない徒労感を抱きつつ、メイコはスミレに乗せられたまま、皇宮朱夏門をくぐり抜けた。



 皇帝軍・青龍隊が朱夏門から入城したきたその瞬間、宮廷合唱団の少年・レンは表情を強張らせた。

(何だよ、あの女!カイトの奴もデレデレ鼻の下伸ばしちゃってさ!)

 前に乗せている若い娘の腰に腕を回し、何かをその耳に囁いているカイトを遠目に見ながら、レンは心の中で毒づく。そして周囲の少年たちがにやにやと意味深な笑みを浮かべ、レンの青ざめた表情を盗み見ているのを自覚した。

(まじムカツク!俺がふられたみたいな目で見やがって!別に俺がカイトに惚れているんじゃなく、向こうが勝手に言い寄ってきているんだからな!)

 そもそも『後見をしてあげるから』とレンに言い寄ってきたのはカイトの方だったが、レンにカイトの愛人になる気は無かった。しかし有力貴族の後ろ盾があったほうが宮廷歌手としては何かと都合がいいし、金も引き出せる。触れなばおちんと言った風情を見せつつカイトを籠絡し、身体の関係を持たないうちに音楽学校の授業料と必要な衣装代を引き出しはしたが、カイトの心が青龍に乗った娘に移ってしまえばそれさえも打ち切られない。

(あいつ・・・・・・女が好きだなんて一言も言ってなかったじゃねーか!)

 そう思った瞬間、不意にカイトの前に座っていた若い娘が宮廷合唱団の方を見た。燃えるような赤毛の娘は、遠目からもかなりの美人だと解る。そしてだぼっとした黒曜教の導服に身を包んでも、はっきり判るほどその胸許は豊かだ。

(結局カイトも男だよな。乳がでかいほうがいいんだ)

 イライラと爪を噛みながら二人を見ているレンに仲間のオリバーが声をかけてきた。

「レン、カイト盗られちゃったね。龍に乗っているってことは、結婚するのかもね」

 面白半分にレンをからかうその問いかけに、レンは思わず声を荒らげる。

「煩いな!別に他の男に盗られたわけじゃないし。その気になればバラされたら困るネタの一つや二つ持っている。学費とか衣装代とかふんだくればあんな奴、用無しさ」

「へぇ、強がっちゃって・・・・・・でもあんまり変な強請をすると、青龍隊の奴らに闇から闇に葬られるよ。いや、もしかしたら教導師団の方が動くかもね。カイト中将の前に乗っている人、黒曜教の導服の着用を認められているくらいだから」

「ふん、勝手言ってろ!」

 その時楽師団長の号令がかかる。皇帝を迎えるための凱旋歌を歌うためだ。レンは他の団員と共に姿勢を正し、楽師団長を見つめた。



 繊細な少年たちの歌声が響く中、皇帝を乗せた紫龍が入城する。それを出迎えつつもメイコは落ち着きなくキョロキョロと当たりを見回した。

「噂には聞いていたけど・・・・・・本当にすごいのね、奏国の皇宮って」

 礼儀を失しない程度に、それでも隠し切れない感嘆の声をメイコは上げてしまう。

「こんなに大きいと、スミレとかそのまま入れちゃうんじゃないの?」

「うん、入れるよ」

 メイコの高揚ぶりを咎めることもなく、むしろ自慢気にカイトは説明する。

「龍騎士の任命式は皇宮内で行うしね。そもそも皇宮自体が聖龍達の大きさに合わせて作られているんだ。皇帝自ら出陣の時は玉座の前まで紫龍がやってくるしね」

「シャンジェ城とは雲泥の差ね」

「まぁね。あれだと奏国だと陣屋とか代官所とかそのくらいの大きさだね。後は華都の上級貴族の邸宅とか」

「確かに、皇宮近辺の邸宅はシャンジェ城より大きかったもんね」

 そう言いながらメイコは更に物珍しそうに皇宮を見続ける。大きいだけではない、壁を飾る彫刻も、皇宮前広場に敷き詰められたモザイクもグリアーノでは見ることも出来なかった精緻なものだ。田舎者丸出しのメイコの様子を微笑ましく見ていたカイトだったが、宮廷合唱団の歌声が止んだ瞬間、メイコの耳許に唇を寄せる。

