「紅柊(R-15~大人向け)」
丙申・春夏の章

妖剣雨情・其の壹~天保七年六月の潜伏(★)

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 古石場に梅雨特有のしとしととした雨が振り続ける。普段は子供の笑い声やおかみさんたちの喧騒が響き渡るボロ長屋も、こんな日ばかりは静かなものだ。そんなボロ長屋の一室から、雨以上に陰鬱な声が聞こえてきた。

「ここまで来ちまうと、手の施しようがねぇな・・・・・・ってか、六月までよく生きながらえていたよ。まったく悪運が強ぇよな、新さんは」

 鮫ヶ橋から雨の中、わざわざ古石場までやってきた藪庵は、首を横に振りつつ道具箱を片付け始める。

「こうもぐずぐずと膿が湧いてくるんじゃ手に負えねぇ。特に梅雨時の湿気もいけねぇんだろうが」

「どうにかできないのかい、やぶ医者!」

 さじを投げた藪庵に夕波が声を荒らげて迫るが、藪庵は眉一つ動かさず事実を突きつけた。

「こんな深い刀傷、数日の間に死んでいたって文句は言えねぇぞ。新さんが頑丈だからここまで保ったようなものだ。悪いことは言わねぇ。俺が紹介してやるから、死にたくなけりゃもっと腕の良い医者に診てもらえ。でねぇとあと二、三ヶ月で肩がもげるし、ヘタしたら毒が体中に回っちまう可能性も・・・・・・」

「二、三ヶ月は持つんだな?」

 まるで地獄から這い出たような、ガラガラ声で新實は藪庵に尋ねる。

「・・・・・・大人しくしていたらな。だが、養生もせずに動きまわってりゃその限りじゃねぇ」

「別に越す気なんざねぇから構わねぇよ。それに俺の手配書は既に奉行所から医者にも回っているだろう。命惜しさにのこのこ出向いたら、それこそ試し切りで切り刻まれるのがオチだ」

 冗談とも本気とも付かない口調でそう言うと、手で藪庵を追い出す仕草をする。

「雨がひどくなる前に帰りな。もう暫くしたらかなりひどくなるだろう」

 掌並みに小さな覗き窓から見える西の空は、かなりドス黒い。あと半刻もしたら江戸の街は土砂降りになり、帰り道も危うくなるだろう。藪庵はそれを確認すると、よいしょ、と立ち上がる。

「あんたに言われなくてもそうするさ。じゃあ無理はしなさんなよ」

 どのみちこの雨じゃ動き様がないがな、と付け足すと、蓑を着込んだ藪庵は早々にボロ長屋を後にした。



 予想通り、一刻ほどすると雨は更にひどくなってきた。梅雨時のせいか、ここ最近棒手振りも古石場までなかなかやってきれくれないので、夕餉は朝の残りの湯漬け飯とたくあんの切れ端だけだ。

「おい、味噌も切らしたのか?」

 味噌汁さえない膳に新實が文句を言うが、夕波は『ああ』と気のない返事をしただけである。

「今朝の味噌汁が最後さ。今日は藪庵が来るんで行けなかったけど、明日は味噌屋に行ってくるよ」

「棒手振りの味噌売りはどうした?いつもしわがれ声で煩いのによ」

「捨吉じいさんなら雨の日は来ないよ。節々が痛むんだってさ。おお、やだやだ。年は取りたくないね」

 夕波は吐き捨てると、二人分の膳を土間の片隅に置いた。

「さ、ちょっとどいておくれ。布団敷いちまうから・・・・・・あ、それとそろそろ金が尽きかけているから、味噌を買いに行きがてら客を取ってくるよ」

 布団を敷きながら夕波は明日の予定を告げた。逃亡生活にはそれなりに金が要る。たとえ貧民街のボロ長屋であっても家賃は必要だし、食べるものも買わねばならない。
 以前は新實が辻斬などで金品を強奪していたが、さすがにこの状況では夕波が客を取らざるをえない。だが、夕波は嫌がることもなく、むしろ外に出れる事を喜んでいるようだ。

「さ、どのみちやることはないんだからさっさと寝る・・・・・・きゃあ!」

 その瞬間、夕波は新實に腕を引かれ、新實の膝の中に倒れこむ。そして夕波を背後から抱きしめると、その耳朶を舐めまわしながら囁いた。

「やることはあるさ――――――ここ最近ご無沙汰だったし、客の一人だと思えば大したことないだろう?」

 どうやら『明日客を取ってくる』との夕波の一言に、その気を掻き立てられたらしい。夕波の細腰に腕を回しながら、新實は迫る。

「ちょっと!あんた、藪庵先生に大人しくしてろ、って言われたばかりだろ!その矢先から・・・・・・」

「まぐわい程度でぎゃあぎゃあ喚くな。おめぇが暴れなきゃ養生と変わらん」

 新實は強引に夕波を振り向かせると、唇を重ね舌をこじ入れてきた。その強引な接吻に一瞬抗議の眼差しを向けた夕波だが、新實の舌技にその視線も徐々に弱くなり、欲情に潤み始める。互いの唇を舐め合い、舌を絡ませる濃厚な接吻は暫く続き、互いの顎まで唾液に濡れる。