「ま、今日のところは凱旋行事で解散だから、皇宮の案内は後日だね。あと君らには暫くの間、俺の屋敷に住んでもらうから」

「暫くって?」

 その言葉に、メイコは振り向き怪訝そうな表情を浮かべる。

「さすがに君らほどの強力な魔導師を教導師団や黒曜教が放っておくわけ無いよ。ほぼ間違いなく魔導学校に入ることになるだろう。もしかしたら君はそのまま魔導省に入るかもね。そうしたら別個に部屋なり屋敷なりを拝領することになるから」

「学校って・・・・・・いいの?私達、魔導の系統そのものが違うのに?」

「ああ、黒曜教は抵抗するものに対しては非寛容だけど、来るものに対しては寛容だよ。華都には他の流派の魔導師も留学しに来るしね。君たち白の魔導師もたまに見るよ」

 白の魔導師も留学している――――――その言葉を聞いてメイコはホッとした表情を浮かべる。飢えることのない生活に、いくらでも学べる学習環境――――――それこそ天国のような未来に嬉しさを覚えるメイコである。それだけにメイコを怨嗟の視線で睨みつけている存在に気がつくことは出来なかった。



 カイトの邸宅は皇宮のすぐ近く、東の大通りを挟んですぐのところにあった。さすがに皇宮よりは小さいが、周囲の貴族の邸宅に比べるとかなり大きい。

「すご~い!やっぱり龍騎士になると住むところも違うのね」

 ミクがメイコにしがみつきながらも、好奇心丸出しで玄関ホールを見回した。皇宮に比べると装飾はかなりすっきりしているが、それはそれでカイトの邸宅らしいと納得してしまうのが不思議だ。

「いや、屋敷が大きいのは龍騎士だからってわけじゃないんだけど・・・・・・そもそもこれは受け継いだ屋敷だし」

 歯切れ悪くカイトが呟く。

「一応、大公なんだよね。俺。二代前の皇帝と俺の祖母が兄妹でね。皇帝家の血筋が今現在皇帝その人しかいないから、事実上皇位継承権二位を持ってる」

「え?そんなに偉かったの!」

 思わぬ告白にメイコとミクは目を丸くする。

「まぁ、確かにその若さで中将だもんね・・・・・・でもてっきりそれは龍騎士だからだとばかり」

「ああ、龍騎士は龍騎士。奏国軍の階級とは全く別次元のところで選ばれるからね。尤も龍騎士になれば自動的に少将の位はもらえるけど」

 その時、屋敷の奥から一人の女性が出てきた。真っ白な髪に穏やかな笑みを浮かべたその女性は恭しく一礼する。

「おかえりなさいませ、ご主人様」

「ああ、留守番ご苦労――――――これは大公家筆頭執事のハク。後で君らの生活の事を案内してもらう。ハク、こちらは・・・・・・」

「白の魔導師のお嬢様方ですね。既に噂は届いております」

 ハクはにっこりと微笑むと、メイコとミクに一礼した。

「初めまして、ハクと申します。異国の地にて何かと勝手が違うかと思いますが、ご遠慮なく申し付けてくださいませ」

 その言葉にメイコとミクはホッとした。生活の事細かな部分で男性であるカイトには聞きにくいことも少なくない。その点女性執事であるハクには言いやすい。

「じゃあハク、二人の案内を」

「御意。ところで旦那様」

 不意にハクが小声でカイトに耳打ちする。

「宮廷歌手のレン様がお見えになっております。今しがた応接室にお通しして待って頂いておりますが」

「判った。じゃあ後はよろしく頼む」

 カイトはハクに二人を任せると、表情を強張らせ応接室へと向かった。




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ようやく遠征編から奏国首都編へと突入いたしましたヽ(=´▽`=)ノそしていきなりレン君の嫉妬がメイコに向けられるというwww
正直BLはあまり得意では無いのですが(オリジナルでも匂わせる程度のものしか書いたことがない^^;)、描写の拙さはご容赦くださいませ。そもそもこれはカイメイあっての話だし(開き直りっ!)

次回更新は6/23、次回で終わるかそれとももう一回かかるか判りませんが、今回はちょっと短めになる予定です。
(その代わりガックン生誕祭がくルカに力を注ぐ予定です(`・ω・´)ゞ)
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