「・・・・・・そんだけやる気に満ちてりゃ問題ないね」

 新實の接吻からようやく逃れた、夕波は呆れたように呟く。

「人を死にぞこないみてぇに言ってくれるな」

 煎餅布団に夕波を転がしながら、新實は凄む。だが夕波はけらけらと笑いながら新實の帯に手をかけた。

「実際死にぞこないだろ?そもそも藪庵だってあんたがここまで長生きするたぁ思っていなかったんだから」

「確かに、な」

 喉の奥でくっくっと笑うと、新實は夕波の胸許にするりと手を滑り込ませ、乳房を掴んだ。以前は女を翻弄し、屈服させようとしていた新實の愛撫だが、今は死の影を振り切ろうとする必死さがにじみ出ている。

(・・・・・・まるで金持ちの狒々爺のようなむしゃぶりつき方だねぇ)

 吉原努めをしていた頃のことを思い出しながら、夕波は乳をこねくり回す新實に身を任せた。
 命の灯火が消えかかっている者は、何故か女の肌を求めたがる。それは生命力を吸い取ろうとする欲望なのか、それとも己が血を残そうとする男の本能なのか定かではない。だが、どの男も夕波が根負けするほど身体を求めてくることには変わりなかった。そして新實もまた同じように、夕波の身体にむしゃぶりついている。

(今度ばかりは・・・・・・藪庵の見立ても当たっているようだねぇ)

 鼻の奥がつぅん、となるのを隠しながら、夕波は新實の頭を掻き抱いた。



 新實の、少し動きが不自由になってしまった右手が夕波の乳房を撫で回す。若い娘の跳ね返すような張りはないものの、それに変わる蕩けるような柔らかさが新實の掌に伝わってくる。

「こんな貧乏暮らしをしている、ってぇのにおめぇの肌は貧乏臭くならねぇな」

 形が変わるほどこねまわしつつ、指先で尖った乳首を弾く。少し黒ずんだ乳首はふるり、と震え、更に凝った。

「ふぅ・・・・・・んっ、あ、たりまえ・・・・・・だろ。わっちの身体は・・・・・・商売道具、なんだから、さぁ」

 執拗に乳房や乳首にだけ与えられる刺激に、不満気に鼻を鳴らしつつ夕波は反論する。既に体の芯は熱を帯び、内側から溶けるほどに淫蜜が内腿を濡らしている。だが新實は素知らぬ風にただひたすら乳房に執着を示す。

「それだけとは思えねぇ。男の精を喰らっていなけりゃ、ここまで色艶がいいわけねぇ」

 新實は不意に柔らかな乳房に歯を立てる。その噛み付き方に、夕波は新實の焦り、そして他の男に対する微かな嫉妬を感じた。

「そういうあんただって・・・・・・女の肌を喰らって、生きながらえているじゃないか。ほら、また噛み付いて・・・・・・あうっ」

 柔肌に食い込む歯と、蛞蝓のように這いまわる舌の感触を乳房に感じながら、夕波は喘ぐ。夕波の乳房に歯を立て、舐め回すその姿は確かに女を喰らう鬼のようである。そんな夕波の言葉に、気を良くしたのか、新實は乳首を口に含むと、舌を絡めながら吸い上げた。

「はうっ!」

 今までの焦らすような刺激から一転、不意に与えられた激しい快楽に夕波は頤を仰け反らせ、腰を揺する。その瞬間、内腿に留まっていた淫蜜は尻を伝い、濃密な牝の匂いが立ち昇った。

「・・・・・・そうがっつくな。夜は長いんだ」

 夕波の欲情を感じたのか、乳首から唇を離しつつ新實はにやり、と笑う。ぬらり、と光る唾液は唇の端から糸を引き、夕波の乳首に絡まっている。唾液の糸は暫くその姿を保った後、ぷつり、と途切れ、夕波の凝った乳首に纏わりついた。

「本当に・・・・・・狒々爺みたいにひとの身体を弄んで!」

 新實の勝手気ままな愛撫に毒づく夕波だが、赤みを帯びた頬と半開きになった唇、そして欲情に輝く瞳は夕波の昂ぶりを表していた。客に抱かれるのとはまた違う快楽を、夕波は貪欲に貪ろうとしているのだ。獲物を狙う山猫のようなその視線に、新實は満足気に笑う。

「そんなことを言って、明日やりすぎで仕事ができないと嘆いても知らねぇぞ」

 新實は下卑た笑みを浮かべると、夕波の唇に左手の中指と人差し指を差し出した。

「ほら、しゃぶれ。今夜は・・・・・・後ろもやるからな。しっかる濡らしておかねぇと痛い目を見るぞ」

 後ろもやる――――――その一言に、夕波の表情が輝く。出会った時は『衆道』に拒絶を示した夕波だったが、今ではすっかり新實に仕込まれ、かなり太い新實の逸物まで受け入れることが出来るようになっていた。

「本当に・・・・・・あんたも好きだねぇ」

 今までにない妖艶な笑みを浮かべると、夕波は新實の指にむしゃぶりつき、音を立てて舌を絡め始めた。




UP DATE 2015.6.3

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銀兵衛に付けられた傷は、予想以上に新實を蝕んでおりました(>_<)
腕を斬られたもののすでに回復し、山田道場で稽古さえする事ができた銀兵衛と、傷が膿崩れ、闇医者にしか傷が見せられない新實――――――刀の戦いでは新實のほうが優れていたのかもしれませんが、ある意味これは新實の敗北を意味しているのでしょう。しかしそれでも生への執着を見せる新實・・・この後、どんなことを企んでいるのか定かではありませんが、自分の身体がいうことを聞くうちに『何か』をやろうと考えているはずです。

次回更新は6/10、激エロモードで頑張ります/(^o^)\
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